使い回しができない
その日に挽肉を使わなかったら、次の日に何らかの料理で使えばいい。だが、アユさんは翌日は、計画していた献立にのっとろうとする。だから挽肉はそのまま。「そぼろでも作って冷凍しておけばいいんですけどね。毎晩、僕が冷蔵庫をチェックして作ればいいけど、さすがに残業が続くとそこまでできない。妻には何度も言っているんですが、『人間なんだから忘れることもあるわよ。私のミスは許せないの?』と逆ギレされます。基本的に妻のことは信頼しているけど、食材への無責任さだけは我慢できないんですよ」
何度も口げんかになったし、妻もそのたびに「気をつける」とは言うのだが、一向に改善されない。つい先日は「だったら自分でやればいいでしょう」と言われたそうだ。
「こういうことはみんなで気をつけていかないと。子どももお菓子など、賞味期限を見てポイ捨てすることがあるんですよ。ほんの2、3日しかたってないのに。大丈夫だよ、食べられるよと言っても『期限が過ぎたら捨てろってママに言われてる』と。嘆かわしいですねえ。自分で匂いをかいで食べられるかどうか判断する力を養わないなんて。もちろん、そのお菓子は僕が拾って食べました、子どもの目の前で」
賞味期限を過ぎないように消費していくこと、万が一、過ぎていてもあくまで「賞味期限」なのだから食べられる可能性が高いことを子どもには教えていきたいと彼は言う。もちろん、そこには母親の協力も必須だ。
「計画を立てて食材を使えないなら、週に3回くらい少しずつ買い出しをしてもいいのではないかと今は考えています。ネットスーパーなども使えばできるはず。捨てるものを減らすことが最優先ですから」
そんなシュウヘイさんに、アユさんは「めんどうな人ね、偉そうに」と言い放ったそうだ。
「せつないです」
そう言ったシュウヘイさんの顔が歪んでいた。