亀山早苗の恋愛コラム

「孫はまだ?」と要求したら“嫁”がキレた。結婚も、子どもを産むのも「人の義務でしょ?」(2ページ目)

長女に20代で結婚しろと言い続け、嫁には早く孫の顔を見せろ、姑を尊敬しろと、まるで一世代前の価値観で生きているような50代の女性。子ども世代の全員と夫からも愛想をつかされてしまわないのか。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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「孫はまだ?」に「いいかげんにして」と言われ

息子が結婚した女性は2歳年上、仕事が大好きでいつも楽しそう。息子も彼女にベタ惚れだ。

「結婚してから息子はめったに実家に来なくなりました。息子が幸せならそれでいいとは思っていたけど」

ため息をつくアヤさん(60歳)。息子が結婚して3年、いまだに子どもができたという報告はない。

「結婚当初から、早く子どもをとことあるごとに言ってきたんです。そのたびに息子も嫁もはいはいと適当な返事をしていて。真剣に考えているのかしらとずっと不安でした。嫁はもう33歳になるんですよ」

嫁という言葉、もう33歳という言葉、いずれも反感をくらいそうだが、アヤさんは意に介する様子もない。彼女としては、それが本音だから。

「嫁にはときどき電話して、変わりがないかどうか聞いているんですが、先日も電話したけど留守電になっていて。かかってこないからまたかけたら、『すみません、今、残業中なので』と切られちゃった。息子に電話したら、息子も仕事中だと。夜8時ですよ。ふたりとも仕事ばかりしていたら、そのうち気持ちが離れるわよと言ったら、息子に『おかあさんは干渉しすぎだよ』と怒られました」

子どもを産むのは「人の義務」と主張

あげく、翌日にも“嫁”に電話をかけたアヤさんは、「仕事は適当にして、早く孫の顔を見せてよ」と冗談交じりに言ってしまった。それが息子の嫁の怒りを買った。

「『お義母さん、仕事は社会との接点です。責任があります。孫がほしいというのはお義母さんの個人的感情でしょう。いいかげんに私たちを放っておいてもらえませんか』って、すごい剣幕で言われたんですよ。昼休みに電話したのに、ろくに休みもせずに仕事をしていたらしくて。だからといってあんまりな言いようです。『嫁なんだから私に敬意を払いなさい』と言ったら、『はあ? 私が結婚したのはあなたの息子ですよ。あなたこそ私に敬意を払ったらどうですか』って」

言いながらアヤさんの声と手が震えた。今でも怒りはおさまっていないようだ。その後、息子から連絡があり、「妻は今、大きな仕事に取り組んでいる。邪魔しないでほしい。僕と彼女は仲良くやってるんだから、お母さんが引っかき回さないで」と怒られた。

「子どもを産むのがそんなに嫌なら、結婚する必要なんてないと思うんですよ。結婚したからには子どもを産み育てるのは人の義務でしょ。産めないならしかたがないけど」

彼女は産めるのかと聞くと、「それはわからないけど、産めるでしょ」とあまりに適当な答えが返ってきた。いずれにしても結婚も出産も個人の自由だからとアヤさんをなだめると、「みんなそう言うのね。人としてどうかと思う」と怒りの声が返ってきた。

その後、冷静さを取り戻したアヤさんは、「夫も放っておけというけど、どうして我が子を放っておくことができますか。大人になったとはいえ、私の息子であることに変わりはないのに」と涙ぐんだ。

「孫」は、彼女の生き方の集大成だったのかもしれない。それが得られないことは、彼女の人生が「不完全」だったことにつながるのではないだろうか。彼女のような人を責めるのは簡単だが、それだけでは彼女の人生が報われない。時代が進んだとはいえ、「女性の生き方」には、まだまだむずかしい面がある。
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