食生活・栄養知識

Q. プロテイン製品は体に悪い?毎日飲む効果と注意点を教えてください

【薬学部教授が解説】ダイエットや筋トレなどで愛用者も多いプロテイン製品。肉や魚を食べるよりも効率的にタンパク質が摂取できると人気のようですが、いくつか気になる点もあります。プロテイン製品のデメリットと、日常的な習慣にするときに考えたい注意点について、わかりやすく解説します。

阿部 和穂

執筆者:阿部 和穂

脳科学・医薬ガイド

Q. プロテイン製品は体にいい? 筋トレやダイエット中は毎日飲むべきでしょうか?

プロテインのデメリット・注意点

筋トレやダイエット中の人に愛用者も多いプロテイン製品。懸念点や注意点は?

現在、海外のものも含めてたくさんのプロテイン製品が販売されているようです。スポーツジムに通って筋トレやダイエットに励んでいて、愛用している方も多いようですが、いくつか考えるべき点と注意点もあります。わかりやすく解説します。

Q. 「筋トレやダイエット用のプロテイン製品は、タンパク質が効率よく吸収できて便利だと聞きました。肉や魚を食べるよりもいいのでしょうか? 食事代わりにするのは健康に悪いという人もいるようで、毎日の習慣にするかどうか、迷っています。」
 

A. 「プロテイン製品」にはいくつかの気になる点があります

「プロテイン」(protein)は、本来、英語で「タンパク質」を意味する言葉です。みなさんご存じの通り、タンパク質は私たちの体の筋肉や骨、皮膚などを構成する成分で、食事から摂取することが望ましい三大栄養素のうちのひとつです。肉や魚、牛乳、卵、大豆製品などを食べることで良質なタンパク質を摂取して、健康を維持することは大切です。

一方、近年は、「筋トレやダイエットに効果的」といった触れ込みで発売されている、タンパク質を主成分としたパウダーや固形食品などのサプリメントが「プロテイン」と呼ばれるようになり、一部で混乱が見られます。タンパク質を意味するプロテインと区別するために、以下では、サプリメントのプロテインのことを「プロテイン製品」と称します。筆者は、プロテイン製品には懐疑的で、健康のために摂るべきものとしてはお勧めしません。今回はその理由について、4つのポイントで解説します。

1. 成分や製造方法がよくわからない製品も多く、長期的な安全性が不明
第一に、プロテイン製品には実に多種類のものがあり、製品ごとに含まれている成分もまちまちです。そのため、すべてのプロテイン製品に対して、安全か危険かを一概に言うことはできません。多くの製品は、大豆由来のタンパク質である「ソイプロテイン」か、生乳由来のタンパク質である「ホエイプロテイン」を主成分としているようですが、他にもビタミンやミネラルに加え、その他多くの香料や人工甘味料などの添加物を含んでいるものが多いようです。

製造方法や成分のすべてが開示されていないため、海外の製品も含めて、十分な安全性試験が行われないまま発売されているものも見受けられます。とくに、長期的に摂取し続けたときに、どんな影響があるのかが不明な点も、毎日摂り続けるような製品としては気がかりです。筆者自身は、製造方法や成分がよくわからない人為的な加工品を、積極的に食べたり飲んだりしたいとは思いません。健康に気を配っているつもりの方たちが、なぜ人工的な食品をわざわざ意識して日常的にとろうとするのか、不思議です。

2. 高額な製品でも、自然の魚や肉からとれるタンパク質と結局は同じ
第二に、少し専門的な話になりますが、そもそもタンパク質とは20種類のアミノ酸が鎖状に多数連結してできた高分子化合物です。食べて体内に入ると、胃腸の消化酵素によって分解され、すべてが「アミノ酸」になってから吸収されます。このあたりは理科の授業の基本で習ったのを覚えている方が多いのではないでしょうか。

したがって、どんな種類のプロテイン製品を利用しようが、最終的には多種類のアミノ酸を摂取しているのと変わりません。プロテイン製品の中には、「吸収が速い」とか「吸収率が高い」といったふれこみ(実際にそうなのかは不明ですが)のものが見受けられますが、人体の消化のしくみから考えれば、どんな高額なプロテイン製品を摂っても、魚や肉などに含まれているタンパク質を食べることと本質的には変わりません。筆者はおいしい魚や肉を食べる方が好きですし、わざわざプロテイン製品を買おうとは思いません。

3. 自然の食材の栄養バランスの良さは未知数
第三に、「偏食」になる点です。どうしてもタンパク質だけを補いたいなら、プロテイン製品を利用するのは便利かもしれません。しかし、通常の食事代わりにプロテイン製品だけで済ますという方法は、単なる「偏食」になり、栄養バランスを保つ観点から良くありません。長年にわたる人類の経験から選び出された自然の食材には、タンパク質以外の栄養素が豊富に含まれていますし、私たちがまだ解き明かせていない健康成分が含まれている可能性もあります。それらをあえて削ぎ落したような製品だけを積極的に摂取することは、かえって「栄養失調」をまねくと考えた方がいいと思います。

4. 噛まない食事スタイルにより健康を損なうリスク
第四に、粉末状のプロテイン製品をシェイカーなどで水に溶かして飲むだけという食事スタイルの弊害も考えた方がいいでしょう。食事の健康効果は、栄養を摂るだけでなく、「噛む」ことも重要です。詳しくは、「しっかり噛めば認知症予防になる?歯と脳の健康の意外な関係」をご覧ください。

食材をしっかりと噛んで食べることが健康に良い効果をもたらすことは、古くから一般的にいわれていることですが、近年では咀嚼運動と脳機能の関係を解明するために、ネズミの奥歯を取り去った場合に記憶力がどう変化するかを調べる実験を行った研究報告があります。その結果は、奥歯を失い餌を噛んで食べられなくなったネズミは、記憶力が悪くなるとともに、脳の一部の神経細胞密度が低下するというものでした。噛まない食習慣が脳機能の低下につながる可能性がありますので、しっかり噛んで食事をすることの意味を見直すべきだと思います。詳しくは「認知症予防に有効な食事はある?食材の選び方・調理法のポイント」もあわせてご覧ください。

以上のように、プロテイン製品にはいくつかの気になる点があるため、筆者自身は利用していませんし、お勧めもしていません。ただし、とりわけ危険性が明らかな食品だというわけでもありませんから、健康体でプロテイン製品が大好きという人は、ご自身の判断で利用するのがよいかと思います。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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