高額療養費
病気やケガで高額な医療費がかかっても、1カ月に負担する医療費は一定額までで抑えられる制度が、健康保険の「高額療養費制度」です。窓口で支払った医療費が、一定の自己負担限度額を超えたら、超えた分が加入している健康保険から戻ってきます。それぞれの自己負担限度額は、年齢と収入で決められた計算式に、実際に1カ月にかかった医療費を当てはめて算出します。
例えば、69歳以下で年収が約370万~770万円の人が、1カ月の医療費として窓口で30万円を支払った場合、自己負担は3割なので医療費の総額は100万円です。この場合の自己負担限度額の計算式は、8万100円+(医療費総額100万円-26万7000円)×1%で、限度額は8万7430円になります。窓口で支払った30万円から、この分を差し引いた21万2570円が、申請によって払い戻されます。
どの健康保険でも利用できる制度で、69歳以下の1カ月の上限額は年収により5つの区分に分かれます。加入する健康保険のしおりなどで確認しましょう。健康保険組合によっては付加給付によって、自己負担限度額がこれより低い場合もあります。当てはまる際は、加入中の健康保険の窓口に申請します。
傷病手当金
会社員や公務員などが、病気やケガで仕事を休み、療養のために休業して給料などが支給されない場合に、自身が加入する健康保険から支給されるのが「傷病手当金」です。連続して3日間休んだとき、休業4日目から支給されます。支給される期間は通算して最長1年6カ月。支給額は1日当たりの給与の約3分の2に休業日数をかけた分です。勤務先の健康保険の窓口を通して手続きを行います。詳しくは「病気やケガでの休業でもらえる「傷病手当金」の仕組みとは?」をご確認ください。労災保険(労災)
通勤途中や仕事中にケガをしたり、それが原因で病気にかかったりした場合は、「労災保険」からの給付が受けられます。労災指定病院にかかるときは、無料で治療を受けることができます。労災指定病院以外で治療を受けたときは、いったん治療費を自己負担したあと、会社に報告し、労働基準監督署に書類を提出することで請求できます。手続きで分からないことがあれば、会社に相談してサポートを受けましょう。労災保険は会社に雇用される人であれば、正社員のほかパートやアルバイトも対象で、治療費のほか、休業に対しても給付が受けられます。医療費控除とセルフメディケーション税制
「医療費控除」と「セルフメディケーション税制」は、税金を軽減する所得控除の一つです。同じ年に両方を利用することはできず、どちらかを選択することになります。「医療費控除」は、1年間の医療費の合計が10万円(または所得の5%)以上かかったときに、超えた分が医療費控除額となり、その年の所得から差し引くことができます。
「セルフメディケーション税制」は、薬局などで対象となる医薬品を購入し、その合計額が1年間で1万2000円以上になったときに、超えた分が控除額となり、所得から差し引くことができます。
どちらも、結果として納税額を減らすことができます。生計を一にする家族の分も合計することが可能なので、医療費については家族の分の領収書を保存しておきましょう。それを基に明細書を作成し、翌年の確定申告の際に申告書と一緒に明細書も提出すれば、納めすぎた税金の還付を受けることができます。
障害年金
「障害年金」は、病気やケガが原因で一定の障害状態になったときに、初診日に加入していた公的年金から支給されます。図のとおり、条件を満たせば、現役世代でも受給でき、近年では、うつ病や統合失調症などの精神障害で受給している人が多くなっています。会社員や公務員などの厚生年金加入者は、1級・2級が「障害厚生年金」と「障害基礎年金」の両方受け取れ、3級は「障害厚生年金」のみ。自営業者などの国民年金加入者は1級・2級で「障害基礎年金」だけになります。どちらも最寄りの年金事務所などで必要書類を確認して手続きを行います。
記事協力:インタープレス