ネットとリアルの差が激しい
マッチングアプリで知り合ったものの、なかなか会うタイミングが合わず、やっと会えたのは3カ月後だったという経験をもつショウコさん(35歳)。「その間はメッセージのやりとりが主でした。彼も私も仕事が忙しかったので、顔を見ながら話す時間が合わなくて。メッセージでは、彼は思いやりのある人だなと思っていた。ところが会ったら、ちょいちょい言葉の端々に『?』がわくようなタイプだったんです」
文字を書くなら何度も推敲できるし、考えながら言葉を選ぶこともできる。だが実際に会ってしゃべるときは、いちいち言葉を熟考できない。つい普段使いの言葉が出てきてしまう。
「たとえば仕事が忙しいという話になったとき、メッセージだと『大変だね、ショウコさんは頑張っちゃうタイプなんだろうけど、体に気をつけてね』という優しい言い方だったんです。実際に会うと、『でもさぁ、そもそもどうしてそんなに忙しいの?』と、あたかも私の仕事が遅いとか要領が悪いんじゃないかと言いたげな様子。ちょうど産休、育休に入った人が同じ部署でふたりいて、さらにひとりが辞めたんだよねと言ったら、『タイミングを考えずに妊娠する女性っているよね』という暴言。いや、それは個人の生き方の問題だから、妊娠した人が問題なのではなく、補充しない組織の問題。『そんなときに限って辞める人は何を考えているんだろう』と言うけど、辞めたのはその人の親が亡くなったから。実家に帰って家業を継ぐことになったのよと説明しました。事情を知らずに決めつけたような言い方をするのがどうも癪に障って」
つい、「職場にはいろいろな人がいていろいろな事情があるからね」とまとめるように言うと、「だけど組織があって人がいるわけだから」と意外な返事。
「そうなの? 私は人がいて組織があるんだと思うし、人がいて国があるんだと思う。考え方が真逆だねと言ってみました。すると彼は『オレら、どうせ社畜じゃん?』って。まあ、あなたがそう思うのは勝手だけど、私はそうは思ってないからと席を立ってしまいました。これは一例ですけど、会ってみないとわからないことが多すぎて。今までメッセージのやりとりをしていた時間が無駄だと思いました」
友人にそう嘆くと、いいなと思ったらなるべく早めに会って見極めたほうがいいと言われたという。
「マッチングアプリ、私は向いてないのかな。でもそうしていると、いつまでたっても出会えないんですよね、このご時世。友人たちのアドバイスを聞きながら、もうちょっと頑張ってみようと思います」
ショウコさんは苦笑しながらそう言った。