そんなふうに考える間もなく、人生を変えざるを得ない人もいる。
バツイチ独身だった私が……
「50代にして、いきなり子育てをするはめになりました。人生、わからないものですね」しみじみとそう言うのは、チヒロさん(52歳)だ。2年間から、突然、甥と姪の「母代わり」となった。
「私は20代後半で結婚したんですが、義母と馬が合わなかった。夫に『お義母さんをとるか私をとるか』と迫ったら、『妻の代わりはいるけど、母親の代わりはいない』と言われて、それもそうだねと離婚しました。子どももいなかったし、フルタイムで仕事をしていたから、その後はずっとひとり暮らしをしていたんです」
30代で父親が亡くなり、母はひとり暮らしとなったが同居するつもりはなかった。ひとり暮らしが気ままでいい。週末は自分のために時間を使い、ときには母と食事をしたりもした。突然、週末に1泊で旅に出ても、誰にも何も言われない。縛られない生活こそが自分に合っていると思っていた。
ところが今から2年前、妹が離婚。13歳の女の子と11歳の男の子を連れて実家に戻ってきた。そして戻ってくるやいなや、妹は体調不良を訴えて入院した。
「検査をするとすでに末期の膵臓がんだった。余命3カ月だというんです。妹自身が本当のことを知りたいというので伝えました。それからの妹はすごかった。子どもたちに伝えたいことをノートに綴り、離婚でもらった慰謝料を子どもたちの教育資金にすることなど、身の回りの整理をして……。子どもたちにはしっかり生きていくよう、きちんと言い聞かせていました。なるべく子どもたちとの時間を過ごしてもらうため、私はお見舞いも控えめにしていました」
>妹は余命宣告をはねのけて生きたけれど……