タワマン人気は不動の地位
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しかも、2022年以降、307棟、戸数にすると11万2142戸の超高層マンションが完成を予定しています。もはや、その人気は不動の地位を築いたも同然といえるでしょう。
ただ、不安材料がないわけではありません。良否の「否」の側面としては、所得格差を起因とする居住者間の不和の顕在や、停電によってエレベーターが不通となり、タワーマンション難民となる懸念が指摘されています。
2019年10月、武蔵小杉(川崎市中原区)のタワーマンション2棟が台風19号によって停電・断水被害に見舞われたニュースは衝撃的でした。さらに、今日では大規模修繕工事の資金ショート(積立金不足)を不安視する声も耳にするようになりました。タワーマンションの評価が大きく二分しています。
となると気になるのが、今後、マイホーム購入検討者はタワーマンションを買ってもいいのか?ということ ―― これだけ賛否が交錯するなか、そのファイナルアンサーを求めている人は少なくありません。そこで、事情に詳しい専門家に話を聞きました。
今回、取材に際して特に印象に残ったのが「希望条件を満たした物件が、たまたまタワーマンションだった」という発言です。
マイホームを買うことは、その「生活圏」を買うこと
「タワーマンションの最大の魅力は街のアメニティーの充実」―― こう答えるのはリクルート「SUUMO新築マンション」の柿崎隆編集長です。ここでいうアメニティーとは、日常生活に不可欠な施設やサービスの充足に伴う居住環境の快適性(住みやすさ)を指します。駅に近いという交通利便性、大規模再開発で整備されたスーパーや幼稚園・小学校、また、医療機関や娯楽施設などもそろった生活利便性は魅力的です。さらに、「ワークスペースやキッズルームなど、共用施設の充実も人気の理由のひとつ」と柿崎氏は付言します。
このように日常生活の基盤が整備された居住環境の快適性がタワーマンション人気の真因との分析です。生活機能が集積した環境そのものに魅力があるわけです。立地こそがタワーマンションのアメニティーを構成する源泉というロジックです。マイホームを買うことは、同時にその地域の生活圏を買うことに等しいのです。
新たな都心タワマンの購買層「スーパーパワーカップル」
とはいえ、首都圏の新築マンション価格はバブル期のそれを超えました。高価格帯が続く中で、誰もが都心のタワーマンションを買えるわけではありません。一体、誰が購入しているのでしょうか?この疑問に対し、柿崎氏からは経営者や医師などに加え、「スーパーパワーカップル」という言葉が出てきました。ニッセイ基礎研究所では夫婦ともに年収700万円以上(世帯年収1400万円以上)の共働き世帯をパワーカップルと定義していますが、「世帯年収1400万円以上」の「その上」をいくのが同氏の言うスーパーパワーカップルです。世帯年収1800万円を超えるような“超”高所得の共働きカップルが都心タワーマンションの新たな購買層だというのです。
ニッセイ基礎研究所の分析では、パワーカップルの7割強が持ち家(約6割が一戸建て、約4割がマンション)に住んでおり、不動産市場では都市部のタワーマンション市場の牽引役として注目されています。また、世帯金融資産は「1000万円以上」が7割弱を占め、そのうちの約半数(全体では約3割)が「5000万円以上」の世帯金融資産を保有しているそうです。
同研究所の久我尚子氏は、日本FP協会の会員向けサイトに掲載された限定コラム「ライフスタイルの特徴は? 増えるパワーカップルの最新事情」の中で「ひと昔前の女性は出産や育児期に退職し、子育てが落ち着いたらパートなどで再就職するというライフコースが一般的でしたが、育児休業や短時間勤務制度といった仕事と家庭の両立支援環境の整備が進んだことで、出産後も正社員の仕事を辞めずに復帰する女性が増えました」とパワーカップルが増えている現状を説明します。
にもかかわらず、世帯年収1400万円超のパワーカップルでさえ東京都心のタワーマンションは手が届きにくくなっているわけです。今日のマンション価格の高止まりを受け、分譲価格の上振れに呼応する形で、購買層の所得レベルも「さらなる底上げ」を余儀なくされている格好です。
取引の需給バランスは明らかに「売り手市場」に傾倒しており、購入環境は「買い手」にネガティブ(不利)に作用しています。加えて、足もとでは固定金利を筆頭に住宅ローン金利にも上昇圧力が台頭しており、東京都心のタワーマンションはますます「高嶺の花」となっています。
>この先タワマンの分譲価格は安くなる?