貯蓄

貯金1000万円の賢い使い方

先日、こんな質問をいただきました。「やっと1000万円を貯金できました。でも、貯金が増えても生活は楽にならず、お金の扱い方が分かりません。これから、どうすればよいでしょうか?」今回は、この質問にお答えします。

中原 良太

執筆者:中原 良太

エビデンスに基づく資産活用&マネープランガイド

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先日、こんな質問をいただきました。

「やっと1000万円を貯金できました。でも、貯金が増えても生活は楽にならず、お金の扱い方が分かりません。これから、どうすればよいでしょうか?」

今回は、この質問にお答えします。
1000万円の貯金、どうする?

1000万円の貯金、どうする?

そもそも、貯金はあくまで「有事の備え」

本題へ移る前に、そもそもの話として「貯金は効率が悪い」ことを説明します。

ほどよい貯金は「有事の備え」になります。しかし、度がすぎると「宝の持ち腐れ」です。

極論、お金はただの紙切れです。しかも、この紙切れの価値は日に日に薄れていきます。なぜなら、国が次々にお金を印刷していて、希少価値が薄れていくからです。

通貨の価値が薄れること。これを「インフレ」といいます。物価が上がり、通貨一枚一枚の価値が減ってしまうのです。

さいきんは、日本でもインフレが起きています。2022年度、日本の消費者物価指数は前年度比3%上がりました。つまり、「1年で3%物価が上がり」「1年で3%貨幣価値が下がった」ということです。

そんな「ただの紙切れを蓄える(=貯金する)」ことに、何の意味があるのか?というと、それは「有事に備えるため」です。

有事に備えるというのは、大きな支出に備えて、念のため、すぐに使えるお金を用意しておく……ということです。たとえば、急に病気になるとか、ケガをするとか、そういったときに、蓄えておいたお金が役に立ちます。

しかし、蓄えは「あればあるほどよい」……というワケではありません。

たとえば、手元に1億円のお金を「有事に備えて備蓄する」ことは、自宅に非常食や飲料水を10年分、蓄えるようなものです。宝の持ち腐れです。1年分の生活費が貯まっていれば、有事に対応するには十分でしょうから、多すぎる蓄えは「もったいない」と言わざるを得ません。

お金の価値が低下する?インフレの脅威

先にも述べたとおり、お金はインフレで価値が下がります。肉や魚が腐るのは「あっという間」なので分かりやすいですが、お金の価値が下がっていくのには時間がかかります。何年もかけて少しずつ下がるので、なかなか危機感が出てこないのが恐ろしいところです。

少し話がそれますが、1つ経験則をご紹介しましょう。それは「世界で争いが増えるほどインフレが加速する」という経験則です。

バブル崩壊以降、日本の物価はほとんど上がりませんでした。それは、米ソ冷戦が終結してから、大きな争いがなかったからです。世界中のものを安く手に入れられる時代だったからこそ、ここ30年、僕らは「安い買い物」ができました。

しかし近年、その前提が崩れてきています。ロシアがウクライナを侵攻してから、物価が急騰しています。

ちなみに、前回の冷戦があったときには、日本では激しいインフレが続いていました。

たとえば、吉野家の牛丼を例にとって考えてみましょう。吉野家の牛丼は1965年までは120円でしたが、1990年には400円になりました。25年で価格は「2倍以上」になっていたのです。

「世界で争いが増えるほどインフレが加速する」という経験則は、いまも昔も変わりません。

インフレが起きる世界では、過度な貯金は腐っていきます。だから、腐らせないためにも、うまく使い道を見つけて、融資をするなり、投資をするなりしたほうがよいです。

お金の賢い使い道は3つ

過度な貯金を腐らせないために、賢く使う方法は3通りあります。

1つは、「誰かに貸し出して、金利を受け取る」ことです。たとえば、僕らの場合は「上場企業にお金を貸し出す」とか「国にお金を貸し出す」といったことができます。

もちろん、お金を貸すのにはリスクが伴います。ですが、その対価として利息を受け取れます。「お金を持ち腐れにするリスク」を取るか、「企業に貸し出して貸し倒れにされるリスク」を取るか。この2つのリスクを天秤にかけて、よりおいしいほうを選ぶとよいでしょう。

もう1つは、「誰かに投資して、配当を受け取る」ことです。たとえば、僕らの場合は「上場企業に投資する」とか「自分自身に投資して事業を興す」といったことができます。投資先を選ぶのが難しい場合は、インデックス投資などで運用するとよいでしょう。

さいごの1つは、「これから希少価値の高まるものを買う」ことです。たとえば、ロレックスなどの高級腕時計や、純金などを買うことが挙げられます。「将来、みなが欲しがる。でも生産量が限られている」というものを先回りして買うことで、貨幣よりはマシな資産になります(貨幣は自由に印刷されてしまう分、希少価値は薄れる一方だからです)。投資というよりは投機ですが、1つの選択肢として知っておくとよいでしょう。

まとめ

要点をまとめると、
(1)貯金の目的は「有事の備え」
(2)貯金の度がすぎると「宝の持ち腐れ」になる
(3)お金も腐る(特に、世界で争いが増えたとき)
(4)お金の使い道は、「融資」「投資」「投機」の3つ

といえます。

貯金が1000万円を超えてくると、ここから先はインフレが足を引っ張ります。貯めても貯めても、インフレのせいでお金が腐っていき、貯金の価値が目減りしていってしまうのです。

インフレの悪影響を少しでも抑えるためには「貯金は必要最低限」にして、賢くお金を使う必要があります。いまある貯金を腐らせないためにも、「どうやったらうまく使えるか?」と考えてみてはいかがでしょうか。
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