彼が仕切りすぎて「失敗した」
同棲したために「失敗した」と感じている女性は他にもいる。アヤコさん(34歳)は、2年付き合った彼と結婚を視野に入れつつ同居に踏み切った。「もともと彼がきれい好きだということは知っていましたが、彼も私もそれまで実家住みだったので、なかなか自分の目で見て確認はできなかった。たまたま私が異動で限りなく埼玉県に近い都内の営業所へ行くことになり、実家のある神奈川からは通うのがつらいということでひとり暮らしを始めようとしたんです。そうしたら彼が、自分も実家を出たいから一緒に住もうって」
彼は在宅ワークの多い仕事なので、どこに住んでもたいして変わらないと彼女の利便性を優先してくれた。そこで会社から20分圏内という便利な場所に住むことにした。
「彼は『オレのほうが時間の自由がきくから、家事も任せて』と。ありがたかった。実際、遅く帰宅しても部屋はきれいだし夕飯はできてるし。しかもおいしいんですよ」
だが、ありがたく恩恵を受けているだけではすまなかった。彼のきれい好きは、部屋を自分の思うように管理したい気持ちの表れで、それはそのまま彼女への管理にもつながっていった。
「何時に帰るのから始まって、残業だと連絡すると『どういう残業?』って。仕事内容を説明するわけにはいかないというと、『アヤコが残業しなければならない理由は?』と始まる。住居は2LDKで、それぞれの部屋があるんですが、私が自分の部屋を適当にしか掃除しないと怒られました。私がいない間に部屋に入ってもいたみたい。別に見られて困るものがあるわけじゃないけど、『私だって家賃を半分払っているんだし、プライバシーの侵害はしないでほしい』と言ったら、『きみがどうやって部屋を使っているか気になる。きれいにしておいてほしいんだ』と。それはあなたの好みであって、私だってゴミ部屋にしているわけじゃないんだから放っておいてと言い返す。1年後には毎日のようにケンカが勃発していました」
彼女自身は「私は決してきれい好きとはいえないけど、それほどだらしないわけではない」と信じていた。部屋に食べ物のゴミなどはいっさいなかったし、バスルームの排水口も自ら掃除していた。なのに彼は「長い毛が床に落ちていて汚らしい」と言った。
「それが決定的でしたね。私の髪の毛が汚らしいと言われてまで一緒にいる理由はないと思いました」
次の更新を待たずに彼女は家を出た。新たな部屋を契約したとき、この部屋は自分の好きなように使えると思ったら、急に深呼吸ができるようになった。それまでずっと息が浅かったのだと彼からのプレッシャーを改めて感じたそうだ。浅い息で生きるのはつらい。同棲すると、それまでわからなかった相手の癖や価値観がよくわかるのかもしれない。