恋愛に臆病というわけではない
30歳になるカナさんも、恋愛には慎重派だ。20代で一度懲りたからだと苦笑する。「男性にのめり込んだわけではないんです。私の周りでも、男に惚れ込んで自分の生活や人生を破綻させるのは賢明ではないという意見が主流だったし、私自身もそう思っていた。それなのに25歳のころだまされたんですよ。独身だと思って付き合っていたら相手が既婚だった。しかも私、奥さんに訴えられてしまって。ただ、私自身も被害者ですから、結局、弁護士に相談して慰謝料は相殺みたいな話にはなりました。ただ、それで懲りましたね。惚れ込んだ相手でもないのにもめごとになって。職場の上司に相談して、会社にバレないようにしてもらいましたが、なんだか妙な負い目を感じたし」
結局、彼女は退職、転職をせざるをえなかった。友人たちの間では「既婚だとわからなくてもしかたないよね」と言われたが、カナさんは相手の本性を見抜けないのが悔しくてたまらなかったという。
「自分から好きになったというより流された恋愛だった。それも悔しかったですね。だからきちんと主体性をもって恋愛をしようと思ったら、恋愛自体が遠ざかってしまった。今はそういう状況のような気がします」
恋愛にすべてを賭けるのはやはり違うとカナさんも考えている。恋愛は人生の中で起こりうる事象のひとつだ、と。結婚も仕事も同じこと。どれを主軸に置くかはその人によって違うだろうけれど、自分は恋愛を主軸にはしないとカナさんはつぶやいた。
「自分のハンドリングを越えることが多いから。友人付き合いは相手を慮りながらも自分のペースでできるし、仕事は努力すれば成果が見えることも多い。でも恋愛はそうはいかないんですよね。異性だしそれまでの文化も違うから、想像を超えることもある。それによって自分が破壊される恐れもある。そこに踏み込むだけの勇気も気力もないとも言えますけどね」
周りを見ても、恋愛に翻弄される友人は少ないとカナさんも言う。今の時代のアラサーにとって、やはり恋愛はコスパもタイパも悪い筆頭にあげられるものなのかもしれない。