実際にイタズラ対策をしている回転寿司店もある
ちなみに、実際にレーンにイタズラができないように対策を取っている回転寿司店もある。 「流れ鮨」というシステムをとっている店では、厨房で作られた商品が透明なトンネル状の筒の中を通って客席まで運ばれる。その間、商品は完全に外部から遮断されており、誰も触ることができない。 アメリカ・カリフォルニア州など食品衛生管理が厳しい地域では、トンネルの中にレーンがあり、寿司が空気に触れないようになっている。また、今回スシローがレーンと客席の間にアクリル板を設置したのと同様に、オーダー専用レーンを通過中の商品が触られないように客席とレーンの間に隙間なく仕切りを設けている店もある。注文した商品は自動に開閉する扉から提供されるので、万が一にもイタズラされる心配はない。
このように、一部の回転寿司店ではシステムによって迷惑行為が発生しない環境がすでにでき上がってはいるのだが、もちろんこれらを導入するには莫大な費用がかかってしまう。特に大手回転寿司チェーン店は全国に500、600店舗もあるため、すぐに全店導入というわけにはいかないところが、各社頭が痛いところだろう。
ただでさえ、業界全体が値上げや不祥事の影響が後を引き、客数減に苦しんでいる状況にある中、さらなる値上げで費用を捻出するといったことだけは選べない。
飲食業界では「食の安心・安全」を第一義に掲げる企業が多いが、それを守るための努力も企業の評価につながる。回転寿司のように薄利多売の業態においては、設備投資のしわ寄せがダイレクトに客に来ることは多い。つまり、被害は我々一般客にまで及ぶことになるだろう。
かっぱ寿司では従業員の巡回強化や迷惑行為に対する注意喚起、防犯カメラの活用、寿司カバーの導入などを検討しているという(※2・3)が、全企業がどういった対策をいつ実施するのか、その取り組みいかんで業界の勢力図がガラリと変わってしまうかもしれない。そこにどれだけのコストをかけ、どれだけの時間と労力を割くのか。ここなら安心して回転寿司を楽しめると、消費者に一番浸透した企業が一年後に業界トップに君臨している可能性は高いと思っている。
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