父に遠慮して生きる母親の姿が辛かった、との声
「高校生くらいから、私はひとりで生きていこうと思っていました」そう言うのはサヤカさん(40歳)だ。客観的に見れば特に問題のある家庭に育ったわけではないが、「母を見ているのがつらかった」という。父親が暴力的なわけでも浮気者だったわけでもない。それでも、父に遠慮しながら生きているようにしか見えない母が、彼女の心を刺激した。
「うちはきょうだいが3人いて、私たちが小さいころは母がワンオペで子育てをしていたと聞いています。父もわりと子どもとは関わっていたけど、それは私たちが小学校に上がって以降の話。それより前は大変だったと思います。母は昔は『子育ては楽しかったわよ』と言っていたけど、私たちが成人してからは『子どもなんてひとりで大きくなったような顔をするんだから』と愚痴を言っていたのも聞いたことがある。自分が必死になってやってきたことは何だったのかと思ったのか、結婚して子どもをもつというのはそんなものなんだと諦めがついたのか、そのあたりはわかりません」
ただ、サヤカさんは愚痴を言う母を見ながら、「私はああいう生き方をしたくない」と感じていた。母を否定するつもりはないが、特に大恋愛というわけでもなく、「みんながするものだと思っていたから結婚した」という母には同意できなかったのだ。
「私は私で生きていく。高校時代になんとなくそう決めたんです。それからはほとんどぶれずにやってきましたね。恋愛はしてきたし、これからもしたいけど、家庭を持つことはイメージできないんです。仕事から帰ってきて、ひとりでおつまみを作ってビールを開けた瞬間、あー、ひとりでよかったと思ってしまう……。こういうタイプは結婚しないほうがいいんじゃないでしょうか(笑)」
気楽にひとりで生きていく。そう言うと「今はいいけど、年をとったらどうするの」と絡んでくる人が必ずいる。サヤカさんは、「年をとっても、極力、人には頼らず生きていくと言うしかありません」と毅然とした口調で言った。