夫が戻ってきたらそのとき考えればいい
ママ友の夫も、深刻な不倫に陥っているわけではなさそうだし、経済的に不自由が生じているわけでもない。「だったらあまり追いつめないほうがいいというのが私の考え方。それは夫の逃げ場をなくさないようにしようということではなくて、勝手にさせておけばいいんじゃないのという冷たい気持ちからなんですけどね」
ところがママ友にはドン引きされ、あげく「浮気しているような夫を父親にもつ子どものことを考えたことがあるの?」と反論された。子どもに知られないようにすればいいだけのことなのにねとヨシノさんは苦笑した。
「夫の愛情を期待するからガッカリするんですよね。私が夫に期待しているのは、生活費と子どもへの愛情。それ以外は期待していません。私は夫に内緒でパート仕事をしているけど、その収入は自分のために貯めています。すべての答えを出すのは、下の子が18歳になってから。あと10年強ありますから、自分の身の振り方も含めてゆっくり考えていこうと思っています」
そんな家庭でいいのかとママ友には言われた。「何か問題あるのかな」とヨシノさんは答えたという。
「私は夫を憎んでいるわけではないんです。彼にとって、家庭は責任をもたなければいけないもののようだし、子どもたちもかわいい。そして家庭は私にすべて任せきり。そういう役割でやっていくなら、それでいいと思っているだけです。親としての役割はお互い、きちんと果たそうねと」
いつしか夫への恋愛感情は消え、父親としてだけ評価するようになった。だから夫が浮気していても、特に何か言うつもりはないのだという。
「ママ友には理解されなかったし、むしろドン引きされたけど、私、そんなにヘンなことを言ってますか? 自分が悩まないように苦しまないように、家庭で子どもたちに悪影響がないようにと思ってやってきたら、こういう結論に達しただけなのに」
割り切ってしまえば確かに楽かもしれない。だがこの先ずっと、愛せない夫と暮らしていくことをどう思っているのだろうか。
「男女の愛情なんてなくても、家庭は回っていきますよ。うまく回っていけばそれでいい。むしろ両親が諍いを起こしたり反目しあったりしていたら、子どもたちが悲しむんじゃないでしょうか」
達観なのか強がりなのかわからないが、彼女は淡々と、穏やかに、しかし口調はさばさばしていた。自分が納得できる理屈をもって生活できるなら迷いも苦悩もないのだろう。
「今のところは、ですね。この先どうなるかわからないけど、ただ、見捨てないでとすがりつくようなオンナにはなりたくない。そう思っています」