家計の純金融資産額は2022年3月末と比較して3兆円増加の2007兆円に
日本銀行が2022年9月20日に公表した、2022年6月末の資金循環統計(速報値)によれば、家計が保有する金融資産額は、2022年3月末と比較して3兆円増加の2007兆円になりました。2021年12月末に初めて2000兆円の大台に乗ってから3四半期連続して2000兆円台をキープしています。もはや家計の金融資産額は2000兆円台が定着したといってもよいでしょう。2022年6月末の家計の負債額は373兆円ですから、家計の純資産額は1634兆円となっています。個々の家計は負債が金融資産額を上回っているケースもあるでしょうが、家計全体をひとつの家計と見なせば大幅な金融資産超となります。たいへん優秀な家計といえるでしょう。
とうとう現金・預金は1100兆円乗せ。家計の金融資産は、物価上昇には対応できない内容に?
家計のバランスシートは超優秀なのですが、金融商品選びでは、現在の大きな課題である物価上昇に対応できていないように思います。家計の内容を見てみましょう。我が国の家計は預金に偏りすぎといわれ続けていますが、家計が保有する「現金・預金」は2021年6月末と比較して2.8%増加の1102兆円と過去最高額で、初の1100兆円乗せとなりました。金融資産全体に占める割合は54.9%になっています。
「保険・年金・定額保証」も1年前と比較して0.6%増と、増加率は低いものの538兆円と過去最高額を更新しています。保険が2021年3月末以来1.0%台の増加率となったことが大きいと考えられます。保険の内訳までは記載されていませんが、円安が急速に進んだことから外貨建ての保険などの貯蓄型保険と称される商品の販売が伸びたのかもしれません。
半面、二桁の増加率を5期連続していた投資信託の残高は、1年前と比較して0.2%減少の86兆円となっています。また、株式の残高も投資信託と同じく3.3%減少の199兆円となっています。世界的に株価が調整気味に推移したことが投資信託、株式の残高減の影響と考えられます。少々気が早いですが、今回の調査の3カ月後、12月に公表される2022年9月末の資金循環統計では、投資信託、株式の残高は2期連続の減少となる可能性が高いと思われます。
長期金利の上昇を背景に少し利率が上昇傾向になる債券(資金循環統計上は「債務証券」)は、3期連続の減少となり、残高は25兆円まで減少しています。気になるのは減少率が3.0%(2021年12月末)、4.4%(2022年3月末)、今回は5.8%と大きくしていることです。株価が大幅に下落するなどリスク回避の動きが強まると、海外では債券に資金が流れる傾向がありますが、日本ではそのような動きはなく資金流出という結果となりました。
現金・預金の増加率は鈍化しているので、今後の金融資産の動きに変化も?
結論としては、投資系の商品の保有は減り、預金・現金の保有が増えているということがわかります。今回の調査期間は2022年4月~6月の3カ月と一部夏のボーナスの支給時期と重なることから、現金・預金への資金流入の多い時期ではあります。定期性の預金からは資金流出の傾向が見られ、普通預金などの流動性商品は資金流入という動きもあります。きっかけ次第では、流動性商品から一気に投資性商品に、資金流出が起こる可能性はゼロではないと思われます。
金融資産の多くを現預金でもっているままでは、物価上昇には対応できない可能性があります。家計の内容を見直してみましょう。岸田総理が唱える「資産所得倍増計画」を意識した資金の動きが、今後の資金循環統計に出てくるのか期待したいところです。
・参考資料
日本銀行「2022年第2四半期の資金循環(速報)」
https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf
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