Apple Watchで計測できる主なヘルスケア関連の指標
iOS標準の「ヘルスケア」アプリで記録できる健康関連の指標や項目は膨大です。ここでは、そのうち、Apple Watchを装着することで測定が可能になったり、測定精度が高くなったりするものをピックアップして紹介します。具体的には、以下のような項目があるので、順に概要を確認していきましょう。
(1)心拍数
Apple Watchのケース裏面(肌に触れる側)には、光学式の心拍センサーが搭載されています。そのため、デバイスを手首に正しく装着することで、心拍数を計測できます。センサーの基本的な仕組みとしては、血中のヘモグロビンが吸収しやすい青~緑の光を照射することで、反射する光の変化から、血液量と拍動を計算できるというものです。 搭載されるLEDの数や、モーションセンサーなどから取得した運動状況などによる補正の有無・程度によって、メーカーごとに精度の差はありますが、その原理自体に大きな差はありません。 Apple Watchの場合、「心拍数」アプリを起動することで、リアルタイムに心拍数を確認できます。安静時や運動時などにも、基本的にはバックグラウンドで心拍数を計測してくれます。なお、安静時に指定の心拍数を超えたり、下回ったりした場合に、通知される機能も搭載。これによって心拍数の異常を察知できます。なお、この時の閾値(=通知のトリガーとなる心拍数)は、「設定」アプリで「心臓」を選択し、「高心拍数の通知」や「低心拍数の通知」でカスタマイズ可能です。
(2)心電図
2018年に発売された「Apple Watch Series 4」以降の対応端末では、「心電図」アプリを使って心電図(ECG)をとることもできます(一部非対応モデルもあります)。これにより、心房細動(心房が十分な収縮をせず痙攣するように細かく震える状態)などの不規則な心拍の有無について、調べることが可能です。 具体的には、ウォッチを装着している腕を、机の上などに置いてリラックスした状態にし、心電図アプリを起動します。ウォッチを装着していない方の手の指をDigital Crownに(押さずに)乗せ、動かさずに30秒ほどキープしましょう。Apple Watchの心電図アプリで生成される心電図は、「単極誘導心電図(第一誘導心電図)」と似たものであると説明されています。これは、医療機関で採用されている「十二誘導心電図」とは異なるため、万能ではありません。
例えば、心臓発作や一部の不整脈は検知できないことは理解しておきましょう。Apple公式のヘルプページでは――“心電図 App では心臓発作は検知できません。胸に痛みや圧迫感がある場合、胸をしめつけられるような苦しさを感じる場合、心臓発作の症状ではないかと思われる場合は、すぐに緊急通報サービスに連絡してください”――などの注意書きが記載されています(2022年11月中旬時点)
(3)活動量など(アクティビティ)
多くのユーザーにとって、日常的に確認する頻度が高くなるのが、「アクティビティ」アプリの記録です。アクティビティアプリでは、値が増えるとともに伸びていく3つのリングを閉じることを目標に、毎日の健康的な運動習慣を促してくれる仕組みが整っています。赤いリングは「ムーブ」、緑のリングは「エクササイズ」、青のリングは「スタンド」を表しています。 ムーブは、運動に伴うカロリー消費の値のこと。ダイエットや体型維持目的などで消費カロリーを判断する際の目安になります。
エクササイズは、早歩きなど一定強度以上のワークアウトを行った時間のこと。デフォルトでは1日30分が目標です。健康を維持するための運動習慣づくりに役立つ指標です。
スタンドは、その時刻に「立ち上がって1分以上体を動かした」場合に+1される数値です。この数値は時刻ごとに+1しか増えないので、例えば13~14時の間に5回立ち上がっても、+5にはなりません。座り続ける・寝続けることを予防し、定期的に立って運動することを促してくれます。
なお、ムーブ、エクササイズ、スタンドの目標値は、それぞれユーザー自身が設定できます。
(4)血中酸素ウェルネス
Apple Watch Series 6以降の対応端末では、「血中酸素ウェルネス」アプリによって、血中に取り込まれた酸素の飽和度をチェックすることができます。この値は一般に「SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)」と呼ばれるものですが、医療機器としては使えない扱いなので、血中酸素ウェルネスという呼び方が使われています。仕組みを理解する上では、血中酸素ウェルネス≒SpO2と捉えてもほぼ支障ありません。このSpO2(血中酸素ウェルネスの測定値)は、血中のヘモグロビンが酸素と結合している割合のことを表す数値で「%」で表されます。健常者では95~100%であることが多く、SpO2の値が低くなっている場合、何らかの原因によって低酸素状態になっていることが示唆されます。 Series 6以降の対応モデルでは、ケース裏面の光学式心拍センサーが再設計され、緑色のLEDと赤外線のLEDが手首を照射し、その反射光で血液の「色」を読み取ります。酸素飽和度の高い血液は赤く、低い血液は暗くなるため、それによってSpO2を算出できるという理屈です。
Apple Watchでは「血中酸素ウェルネス」アプリを使うことで、こうした数値を測ることができます。測定時には文字盤を上に向け、手首を平らにして腕を動かさずに、15秒キープしましょう。
(5)睡眠
iOSのヘルスケアアプリでは、「睡眠」の目標時間や就寝時刻、起床時刻などを設定できます。さらに、Apple Watchを装着した状態で就寝(毎晩4時間以上)すると、Apple Watchで取得した睡眠記録も連携されます。「(浅い←)覚醒/レム睡眠/コア睡眠/深い睡眠(→深い)」の4段階で表される睡眠の「ステージ」なども確認できます。iOSの「ヘルスケア」アプリで「睡眠」の項目を表示した画面。「週」のデータを表示している状態(画面左)では、Apple Watchを装着していた夜のみ、測定値が青と紫とオレンジのストライプ状になっているのがわかる。「さらに睡眠データを表示」をタップし、「日」表示に切り替えると、その夜の睡眠の状態についてグラフなどを確認できる(画面右)
(6)周期記録
2022年秋に発売された「Apple Watch Series 8」および「Apple Watch Ultra」では、皮膚温の測定が行えるようになりました。いわゆる“体温”には、複数の種類がありますが、この「皮膚温(ひふおん)」は皮膚表面で測定されるため、口や耳、脇の下など深部体温に近い箇所で測定する指標と比べて、環境変化などの影響を大きく受けやすいという特徴があります。例えば、腕が布団の中にあるのか、外にあるのかでも皮膚温は変化してしまいます。そのため、基本的には健康関連の指標として扱うのが難しい値なのです。
しかし、Apple Watchではディスプレイ側に搭載された2つ目の温度センサーで環境温も測って、この変動を補正することで、皮膚温の基準値を割り出し、その周期的な変動を判断します。これによって女性の周期的な体調変化を判断するのに役立てられるという仕組みです。 iOSの「ヘルスケア」アプリでは、「周期記録」をつける機能が備わっています。これにApple Watchの皮膚温測定による記録を合わせることで、月経予測の精度を高め、さらに過去の推定排卵日も確認できるようになるとされています。
なお、同機能を利用するには、皮膚温測定に対応したApple Watchを装着した上で、さらに以下の3つの準備・条件が必要であるとApple公式のヘルプページに記載されています。
Apple Watchに限ったことではありませんが、長期的に身につけておくことで、ヘルスケア関連の指標を自動的に記録し、変化を知る手掛かりになるのは、スマートウォッチの大きな魅力のひとつです。特にApple Watchでは、活動量や、睡眠パターン、血中酸素ウェルネス、心拍、女性の周期的な体調変化などについて幅広くデータを取得できるのが長所といえるでしょう。・「周期記録」で妊娠可能期間の予測を有効にし、進行中の周期要因の記録がない状態にしておく
・「睡眠」を設定し、「Apple Watchで睡眠時間を記録」と「睡眠」の集中モードを有効にしておく
・手首皮膚温のデータを正確に取得するため、5日間、毎晩4時間以上は「睡眠」の集中モードを有効にしておく
※本稿で紹介した機能は、2022年11月時点におけるwatchOS 9.1のものです。使用するOSバージョンによっては、画面表示が機能が異なることがありますので、ご了承ください。また、ペアリングするiPhoneの世代やOSバージョンが古い場合には、一部機能が利用できないこともあります。
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