嫌いになったわけではない離婚?
「愛情がなくなったら離れたほうがいい。そう思わない?」姉は真剣な表情でそう言った。夫が恋をした。その人と結婚したいと思っている。だったら、それでいいじゃない?と。
「その恋人もすでに紹介してもらっている。娘は私と住むけれど、父親ともいつでも会える距離にいること、新たな恋人は私たちの娘の世話をする必要はないけど、仲良くしてくれたらうれしい。そういう話もしているの」
姉は淡々とそう言ったそうだ。
「大人すぎますよね。夫婦関係は解消するけど、娘に対しては親でいようと話し合いができているなんて。あとから姉にこっそり、夫をとられて悔しくないのと聞いたら、『人の気持ちは、誰にもどうにもできないよ』って。悔しいと思うのは、自分のものだと思い込んでいるからでしょって。確かにそうだけど、姉がそこまで大人だったことにちょっと驚きました」
姉夫婦はその後、離婚。姉と娘は今まで通りの家に住み、元夫は新しい恋人と近所のマンションで同棲を始めた。婚姻届を出すつもりは、まだないらしい。
「娘の小学校の入学式には、姉と義兄が揃って参加したそうです。義兄はもちろん時間が許す限り学校の行事にも来る。離婚していることは学校にも報告済みだそうですが、緊急連絡先には姉と義兄、両方の電話番号が記されているんですって」
義兄が同棲している女性には、ミチエさんも会ったことがあるという。ミチエさんと同い年で、離婚経験者だが子どもはいない。
「素敵な女性ですよ。結婚という形にはこだわっていないから、ずっと同棲でもいいと言っていました。さっぱりしていて、姉に性格が似ている。姉も仲良くしているみたい。お互いに嫉妬なんてまったくなくて、義兄も姉と今の恋人と3人でいてもリラックスしてる。そこに娘がいることもありますが、娘は義兄の恋人をおねえちゃんと呼んでいます」
もちろん、義兄は父親として養育費は出している。今後、もし仕事の関係などで遠方に行くことがあったとしても、「パパはずっときみを愛してるから」と義兄は娘にいつも語りかけているという。
「進歩的な夫婦にありそうな状況ですけど、まさかうちの姉がそんなふうにさばけた人生を歩むとは……。姉には今は恋人がいないそうですが、『私だってまだまだこれからよ。再婚はするかどうかわからないけど、恋人くらいいてもいいしね』って」
姉の娘は、両親がケンカしているところを見たことがないはずだと姉は言っているそうだ。夫婦ゲンカがないまま、話し合って離婚し、その後も仲良く協力しあっている元夫婦。めったにないケースではあるが、娘のことを考えれば、一番いい選択をしたのかもしれないと、ミチエさんは姉に敬意を抱いていると言う。