2022年の生命保険会社数は前年度と変わらず42社ですが、アクサ生命とアクサダイレクト生命が2024年4月に合併予定です。
個人保険の新契約件数は2019年度比で20社増・19社減
最初に生命保険会社42社が新たに契約した個人保険の件数について取り上げます。個人保険は、個人年金保険を除く個人向けの保険のことで、終身保険や定期保険、医療保険、がん保険、こども保険等が含まれています。表は2022年度の新契約件数が多い順に並べてあります。前年度との比較の他、感染症の影響を確認できるよう感染症が流行する前の2019年度との比較もしてみました。各社の決算内容をそのまま載せているので、件数の単位に「千件」と「件」が混在しています。「-」は件数がありません。 生命保険協会の年次統計によると、2022年度の生命保険会社42社の新契約数の合計は1290万9967件で、前年の1226万1462件からは5.3%増えていますが、2019年度の1371万6543件からは5.9%減っています。
保険会社別で2022年度の新契約件数が最も多かったのは日本生命で、1年間で399万5000件もの新契約がありました。1社で全体の3割の件数なので物すごい数字ですが、前年度比では減っており、2019年度比では15.3%も少ないです。2番目に多い第一生命も前年度比で減っていて、2019年度比では43.4%もの大幅減となっています。感染症の影響で営業活動がまだ制限されていたことや、主力商品の変化、不祥事の影響等があったのでしょう。
一方で、感染症の影響を受けることなく件数を増やした保険会社もあります。SOMPOひまわり生命はがん保険が好調で、前年度比22.9%増、2019年度比では88.6%も増えています。メディケア生命は医療保険が好調で、前年度比では減っていますが2019年度比では255.7%も増えています。なないろ生命は2021年10月営業開始ですが、新契約件数を20万件まで増やしています。
比較可能な39社で新契約件数を2019年度と比べると、増加しているのが20社、減少しているのが19社なので、生命保険業界ではまだ感染症の影響が残っていると考えられます。
個人保険の保有契約件数は業界全体で2億件弱
次に生命保険会社が契約した個人保険の保有件数について取り上げます。保有契約件数は過去の契約の累積で、新契約があれば増え、解約や満期があれば減ります。 生命保険協会の年次統計によると、2022年度の生命保険会社42社の保有契約は1億9458万3371件となっています。日本の人口よりもはるかに多い件数です。前年度(1億9301万9098件)から1.5%増え、2019年度(1億8748万1014件)からは3.8%増えています。パーセントで書くと軽く感じますが、3年間で710万件と物すごい増加数です。個人保険の保有契約件数でも日本生命が最も多く、前年度より32万7000件増の3081万4000件で、日本生命のシェアは15.8%となっています。2番目に多いのは前年度と変わらずアフラック(2291万件)ですが、3番目の第一生命(2227万件)との差がかなり縮まっています。メディケア生命、ネオファースト生命、はなさく生命等は2019年度と比べて倍以上になっています。
毎年新規契約が上積みされるので、満期や解約に比べて新契約が極端に少なかったり、不祥事で解約が急増したりしなければ、保有契約件数は増えます。そのため、比較できる40社では、感染症の影響があっても、2019年度に比べて32社で保有契約件数が増えていて、減っているのは8社しかありません。
5番目の明治安田生命までが1千万件を超え、24番目のマニュライフ生命までが100万件を超えています。
個人年金保険の新契約件数が最も多いのはソニー生命
次は個人年金保険の新契約数です。生命保険会社の決算では個人年金保険を個人保険と分けて業績発表しています。表では2019年度~2022年度の新契約件数を載せています。なお、個人年金保険の新契約が全くない保険会社は、表に載せていません。 生命保険協会の年次統計によると、2022年度の個人年金保険の新契約数は997,526件で、前年の867,843件からは14.9%も増えていて、2019年度(916,429件)と比べても8.8%増えています。特徴として、2019年度は定額年金保険と変額年金保険の割合が83.5対16.5でしたが、2022年度は68.0対32.0で、わずか3年で変額年金保険の割合が約2倍に急増しています。円の金利が低いことから定額年金保険より変額で運用していく方に魅力を感じている人が増えているのでしょう。個人年金保険の新契約件数が千件以上ある生命保険会社は、わずか13社しかありません。2019年度(18社)と比べても5社も減っています。その中で最も新契約件数が多いのはソニー生命の31.3万件で、長く1位だった日本生命を逆転しました。2番目は第一フロンティア生命(24.9万件)、3番目が日本生命(12.3万件)となっています。
個人年金保険は金利の影響を受けやすい
最後に個人年金保険の保有契約件数の推移を確認しておきましょう。表では2019年度~2022年度の保有契約件数を載せています。 生命保険協会の年次統計によると、2022年度の個人年金保険の保有契約件数は、業界全体で2005万7947件となっています。前年度(2039万3818件)から1.6%減り、2019年度(2123万6614件)からは5.6%も減っています。個人年金保険の保有契約件数では日本生命が最も多く417万3000件となっています。2番目は住友生命(310万9000件)、3番目は明治安田生命(219万1000件)で、いずれも前年度より減っています。個人年金保険で保有契約件数が3年連続で増えているのは、ソニー生命とマニュライフ生命、ニッセイ・ウェルス生命の3社しかありません。逆に3年連続で減っているのは19社もあり、42社のうち13社では保有契約件数が1万件未満となっています。
個人年金保険は感染症の影響もあるでしょうが、低金利による運用環境の悪化が大きく影響しています。老後への備えとして個人年金保険(円建て)に加入するより、最近は変額や外貨建てを選んだり、iDeCoやNISA等の他の運用方法を選んだりしている人が増えているのではないでしょうか。
●後編の『生命保険業界は復活したのか?2022年度決算の年換算保険料とソルベンシー・マージン比率から考える』では、年換算保険料とソルベンシー・マージン比率で生命保険会社の業績を確認します。また、新型コロナウイルス感染症に関連した支払いがどのくらいだったかも取り上げます。