Q. ギンナンのにおいが苦手です。体に害はないのでしょうか?
ギンナンのにおいはなぜ臭く感じるのでしょうか?
Q. 「ギンナンのにおいがとても苦手です。あんなに臭くて体に有害なのではないかと心配になります。イチョウはきれいなのに、ギンナンはなぜあんなにも臭いのでしょう? においで体に害が及ぶことはないのでしょうか?」
A. 「酪酸」のにおいなので臭く感じるのももっともです。害はありませんのでご安心を。
秋の街路を彩るイチョウは美しいですが、イチョウの種であるギンナンが道に転がっているのを誤って踏んでしまうと、耐えられないほどの悪臭がしますね。靴裏についてしまったまま電車に乗って、周りの人に迷惑をかけてしまったなんて方もいらっしゃるでしょう。ギンナンのにおいは強烈で、体にも悪そうな気がするかもしれませんが、ご心配なく。害はありません。
ギンナンのにおいの元は、主に「酪酸」という物質です。酪酸は、動物の体内で脂肪が分解されてできるものでもあるので、ギンナンのにおいが垢や汗を含む体臭や排泄物に似ていると感じられるのも無理はありません。不快な臭いは嫌なものですが、気にしすぎると、精神的なストレスによって健康を害してしまうかもしれませんので、秋の一時の出来事としてとらえ、気にしすぎないことをお勧めします。
しかし、どうしてギンナンは悪臭を発するのでしょうか。私たちが不快と感じるのと同じように多くの動物はギンナンを嫌うようです。つまり、悪臭のおかげでイチョウは落とした種を食べ尽くされずにすむのかもしれません。その一方で、その独特なにおいに魅かれる動物もいるようです。そうした限られた一部の動物に食べてもらえれば、種を違う場所に運んでもらえますから、子孫繁栄に役立つものと思われます。
イチョウは、約2億5千万年前の古生代中頃に地球上に出現した古い植物で、現在までその姿をほとんど変えることなく生き延びたことから、「生きた化石」とも呼ばれています。その生命力を支えてきたのが、悪臭だったのかもしれません。
ちなみにイチョウは「雌雄異株(しゆういしゅ)」の植物です。詳しくは「山椒の知られざる特徴…成分・効能・使い方・しびれの正体」で解説していますが、私たち人間と似て、雌花だけをつける株(雌木)と雄花だけをつける株(雄木)に分かれています。ギンナンを落とすのは雌木の方なので、最近は、街路樹には実をつけない雄木を選んで植えられることが多いようです。