人間関係

多様性とは?「うちは“普通”だと思っていた」と混乱する私に、娘は「普通って何?」と言った

子どもが同性愛者だとカミングアウトをしたら?「多様性」については頭ではわかっていても、いざ自分の家族のことになると不安にもなる。でも、よく話を聞いてみれば、その不安は自分の価値観の通りに生きてくれない子どもへの思いから来ていることもある。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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「多様性」が叫ばれている今だが、どこか他人事として受け止めている感がなきにしもあらずだ。「自分は普通だけど、いろいろな生き方をしている人がいていいんじゃない?」という雰囲気ではないだろうか。実際、子どもからカミングアウトされたら、人はどう感じるのだろうか。
娘が同性愛者だと知ったとき、母は……

娘が同性愛者だと知ったとき、母は……

うちは「普通」だと思っていた

「娘が16歳のころ、『私は女の子が好き』と聞かされたことがあるんです。まあ、その年齢の子なら当然かなと思って、なんとなく聞き流していたんですよね」

そういうのはレイコさん(49歳)だ。25歳のときに10歳年上の職場の先輩と結婚、娘をもうけたが夫のモラハラに耐えきれず離婚した経緯がある。

「夫は家でも“先輩”だったので疲れてしまいました。結婚したときはすでに娘がお腹にいたんですが、それでも共働きで家事はすべて私。おかずが少ないと夕飯いらない、外で食べてくると出て行ってしまうような人だった。最初はやさしかったんですけどね、つわりがひどくて私が具合悪いと不機嫌になる」

それでも娘が生まれたときは夫も大喜びだったのだ。これで彼も変わってくれると信じたが、夜泣きする娘を彼は愛そうとしなかった。彼の周りにいる人間は、常に元気で彼を支えるべきだと考えているとレイコさんは感じた。

「だから娘が保育園でインフルエンザをもらってきて、それが私にもうつったとき、夫はホテルに避難していたくらい。全員かかるよりマシだろと言ってましたが、だからといって買い物をしてくれるわけでもない。私はインフルが長引いてなかなか咳がおさまらなかったので、夫が帰宅するようになったのは2週間以上たってからでしたね」

気持ちはごく自然に「離婚」へと向かっていった。娘が4歳のときに離婚、それからはふたりきりで頑張ってきた。

「仕事があったから、なんとか生活はできました。うちの両親も物心両面で支えてくれた」

娘は無事に第一志望の公立高校に進学。女の子が好きという発言は入学した高校になじんできたころの話だ。

「私は何もわかってなかったんですよ。高校生活を楽しんでいると思っていたから、娘には『彼氏、できないの?』なんてことも聞いていた」

そして昨年、大学を卒業した娘が再び言った。

「私は女の子が好きなんだよ」

16歳のときとは言葉の重みが違っていた。

「え、娘が同性愛者だということ? 混乱した私は、うちは普通だと思っていたのにとつぶやいてしまったんです。娘は悲しそうな目で私を見て、『普通って何?』と言ったんです。私はますます混乱していきました」

>娘に自分の価値観を押し付けていた
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