脳科学・脳の健康

Q.「病的な幻覚」と「ただの気のせい」の境目はどこですか?

【脳科学者が解説】脳の働きが正常でなくなり、精神的な病気になった場合、幻聴や幻視などの幻覚症状が出ることがあります。一方で健康な人でも、「気のせい」で何かが見えたり聞こえたりした気がすることもあります。境目はどこなのか、わかりやすく解説します。

阿部 和穂

執筆者:阿部 和穂

脳科学・医薬ガイド

Q. 「名前を呼ばれた気がする」ことがあるのは、病気でしょうか?

幻視や幻聴などの幻覚に悩む女性イメージ

病的な幻視や幻聴などの幻覚と、ただの気のせいの違いは何でしょうか?


幻視や幻聴などの幻覚は、脳の働きが正常でなくなったときによく起こる症状の一つです。ただ、脳の働きに異常がなくても、「気のせい」で誰かがいる気がしたり、呼ばれた気がしたりすることはあるものです。境目はどこなのか、解説します。

Q. 「『病的な幻覚』と『よくある気のせい』の境目はどこですか? 精神的な病気になると、幻聴が聞こえたり、幻視が見えたりすることがあると聞きます。自分もたまに誰かいる気がしたり、名前を呼ばれた気がしたりすることがありますが、病気なのでしょうか?
 

A. ポイントは「自己と非自己の区別」。「気のせいかな」と思ったなら正常です 

精神疾患などに伴って生じる「幻覚」と、普通の方でも日常的に体験する「気のせい」は、まったく違います。ポイントは「自己と非自己の区別」ができているかどうかです。

みなさん、ご自身の脇の下を自分の手で触ってみてください。くすぐったいですか? おそらく全然何ともないと思います。では、誰かに脇を触られたときはどうでしょう? 自分から「ちょっと触ってみて」と頼んだ場合でも、少し触れられただけで、もう我慢できないくらいくすぐったいはずです。まだ全く触っていないうちからすでにくすぐったい感じがして「やっぱりやめて!」と言いたくなるかもしれません。

脳が正常に働いていれば、自分がやっていること=「自己」と、自分がやっていないこと=「非自己」の区別ができます。自分で触っている場合は、自分の意思でいつでもやめられますし、いま触れているかどうかを敏感に感じ取る必要はないので、脳の中で感覚を抑える神経のしくみ(ある種のブレーキ)が働いて「くすぐったい」と感じないように制御されます。一方で他人が触る場合は、自分ではコントロールできません。「触られた」ということをすぐに感知できるような感覚が保たれるため、すぐ「くすぐったい」と感じるのです。

ところが、ある種の精神疾患がある方ですと、こうなりません。「自己」を認識することができないので、自分で触った場合でも感覚を抑える神経のしくみが働きません。そのため、自分で触っても他人に触られても、同じように「くすぐったい」と感じてしまいます。つまり、「自己」と「非自己」が区別できないということが、病気の本質なのです。

頭の中に何かが思い浮かんだとき、脳が正常に働いていれば、それはあくまで自分で考えたことと分かります。ボーっとしているときや寝る前など、意識レベルが下がっているようなときには、何かが見えたり声が聞こえたように感じることがあるかもしれません。それでも、そのうちに「気のせいだ」と思えるのであれば、正常です。何も問題はありません。しかし、精神疾患などに伴う「幻覚」の場合は、自分の頭の中に何かが思い浮かんだだけなのに、それが「自己」だと認識できないため、「気のせい」という判断がつかず、実在しているようにしか捉えられないのです。

一般に「幻覚」とは、現実にない対象物があたかも存在するように知覚されることをさします。とくに、実際には発生していない音や人の声が聞こえるような場合は「幻聴」、誰もいないのに人が立っているのが見えるような場合は「幻視」というように、感覚の種類によっても分けられます。

みなさんが頭の中で誰かを思い浮かべて会話をしたとしても、声には出しませんよね。しかし、何らかの病気により幻覚を生じている場合は、独り言として声に出してしまう傾向があります。電車の中のように人がたくさんいるようなところでも、はっきりと話してしまうこともあります。これは、脳内で思い浮かべた人が、実際に目の前にいると思い込んでしまい、その人にちゃんと聞こえるように語りかけようとするためです。

心配が必要な状態かどうかは、「自己と非自己の認識ができるかどうか」が境目であるという点を、理解していただければと思います。
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