「親から小言を言われるのがイヤ」「親族との会話が子育てのプレッシャーになる」と、いつも以上に身内とのモヤモヤにさらされるため憂鬱な人も……。そこで今回は、両親や義両親をはじめ、親族とのお付き合いのお悩み事例を2つ挙げ、対応を考えていきたいと思います。
事例1:厳格な両親の「孫育て」、“高学歴”な親族付き合いがストレス
■相談者プロフィール・相談者:女性・東京都・共働き
・家族構成:夫(51)、本人(29)、長女(3)、長男(1)
■相談内容:
私の両親はもともと周りから見ても、厳格で几帳面。よくいえばしっかりしているのですが、娘の私からいわせれば、頑固で融通が利かないタイプです。
孫である娘が生まれてからは、祝い事の準備や手配は全てやってくれ、分単位で緻密なスケジュールをつくってくるのです。例えば、お食い初めはきっちり100日目にやるべきものと、こちらの都合お構いなしに計画を立ててきます。しかも、誕生日はやれ知育だの英会話などに関連付けたものを購入し、無理やり遊ばせようとするんですよね。口を出すだけではなく、実際に手伝ってくれたりお金も出してくるので、なおさら厄介なのです。長男が生まれると、今度はあちこちの習い事を調べてきて、「男の子はこうあるべき」と剣道や柔道などをすすめてきます。
私たち夫婦は、無理のない程度にお祝い事をしたり、子どもたちには好きなことをやって、伸び伸びと成長してほしいと思っているため、両親との子育ての考え方の違いに悩んでいます。
両親の兄弟や親戚はみな高学歴で、現役で研究員や教員などをされている方ばかり。親戚一同集まると、「娘ちゃんは将来、どんな仕事につくと幸せか」「息子くんは男の子だから、将来稼げるようにならないとね」などと勝手に盛り上がるため、非常に居づらいのです。
共働きで核家族という生活は大変ですが、こんな厄介な両親、義両親、親戚などに振り回されるよりは全然いいと思っています。いざとなれば市で派遣してくれるサービスや、お金を払って家事なども外注もできるため、考え方が合わない親戚と無理して関わることはなくて済みますから。
子どもにとっても大人の“共通する”見解が大切
ご両親が「ああしなさい」「こうしなさい」と子育てに細かく口を出すだけでなく、行事の準備や手配、さらには教育にはお金も投じ入り込んでくるため、その関与が煩わしいと感じている事例です。両親世代はすでに自身の子育てを終え、興味は「孫育て」になっていることは多いものですが、ここまで主導されてしまうと、まいってしまうお気持ちはわかります。おじいちゃん・おばあちゃんの孫自慢はよくあることですが、親族全体が高学歴で一目置かれるお仕事をされているとあって、ご両親もつい我が孫に力が入ってしまうのかもしれません。とくに今は昔と違い、情報も簡単に手に入るし、幼少教育もずっと盛んです。当時できなかった力の注ぎ方を今実現しようとしているとも取れます。
核家族化が進んでいるこの時代に、両親が関わろうとしてくれていることはありがたいですが、あくまで育てるのはパパ・ママなのですから、ご夫婦の考えをもう少ししっかり伝えていってもいいと思われます。
子育てにおいてとても大事なことは、接する側の“一貫性”です。今は3歳と1歳ということですが、あと数年経って、もしパパ・ママの方向性とおじいちゃん・おばあちゃんの方向性がバラバラだと、受け手である子どもたちが振り回されてしまうことにもなりかねません。
「ママはダメと言ったのに、おじいちゃんはいいと言った」このような矛盾は、子どもが上手く学べない理由の1つながら、意外とおろそかにされているのが現状です。近くに住んでいて頻繁に会う距離であればなおさら、接する大人の共通した見解は大事ですので、お子さんのためにも一度話し合ってみるのが望ましいといえます。
事例2:共働きなのに「手作りこそ親の愛情」を押しつけられて困る
■相談者プロフィール・相談者:女性・埼玉県・共働き
・家族構成:夫(40)、本人(37)、長女(7)
■相談内容:
私は、共働きで仕事をしながら、育児や夫の世話、家事、自治会や役員など様々な業務をこなしています。とてもじゃないけど、子どもに手作りの料理や学校の用具などを作ってあげる暇なんてありません。そのため例えば、宅配弁当や家事代行サービスなど、外注できるものは何でも利用しています。
しかし祖父母は、そんな私の姿を見て「なんで一つのテーブルを囲んで家族で食事もできないんだ」「私のときは、毎日欠かさず手料理のご飯を食べさせていたもんだ」「手作りだからこそ、子どもに愛情が伝わるものだ」などと、自分たちの時代の子育てと比較して親としての私を責めてくるのです。
いくら昔と今の時代は変わったと伝えても、分かってもらえず衝突してばかり。お正月など親戚同士の集まりは年に数回しかありませんが、集まったときにそれぞれの家族の価値観や子育てが表になるため、この時期になると不安になります。
ひと昔前までは「二世帯住宅」などで家族の役割も分担されているため、1人にかかる負担も少なかったでしょう。今は、核家族でメリットもありますが、夫婦2人の役割があまりにも多すぎで毎日が疲労困憊です。毎日の生活を乗り越えるだけで精一杯なのに、古い時代の人からダメ出しを受けるのはとてもストレスです。
無理をしてストレスをためれば、“総合的な子育ての質”は下がる
1つめの事例とはまた違った形ではありますが、こちらもご両親との関わりで悩んでいます。昔の子育てをよしとして押しつけられて困るというお悩みは、筆者の育児相談室でも多くなっています。昭和から、平成、令和へと時代も変わりましたが、その間に私たちの生活スタイルも大きく変わり、なにより夫婦共働きが主流になったことは非常に大きな変化です。それに伴い、若い世代は今の時代に則した子育てをしているのですが、親世代はそうではありません。今は令和なのだから令和の子育てに考えをシフトできるかといえば、それはなかなか難しいでしょう。人の考え方や社会の風潮というのは、そう簡単には変わらないからです。時代は変化しましたが、一般の考え方として浸透するには、まだまだ時間がかかるものです、
時代は変わったのに昔の考え方が根強く残っているということが、今の時代の子育てを難しくさせていて、夫婦共働きにもかかわらず、夫はまだ家事育児に受け身だったり、両親、義両親と子育ての考え方でぶつかる、というのはよく聞く話です。
共働きをしながら、料理は完全手作り、そしてストレスもなし! これが実現できればいいかもしれませんが、1日24時間という限られた時間の中で納めるには非常に困難で、どこかで折り合いをつけなくてはいけないものです。ストレスをためてでも家事を頑張るのと、家事を軽減しストレスをためないのでは、どちらがいいのか。
――子どもへの影響を考えれば、親のストレスは軽減するに限ります。親の心の状態は子どもに伝わるからです。
手料理にこだわるあまり、そこに時間を取られてイライラしたり、子どもとの時間が減ってしまっては、“総合的な子育ての質”は下がってしまいます。それならテイクアウトしてきて時間を稼ぎ、落ち着いて食卓に向かう方が愛情は伝わると私は考えています。
「外食は味付けが濃いしカロリーも高い、おまけに費用もかかる」と頑張っているご家庭もたくさんありますが、親として“〇〇するべき”と思うことが縛りになって、自分を許せなくなってしまっている人も。「核家族でメリットもあるけれど、デメリットとして夫婦2人の役割があまりにも多すぎる」とおっしゃっているように、いくら効率化を図っても、作れないものは作れないという限界はあるはずです。これからの長い子育て人生を考えると、できるベストを尽くすと“割り切る”ことも大事だと思います。
“一貫した”子育ての方針をもつことが大切
年末年始は両親や親戚と会う機会も増えるシーズン。本来なら楽しみとなり得るはずが、考え方の違いが浮き彫りになるとあって憂鬱になってしまう人も多いでしょう。でも基本的には親族とのイベントは1年で数日のことで、大半はご夫婦で子育てしていることが多いはず。ご両親や親族の言葉でモヤモヤすることもあるかもしれませんが、大事なのは残りの360日です。
その子の子育てに実際の責任をもつ大人が“一貫した”方針をもつことがとても大切なため、それを改めて意識して言うべき自己主張は伝えていく方が望ましいでしょう。