タイガー魔法瓶「真空断熱炭酸ボトル『MKB-T036/T048/T060』」。「MKB-T036」実勢価格4620円(税込)は容量0.36L、「MKB-T048」実勢価格4840円(税込)は0.48L、「MKB-T060」実勢価格5280円(税込)は0.6L。どのモデルも直径6.6cm、口径4.3cmのスリムタイプ
そのタイガー魔法瓶が、2023年の夏に発売したのが、真空断熱炭酸ボトル「MKB-T036/T048/T060」です。しかも、これらの製品は、タイガー魔法瓶創立100周年記念モデルとして発売されました。
その特長は何と言っても、炭酸対応で、保冷だけでなく“保温”にも対応したこと。これで、オールシーズン、中に入れる飲み物を気にすることなく使えるようになりました。
炭酸対応のボトルを保冷専用から保温にも対応させるのは難しいのか、現在のところ、KINTOの「トレイルタンブラー」くらいしか同様の製品は見当たりません。そういった技術面も含め、企画を担当したタイガー魔法瓶株式会社 ソリューショングループ 魔法瓶商品企画担当の高田愛子さんにお話を伺いました。
炭酸と保温の両方に対応するための工夫
――真空断熱炭酸ボトルを保温にも対応させるというのは、技術的に難しいものなのでしょうか?高田愛子さん(以下、高田):保温に対応させるためには、飲み口を大きくする必要があります。飲み口が細く、口にくわえて飲むタイプは、冷たい飲み物をごくごく飲むには向いているのですが、熱い飲み物だと直接のどに当たってしまって危険なのです。ただ、飲み口を大きくすると、保冷力の維持という点では不利になります。また、炭酸を保持するという意味でも、保冷力が高い方が有利なんです。昨年はとにかく「炭酸対応」という点を強く打ち出したかったので、細い飲み口を採用して、のどごしの心地良さなども味わってもらおうと、保冷専用として発売しました。 ――今回の製品の飲み口が、一般的な保温対応ボトルに比べると小さめなのは、そのあたりの事情もあるんですね。
高田:はい、そのあたりのバランスを考えて、今回の製品を企画しました。飲み口がくわえるタイプではなく、唇を付けて飲むタイプなら保温ボトルとして使えるので、マグボトル的な製品よりも飲み口は小さくなっていますが、くわえて飲むことはできない大きさにしています。 ――炭酸に対応するための、「バブルロジック」は前回の製品と同じなのですか?
高田:はい、全く同じものです。ただ、前回のモデルは飲み口が細かったので、栓の上部にスペースがあって、安全弁を入れる余裕がありました。今回はスリムなデザインと大きな飲み口を採用したので、栓全体が薄く小さくなりました。ここに同じように安全弁を入れ込むため、設計にいろいろ工夫しています。
――一見、安全弁は付いていないのかと思うようなデザインです。
高田:そこは、工夫したポイントでしたね。
「炭酸が入れられる」から「何でも入れられる」へ
――デザイン的には、炭酸っぽさを強調した前回に比べると、今回はもう少し一般的なデザインになっていますね。高田:前回は、それまで市場になかった「炭酸が入れられる真空断熱ボトル」ということで、炭酸を前面に打ち出すというコンセプトでした。なので、炭酸=冷たい飲み物という考えを基に保冷専用にして、デザインも炭酸のイメージで栓をバルブっぽい形にしたり、光沢のあるボディーにしたりしています。
一方、今回のコンセプトはそれとは違っていて、炭酸を含め、冷たいものも温かいものも、ほぼ全ての飲み物が入れられるというコンセプトで作りました。なのでデザインも普段使いしやすいようにと考えました。女性の手でもつかみやすいように本体は極力細くし、室内でも屋外でも持ち歩きやすいようにハンドルを付けるなどしています。これは、スラントハンドルというのですが、高さがあまり出ないようにするということと、指で引っ掛けて持ったときに指に沿いやすく、あまり重心がぶれないように、少し斜めになっているなどの点を考慮しました。細身なのでバッグに入れやすくなっています。
――サイズのラインアップも前回とは違っていますね。
高田:前回のモデルは、一番小さいのが0.5Lで、あとは0.8L、1.2L、1.5Lとなっていましたが、今回は一番大きいのが0.6Lで、あとは0.48L、0.36Lとなっています。これは普通のボトルでも展開しているサイズで、それにそろえたということもありますが、前回のモデルは、アウトドアでみんなでビールを注ぎ分けて飲むといった状況を想定していました。今回は、よりパーソナルな使われ方を想定したので、弊社の一般的なボトルのサイズに合わせています。
次の100年を見据えた「100周年記念モデル」
――「100周年モデル」であることを意識した部分を教えてください。高田:温かいものも冷たいものも炭酸も入れられるオールマイティーなボトルという点は、100周年のポイントにしています。また、落ち着いたデザインでありつつ、ハンドルを付けたり、ボディー表面の仕上げに部分的に光沢を残したりと、スポーティーなテイストも入れて、365日、オールシーズン使える製品をと考えました。
その他は、今後の100年を考えたとき、食洗機の普及はますます増えていくと思っているので、今回、フタも本体も全てを食洗機対応にしています。 ――食洗機に対応させるのは技術的に難しいのでしょうか。
高田:対応させるポイントは、まず本体の塗装の部分ですね。水流や洗剤、乾燥時の高温などに耐えられる塗料を使っています。そして、真空断熱ボトルはどのメーカーの製品もそうなのですが、底に真空状態を保護する意味でシールなどを貼っているのですが、このシールもはがれにくいものを使っています。
また、栓などの樹脂部分も高温で変形しにくいものを選んでいます。お客様のアンケートでも食洗機対応を望む声は多く、そういう方にもお届けしたいと思っています。ハンドルを可動式や取り外し式にしなかったのも、洗いやすさ、汚れのたまりにくさを考えたからなんです。 実際、使っていると、本当に使いやすい普通の真空断熱ボトルという感じです。しかも、細身のボディーで滑りにくい塗装が施されているので、持ちやすく、飲みやすいのです。それが、実は炭酸にも対応していて、万が一の場合に備えた安全弁も搭載している安全設計です。こういう信頼感の部分を大事にしているからこその100周年なのでしょう。
前回と同様、ボトル内部の汚れが付きにくく洗いやすいスーパークリーンPlus加工は、炭酸の保持にも威力を発揮するなど、真空断熱ボトルとしての基本性能が高いのも、日々使う道具としてポイントが高いのです。この先、炭酸対応というのも真空断熱ボトルのジャンルのひとつになっていくのだろうという期待を感じさせてくれますね。