Q. 「お弁当に梅干しを入れれば腐らない」って本当ですか?
梅干しにお弁当を腐りにくくする効果はあるのでしょうか?
食中毒が気になる季節は、お弁当を腐らせない工夫が大切です。昔から言われている梅干しの抗菌効果は本当なのか、わかりやすく解説します。
Q. 「お弁当に梅干しを入れれば腐りにくくなりますか? 1つ入れただけでも効果があるのでしょうか?」
A. 残念ながら、梅干しにお弁当全体を腐りにくくする効果はありません
梅干し自体は腐りにくく長期保存できる食べ物です。しかし残念ながら、梅干しを入れたからといって、お弁当全体が腐りにくくなるわけではありません。そもそも梅干しは、ウメの果実を数日間塩漬けにした後、日光に当てて干した食品です。梅干しが長期間保存できるのは、クエン酸と塩分のはたらきによるものです。「クエン酸」は、ウメの果実に含まれ、独特な酸っぱさの元になっている成分で、抗菌効果があります。「塩分」については、とくに昔の梅干しは25~30%もの濃さの塩分で漬け込んで作られていたので、細菌の繁殖を抑える効果がありました。そのため梅干し自体は腐りにくく、長期保存ができるのです。
なお、ウメに含まれるアミグダリンという成分が分解してできる「ベンズアルデヒド」という化合物にも抗菌効果があるという説もありますが、実際のところ梅干しに含まれている量のベンズアルデヒドだけで細菌の繁殖を防ぐことは難しいと思われます。
このように抗菌効果がある梅干しなので「お弁当に入れるとよい」と考えられてきたようですが、1個や2個の梅干しを入れただけで、お弁当全体の傷みを防ぐことは不可能です。梅干しのすぐ近くのご飯の部分くらいは、塩分が浸みるので多少の効果があるかもしれませんが、全体への効果はありません。
気温の高くなる夏場は、食中毒の心配も高くなりますので、できるだけお弁当を傷みにくくする工夫が必要です。梅干しに頼るのではなく、「菌をつけない・やっつける・増やさない」の食中毒予防の3原則を心がけましょう。菌をつけないためには、徹底した手洗いや調理する器具の使用前後の手入れを欠かさず、清潔を保つことです。食材についているかもしれない菌をやっつけるには、しっかり加熱して調理しましょう。菌を増やさないためには、汁気の多い食材はできるだけ水分を切ることや、お弁当を作ったら十分に冷ましてから蓋をすることが有効です。持ち歩くときは、保冷剤を入れた保冷バッグにお弁当を入れるといいでしょう。
なお、抗菌効果がないのなら梅干しをお弁当に入れる必要がないと思う方がいらっしゃるかもしれませんが、梅干しはおいしいですし、唾液の分泌を促すことで食欲を増してくれる効果もあります。やっぱりお弁当には入っていてほしいですね。