Q. 海外旅行中にお腹を壊してしまうことがあるのは、なぜでしょうか?
海外旅行での食事も旅の楽しみの一つ。安全に楽しむために注意すべきことは?
海外旅行では、その土地ならではの食事も、楽しみの一つでしょう。しかし、水や食べ物には注意するようによく言われます。これは一概に、衛生環境の違いとは言えません。旅先で下痢や嘔吐をしてしまうことがある理由として、考えられる原因を解説します。
Q. 「友達と海外旅行した時、現地の人と同じものを食べたところ、全員がお腹を壊しました。現地の人は平気で食べているのに、何の差なのでしょうか?」
A. 「食=安全で当たり前」という考え自体が誤り。考えられるリスクはさまざまです
いつ、どの国で、何を、どれくらい、どのように食べたかによって答えは変わりますので、一概には言えません。可能性としては、次のようにさまざまな原因が考えられます。1. 遺伝・人種による違い
同じ人類でも、食べ物の消化や代謝に関わる体のしくみは、遺伝的に、人種間で異なることが知られています。たとえば、日本人は欧米人に比べるとお酒に弱い傾向があります。これは日本人の方が、肝臓のアルコールを分解する酵素の働きが弱いことが多いためです(詳しくは「お酒に強くなる方法はあるのか?強い人と弱い人の違い」をご覧ください)。食べ物の種類によっては、同じような人種による原因も考えられるでしょう。
2. 各地域での長年の食生活の違い
食べ物に対する反応には個人差があります。昔の人は、食べたことのないものを口にすることを繰り返しながら、身をもって体にいいものと悪いものを区別してきたに違いありません。その過程では、不幸にして命を落とす人もいたことでしょう。それが繰り返されながら長年の世代交代が進み、結果的にそれぞれの地域は、その地域ならではの食べ物を、問題なく食べられる人で構成されているということになります。
3. 細菌等への抵抗性の違い
もしお腹を壊した原因が、細菌等による食中毒だった場合、その細菌に対する抵抗性の違いが考えられます。1や2と同じように、細菌に対しても、遺伝的背景だったり、長年の自然淘汰の中で特定の細菌に対して回復できる体質の人がその地域に残ることができ、暮らしているからという可能性も考えられます。
4. 食べ方の知識の違い
同じように、現地の人たちは、その地域ならではの食べ物を安全に食べるノウハウを知っています。日本では、生の魚を刺身にしたり、生卵を食べたり、フグを食べたりもしますが、これもそれぞれを安全に食べるノウハウがあるからですね。食べ物によっては、食べてよい部位と食べてはいけない部位などがありますから、知識がないままに現地の食材を食べれば、食あたりになることもあり得ます。
5. 旅行中の疲れ・ストレスなど、精神状態の違い
自分が住み慣れた場所にいる時に比べて、知らない国を訪れている旅行中は、緊張状態が続きます。体調も影響を受けやすくなります。具体的には、自律神経系が交感神経優位に傾くことによって、胃腸の動きが低下して下痢や便秘を生じやすくなることもあります。また、過密スケジュールの場合は、疲れも溜まりやすく、その結果免疫力が低下して、風邪をひきやすくなったり、肌が荒れたりします。同じように食あたりも起きやすくなります。
そもそも「食べるという行為」は本来、必ずしも安全なものではありません。地球上の生物は、動植物を問わずすべて生存競争を生き抜こうとするため、自身が食べられないように「毒」などの手段を持っています。先人たちがさまざまな経験を経て、安全に食べられるものや方法を見つけ、現地に適した形で根付いてきたのが、現在の私たちが口にできる食べ物です。何の知識も経験もない異国の人が急にその国を訪れて、未知の食べ物を口にしたときに、想定外の反応が起こるのは当然と言えば当然ではないでしょうか。十分に気をつけて、旅を楽しむようにしましょう。