大学受験

芦田愛菜と小倉優子「早慶受験の合否」を分けた、「学力差」以上に気になった2大要因

慶應義塾大学に合格した芦田愛菜さんと、早稲田大学に不合格となった小倉優子さん。両者の明暗を分けた要因とは? 教育アドバイザーの視点で解説します。

伊藤 敏雄

執筆者:伊藤 敏雄

学習・受験ガイド

女優の芦田愛菜さんが系列校の慶應義塾大学法学部に合格し進学することが発表されたのは記憶に新しいところです。一方、TBS系で放送されていたバラエティー番組『100%!アピールちゃん』(毎日放送)の番組企画で早稲田大学受験を表明していたゆうこりんこと小倉優子さんも、2022年8月の番組打ち切り後も受験勉強に励み、同じくTBS系の別番組『月曜の蛙、大海を知る。』内で合否結果を報告。受験した6校のうち白百合女子大学に合格、学習院女子大学は補欠合格、本命の早稲田大学には不合格だったことが明らかになりました。
芦田愛菜と小倉優子の「早慶受験の合否」を分けた要因とは

芦田愛菜と小倉優子の早慶受験の合否を分けた要因とは

「早慶」と括られる私大最難関に挑み、それぞれが手にした結果について単純に比較することは容易ではありませんが、教育アドバイザーの立場で感じた「学力とは別の要因」について解説したいと思います。
 

同偏差値帯の早慶でも、「受験方式」がちがう

大学受験には「指定校制度」という高校で一定以上の評定平均値をとった人だけが受けられる推薦型選抜と、評定平均値に関係なく学力試験の点数のみで合否が決まる「一般選抜」があります。このほかにも「系列校からの内部進学」という第3の受験方法もあります。
 
慶應義塾大学の系列校に通う芦田さんの場合は、「内部進学」で慶應義塾大学法学部に合格しました。多くの系列校では希望すれば事実上、無試験で系列大学へ進学することができます。しかし、大学には定員枠があるため、希望学部への進学は高校時の評定で決まります。法学部は医学部に次ぐ難関とされる人気学部であることからも、芦田さんの成績が優秀だったことがうかがい知れます。
 
無試験で大学に合格できるとはけしからん、という意見もあるかもしれませんが、そもそも中学受験や高校受験で合格しなければ、系列校の中・高等部に入ることはできないのですから、決して楽ではありません。
 
一方で、小倉さんは学力試験のみの「一般選抜」での挑戦でした。早稲田大学にも系列校は複数存在し、希望すればほぼ進学できます。一般選抜を経ず、こうした内部進学制度や推薦型選抜で早稲田大学へ進学する人は、実に定員の43.1%にものぼります(「2023年度用大学の真の実力情報公開BOOK」旺文社より)。つまり、残りの56.9%の定員枠を一発勝負の学力試験で競うというまさに「狭き門」となっているのです。
 

仕事・ワンオペ育児しながら受験勉強する是非

番組企画としてスタートした小倉さんの早稲田大学ヘの挑戦は、仕事とワンオペ育児を両立しながら、受験勉強をする姿勢に多くの声援が寄せられました。一方で、当初から早稲田大学受験を疑問視する声も少なくなかったようです。
 
というのも、早稲田大学といえば私立最難関の大学です。塾や予備校関係者によると、合格するためには最低でも3000時間以上の勉強時間が必要とされています。仕事や子育てをしながら、たった約1年間でこれだけの勉強時間を確保するのは、事実上不可能です。加えて小倉さんが中学校レベルの復習から着手するなど、大学受験のための基礎学力が十分とはいえない状態からのスタートだったともいえます。そもそもスケジュールに無理があったのです。
 
子育てをするなかで「若い頃にしっかり勉強してこなかった自分のふがいなさを克服したい」と思い立った大学受験だったようですが、番組の意向があったとしても、「早稲田大学を目指す」のひと言は蛇足だったとのではと筆者は思います。身もふたもないことを言うと、勉強不足を解消したいのであれば、何も早稲田大学にこだわる必要はありません。大学の公開講座を受講したり、放送大学で勉強したりするなど、学び方はいくらでもあるでしょう。
 
仕事や子育ての合間をぬって、無理してでも勉強に励むことが美徳かどうかは意見が分かれるところです。しかし、果敢にチャレンジすることと、無謀な挑戦をすることはちがうはずです。番組自体が途中で打ち切りとなったことを踏まえると、まさに“はしごを外された”のですから、小倉さんがあまりにも不憫でなりません。
 

受験生が陥りがちな「勉強法の“沼”」にはまった?

先述のバラエティー番組や小倉さんのYouTube動画を閲覧すると、非効率な勉強法の“沼”にはまってしまった感は否めません。小倉さんは、「おすすめ」と言われる問題集や参考書をあれもこれもと取り入れる方法を実践していたようですが、実はこれ、どれも中途半端に終わって結果的には身につかないという、世の中の受験生も陥りがちな非効率な勉強法なのです。
 
例えば、日本史は、マンガを取り入れながら勉強していたようですが、一問一答形式の問題集については3~4冊ほど使用していたようです。これは正直やりすぎです。さらに、年号を覚えたり単語カードに重要語句を書き込んだりしてくり返し復習していたようですが、そのような”断片的な知識だけを覚える”方法は、時が経つとほとんど忘れてしまいます。ある程度まで勉強を進めると、覚える量と忘れる量が均衡してしまい、それ以降は伸びなくなってしまうのです。同時に今の入試の出題傾向に対応できる勉強法でもないこともあり、行き詰まってしまうのです。
 
英語についてはどうでしょう。単語の勉強を最初に徹底したところまではよかったのですが、その後、文法と長文読解を並行して進めていたのが気になりました。長文読解に進む前に、まずは文法事項を固めておいて、それから英文解釈という構造分析や構文解釈をしながら読むことで読解力をつけていくのが王道です。
 
また、週に1回ほど来てくれるアドバイザーの先生に直接見せるために、英文のコピーを貼ったノートにわからない英文を書き写しておいて質問するという方法をとっていましたが、これも、勉強の効率を上げるのであれば、わざわざ書き写すのではなく、英文と和訳を照らし合わせながら数多くの英文を読む「多文多読」がより効果的です。
 
さらに、使用した参考書のなかには分量が多く、難易度が高いものが含まれており、明らかに学力レベルに合っていませんでした。漢字や英単語をノートに何回も書きまくるという方法も、非効率な勉強法の典型です。
 

高校生は勉強に専念できる恵まれた環境にある

女優業と学業を両立した芦田さんと、タレント業と子育て、学業の「三刀流」で受験に挑んだ小倉さん。両者が手にした結果から学びとれるものとは? それは、さまざまな受験方式の特徴をとらえて、効果的な受験対策を実践することが何よりも大切ということです。どんな受験方式であっても、それに見合った周到な準備と努力が必要です。
 
また当たり前の話ですが、多くの高校生は女優でもなければ、タレントでもありません。ましてや家事や子育てとも無縁です。家族の一員としてお手伝いをすることはあったとしても、食事の用意や掃除、洗濯などを親任せにして、勉強に専念できるのは高校生の間だけです。

芦田さんが女優業と学業を両立できたのも、本人の努力があったことはもちろんですが、身の回りのことは家族がやってくれたはず。高校生が志望校合格に向かって心おきなく勉強できるのも、家族の支えや協力があるからこそといえるでしょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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