「2024年から、NISAが新しくなります。従来のNISA制度との違いや、気をつけるべき点はありますか?」
今回は、この質問にお答えします。
そもそも従来型NISA制度と新しいNISA制度とは?
本題へ移る前に。そもそも「従来のNISA制度って何?」と思っている方もいるでしょう。まずは、ここから説明します。従来のNISA制度は2014年から始まった税制優遇制度です。「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3種類があり、利用することで、投資で得た利益を非課税にすることができます。
しかし、従来のNISA制度には問題がありました。
たとえば、従来のNISAでは「つみたてNISAは非課税枠が小さすぎる」「一般NISAは、特に個別株を買った場合は非課税期間を使いきれない可能性が高い」といった弱点がありました。筆者個人的には、この2つはかなり大きな問題でした。
第一に、つみたてNISAは年40万円しか非課税枠がなかったため、非課税枠が小さすぎました。
第二に、一般NISAでは、特に個別株投資などをしていると、非課税期間をすべて使え切れる可能性が極めて低かったです。
個別株投資をしている方ならご存じでしょうが、上場企業の業績はとても不安定です。
参考例として、2023年4月の日本株で考えてみましょう。日本にはおよそ4000社の上場企業があります。このうち直近の四半期で「増益」を達成した会社、すなわち業績が伸びて、企業価値が伸びた会社は、半分しかありません。残りの半分は「減益」……つまり、業績が悪くなって、企業価値が目減りしたと言えます。
決算発表は年に4回あります。ちなみに、この5年間ずっと増益(=20四半期連続で増益)を達成できたのは5社だけです。上場企業は4000社近くあるワケですから、これだけ着実に成長している株を引き当てるには、「上位0.1%のすごい会社」を見つける必要があります。残りの99.9%の上場企業は、5年間で少なくとも1回の減益を経験しています。
日本株に幅広く当てはまる経験則として、「業績が悪い株は企業価値が下がり、株価も下がりやすい」傾向があります。これは、極めて割安な株でさえ当てはまります。だから、業績が悪くなったら、株を売るのが合理的なことが多いです。
つまり、たとえ従来の一般NISAで日本株を買ったとしても、ほとんどすべての銘柄は、非課税期間が終わる前に業績がいちどは悪化します。業績が悪くなるたびに株を売っていたら、1年もしないうちに、大半の株を売って撤退することになります。個別株投資の場合、従来の一般NISAで非課税期間を使い切れる可能性はかなり低いと言えます。
まとめると、従来型NISAは「つみたてNISAだと非課税枠が少なすぎる」「一般NISAだと非課税期間を活かしきれない」という弱点がありました。
しかし、2024年から始まる新しいNISA制度では、これらの弱点が克服されました。非課税枠は最大1800万円に拡大され、しかもつみたてNISAと一般NISAを併用できるようになったのです。
新しいNISA制度を、お得に使う方法とは? 高配当株への投資も?
たとえば、新しいNISA制度では「高配当株をたくさん買って、配当利回りが高いかぎり持ち続ける。配当利回りが下がってきたら売る」というように、高配当株だけに絞った運用もできます。5年間も高配当を維持できる会社は多くありませんから、従来型NISA制度ではこういう運用もやりにくかったと思います。しかし、2024年から始まる新しいNISA制度では、成長投資枠では臨機応変に投資をしながら、つみたてNISAで非課税枠をすこしずつ埋めていくことができます。賢明な投資家ほど、大いに資産形成に役立てられるでしょう。
まとめ
要点をまとめると、「従来型NISA制度は、つみたてNISAは非課税枠が小さく、一般NISAは特に個別株投資だと非課税期間も使い切りにくく「痒いところに手が届かない」制度だった」
「新しいNISA制度は、「大きな非課税枠」と「成長投資と積立投資を併用できる」という2点が改善され、従来よりも有利な税制優遇制度になった」
という2点に集約できます。
正直に言えば、筆者は2023年までの従来のNISA制度は「使い勝手が悪いなー」と感じていました。非課税期間を使い切ったことはいちどもなく、もどかしい思いをしました。
しかし、2024年からは、より使い勝手がよくなります。あなたも、いまのうちから、「新しいNISA制度をどうやって使おうかな?」と、使いみちを考えておいてはいかがでしょうか?
●参考HP
金融庁「新しいNISA」
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/index.html