レスの定義は人それぞれ。でも「したいのにできない」状態なら……
夫婦にとって「レス」より深刻なこととは?
なお「司法統計19 婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別」(全家庭裁判所/平成29年) によると、離婚事由の10位以内に「レス」は出てきません。しかしながら「性格が合わない」「異性関係」「生活不調和」など最終的に離婚へと達した直接要因の背景やきっかけにレスもあったであろうことは、想像に難くありません。
夫婦間における性交のもたらす意味は、多岐にわたります。「生殖(子作り)」目的はほんの一部、むしろ日常的には「性欲解消」「癒し」といった役割へと変わり、恋人時代のように「愛情を確かめ合う」意味は薄くなります。
夫婦の場合、レスだけで「離婚する」となるのは早計だと考える人がほとんどでしょう。それは夜の営みだけが結婚の目的ではなく、それ以外にも夫婦のつながり(愛情)を感じられる場面がたくさんあるからです。
それでも夫婦間に行為そのものがなくなれば、「したい」側は不満が生じたり不安になったりします。そのくらい、大人の男女にとっては必要な行為のひとつでもあります。だから倫理に反した相手との、いわゆる「不貞行為」が離婚の一因となるのです。
日本性科学会によると「病気など特別な事情がないのに、1カ月以上性交渉がないカップル」をセックスレスと定義しています。世間一般的には「カップルの一方が行為を望んでいるにもかかわらず、長期間できていない」状態を総じてレスと呼ぶようです。
恋人同士ならともかく、大半の夫婦は「1カ月くらいではレスとはいえない」と解釈するでしょう。筆者がこれまで受けた相談でも、夫婦間のレスは「年単位」レベルが多く見受けられました。つまり、数年レス状態でも(悩んでいても)離婚しない夫婦が一定数いるということ。
だからといって、長期に様子見するだけでは何の解決にもなりません。双方が納得して「しない」関係で夫婦を続けているケースを除き、「したいのにできない」レス状態については、できるだけ早めに対策を考えるのが得策です。なぜなら「したくない」側には、必ず「解決したほうがいい」原因があるからです。
むしろ深刻なのは「スキンシップレス」
先に述べたように、夫婦には営み以外にも愛情を感じられる場面がたくさんあります。「一緒に入浴」「毎日『いってらっしゃい』『ただいま』のキスをする」「同じベッドで抱き合って眠る」「何度もハグをする」といったスキンシップを欠かさない夫婦は、行為そのものの回数は減っても、愛情そのものに不安を抱くことは少ないでしょう。上に挙げたようなスキンシップすらも皆無になると、事態は深刻です。「触れたい」と思うのは、愛情の一端。それは夫婦に限らず、親子でも同様です。性欲ではなく愛情の部分で相手を求める行為すら成立しない(避けられる)とすれば、結婚生活を続けていく上では危険なサインといえます。
スキンシップレスにまで陥っている場合は、勇気を出して話し合いの機会を作りましょう。あなた自身が「触れられたくない」のであれば、その原因を内観する、あるいは専門家のカウンセリングを受けてみたほうがいいでしょう。
なお、妊娠中あるいは出産後、一時的に夫との営みを嫌悪してしまう妻は少なくありません。しかしそれはホルモンバランスの変化が要因なので、時間が解決します。しかしそのことをわかっていないと夫婦間がギクシャクし、別の要因(浮気や不倫など)で離婚に至ってしまうことも。
やはりどんな事情であろうと、レス状態が生じたら速やかに話し合うことが大事。人生を伴走する夫婦だからこそ、悩んだり疑ったりする時間は長引かないようにしたいものです。
夫婦間において大切なのは、頻度や内容ではない
行為の頻度について、巷では「盆暮れ」(年2回程度)「オリンピック」(4年に1回程度)などと比喩しますが、たとえ頻度が少なくても互いに不満を抱いてなければ、世間と比べる必要はありません。夫婦間の行為において最も大切なのは、頻度や内容ではなく満足度。回数に関係なく、夫の性欲を解消するだけで妻が満足感を得られないならば、それはいい営みとはいえません。逆に、中年になり性欲が衰えて射精に達しなくても、夫婦ともに満足感を得られるのであれば、それでいいのです。