財産を取られたくない
ウタコさん(45歳)の父は現在78歳。15年前、母に先立たれてからひとり暮らしをしていたが、突然、「結婚する」と宣言したのは2年前だった。「実家は、古いとはいえ都内の一軒家。土地だけだってけっこうな財産です。詳細はわからないけど、父はそれなりの貯蓄もあると思う。その年齢で結婚して父が先に逝ったら、私がろくに知らない女性に財産を半分持って行かれるわけですよね。それはないんじゃないの?というのが兄と私の本音でした」
ウタコさんの夫は、「お義父さん、やるじゃん。好きにさせてあげればいいのに。お義父さんの人生なんだから」と言ったが、兄と彼女は「そうはいかない」と作戦を練ることにしたという。
「でも、私たちに遺す財産を持っていかれたくないから結婚反対とは言えません。兄は興信所を使って相手の女性の素性を調べました。そうしたら父より30歳も年下で、どうやら母親の介護をしていたために結婚しなかったらしい。父と知り合ったのは、彼女が母親を見送ってからアルバイトを始めたスナックだった。怪しいですよね。事件になるほどのお金持ちではないけど、高齢者の財産を狙っているのは明らかではないか。そんな気がしました」
兄は「ウタコが実家に引っ越せ」と言い出した。兄自身は転勤で家族とともに遠方に住んでおり、目が行き届かないからだ。
「父の結婚を阻止するにはそれしかない。私もそう思ったんです。でも夫も、10代半ばの子どもたちも引っ越したくないという。私だけ越すわけにもいきません」
そこで父に本音を打ち明けるしかないということになった。
>「本当のこと」を打ち明けると、父は……