「『ビッグストリーム そうめんスライダー』はこっそりと試作を重ねていました」
2015年にタカラトミーアーツから発売された「超ヒエヒエ 北極流しそうめん しろくまファウンテン」は、2013年に発売された「超ヒエヒエ 北極流しそうめん」のバージョンアップ版。この頃から、平林さんは、こっそりとスライダー構造の試作を始めていたのだ
「流しそうめんマシンは、最初スライダーではなくて、そうめんが回転するタイプでした。家電量販店などに、小さいプールの中をそうめんがぐるぐる回る製品が売られていたんです。夏になると、かき氷とそうめんの売り場ができるので、そこで一緒に販売できる商品を作ろうと思ったのが最初ですね。ただ回転するだけではなく、中央の氷でできた氷山から噴水が出るというギミックを付けてみたらヒットしたんです。それが2013年です」と平林さん。 そこから、2015年には、氷が溶けてしまうと形がなくなってしまう噴水部分を、プラスチックでできたホッキョクグマ型にした「超ヒエヒエ 北極流しそうめん しろくまファウンテン」などのバージョンアップ製品を出しつつ、平林さんは、噴水のために上に上がっていく水流を利用して、小さいすべり台がぐるぐる巻いているスライダータイプの試作品を作ります。
「ただ、これがなかなか商品化が決まらなかったんです。企画が通る通らないは、そのときのタイミングみたいなことがあるんですよ。反対する人もいたり、回転する方が売れているからなどいろいろな意見が出るものなので。でも、スライダーは絶対面白いと思っていたので、企画が通らなくて一年間商品が出なかった間に、開発会社さんとこっそり動いていたんです。いつもお世話になっている開発会社さんが費用が出るかどうかも分からない状況の中で、持ち出しで作ってくれました」と平林さん。 今でこそ、「そうめんスライダー」タイプの製品は類似品が発売されていますが、当時は回転するタイプしかありませんでした。そうめんが上から下りてくるという商品は、本物の竹で作られた流しそうめん以外には世界中探してもなかったのです。そういう特殊な商品だったにも関わらず、開発会社さんと平林さんは、こっそりと試作を重ねていたわけです。
「ビッグストリーム そうめんスライダー」の誕生と発展
これが、2016年5月に発売された、最初のそうめんスライダー製品「ビッグストリーム そうめんスライダー」。試作品からほぼ変わらない形で、しかも現行のベーシックタイプも、ほぼ同じ形状。最初から完成度が高い製品なのだ
「最初から、東京サマーランドさんに監修していただいたので、スライダーの形もリアルなんです。『DECOTTI(デコッティ)』で辻口さんとコラボしたことで商品が本格的になるという経験をしていたので、どこかプロの方に監修していただけたら、スライダー自体がより本格的になって魅力が増すと思ったんです。それで、子どもの頃遊びに行って楽しい思い出があるサマーランドさんに、お願いしに行きました」 実際に試作品を持って、東京サマーランドへ行き、目の前で実演してプレゼンしたそうです。この、実際に食べてもらって説得するというスタイルは、現在も続く平林さんの基本パターンになっているそうです。社内での試食会も平林製品では恒例行事です。 そうして、最初から「そうめんスライダー」はヒットしたのですが、世界にも類例がない製品だけに、最初の頃は生産量が少なく、品切れ状態が続きます。その翌年には、「ビッグストリーム そうめんスライダー エクストラジャンボ」という定価が1万2800円という、おもちゃとしてはかなり高額の製品を発売。これもヒットしてしまいます。
「当初は、そこまで大きくする気はなかったんです。でも開発会社さんがすごいでっかいのを作ってきてくださって、これ、大丈夫かなと思いつつも企画会議に持っていったら、それが通っちゃったんです。しかも、当たってしまったので、そこから巨大化の道を進みました」と平林さん。
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