前日にふたりで楽しむことに
「上司と関係をもって初めてのクリスマスです。彼はもともと土日は私とは会ってくれないし、私もそれは承知しています。それでも『イブはダメなんだ、ごめん。前の日、あいてる?』と言われたのが先月。彼は23日に素敵なレストランに連れて行ってくれるそうです」ニコニコしながらそういうのは、マナミさん(33歳)だ。初めての不倫で、この9ヶ月、楽しいことも寂しいこともあった。それでも彼が好きでたまらないという。彼には10歳と7歳の子がいて、家ではいい「パパ」なのだという。それを聞かされても、彼への愛は止まらない。むしろ家庭のことを話してくれるのは、自分に心を許しているからだと思うと彼女は言った。
「私はひとり暮らしだから、イブ当日は友人と食事に行きます。ひとりで家にこもるようなことはしません。彼と付き合ってみてわかったんです。他にたくさんガス抜きできる場所を作っておかないと、自分の恋愛感情によって自分が追いつめられていくと」
親友と呼べる友人にだけ、こっそり不倫を打ち明けた。彼女は「マナミがそれでいいと思うなら、私は反対はしない。でも思いつめないでね」と言ってくれた。他の友人には伝えていない。だからイブは女友だち6人と過ごすのだという。
「クリスマスが過ぎると、今度は年末年始がやってくるんですよね。こっちのほうがハードルが高いかもしれません。今年は実家に帰る予定もないので、やはりひとり暮らしの友人と会うか、たまには家で読書三昧、映画三昧というのもいいかなと思っています。会えない彼を思いながら年末年始を過ごして、自分の気持ちがどうなるのかを確かめてみたいとも思っています」
自身を客観視できる冷静なマナミさんのこと、年末年始は葛藤を抱えつつも乗り越えてしまいそうだ。
イブに出かけるのは「許さない」
今月初め、夫がカレンダーを見ながら「クリスマスイブ、仕事かもしれない」と言い出した。「さて、どうやって白状させるか、と思いましたね」
そう言うのはルミさん(39歳)だ。同い年の夫には、以前も「浮気疑惑」がある。確証が得られなかったので、疑わしきは罰せずで放免したが、冒頭の一言には、「怪しい」とルミさんの脳内で赤信号が点滅した。
「8歳と4歳の子どもたちが、パパと一緒に過ごすイブをどんなに楽しみにしてるか知ってるよねと言うと、『だってさあ、仕事だもん』と。どういう仕事か聞くと、土日しか動けない顧客が会社にやってくるのだという。他の土曜日にしてもらえばいいんじゃないのと言ったら、そこしかあいてない、と。ふうん、じゃあ、会社の人に聞いてみようかと夫の同僚の名前を出すと、『これはマル秘の仕事だから、ヤツは知らない』って。こういえばああ言う夫なんですよねえ」
やりたくはなかったが、こっそり夫の携帯をチェックするしかないと思い始めた。そんなとき、脱衣所に置いてある夫の携帯のチャイムが鳴った。そのときたまたま脱衣所近くにいたのが8歳の長女。夫の携帯を手に取ってしまったのだ。
「ママーと長女が携帯を持ってきたんです。そこにはLINEのメッセージがちらりと見えた。娘と長男の誕生日の日付をパスワードにしているのはわかっていたので、思わず解除したら『イブが楽しみ』とハートマークがありました。ちょうど夫がお風呂から出たんですが、娘が私から携帯をひったくって、『パパ、なにこれ』と(笑)。よくできた娘です」
夫はあたふたするばかり。子どもたちが寝たあと、クリスマスはキャバクラに行く予定だったこと、入れ込んでいる女性がいることを白状させた。正直に言わないと、子どもたちを連れて実家に帰る、正月も一緒に過ごさないと脅したのだ。
「夫にはその場で女性に、クリスマスイブは子どもたちと過ごすとLINEさせました。彼女からは『オッケー、わかったー』と軽いノリの返事が来ました。もっと残念がってくれるのではないかと思っていた夫は、がっくりしてましたね。だから言ったんですよ。かわいい子どもたちがパパと過ごしたいと言ってくれているんだよ、あと何年かしたらそんなことは言わなくなるの。この貴重な時間を子どもと過ごさないでどうするのって。夫もしみじみして、『そうだよな……』と。もともと惚れっぽくて飽きやすい人だから、怪しくても放っておくけど、今回はクリスマスだったから見過ごせなかった。夫も少しは身に染みて考えたんじゃないかなと思います」
間に合ってよかった、自分が正面切って言うと夫も意地になるかもしれないが、娘が携帯をうまく使ってくれたと、ルミさんは明るく笑った。