亀山早苗の恋愛コラム

35歳、秘密主義のモテ女を演じているけど…実は「大人の恋愛」経験なしの私が交際できない理由

最新の調査結果によれば、20代以上の3人に1人は「異性との交際を望んでいない」のだという。どういう生き方であってもかまわない。一方で、交際したいのに「できない」人もいる。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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国立社会保障・人口問題研究所が2021年6月に実施した「出生動向基本調査」によれば、20代以上の独身女性の30%、男性では40%近くが「異性の恋人との交際経験なし」だった。

男女とも、3人に1人は「異性との交際を望んでいない」と回答している。

当然ながら性交経験も減少している。特に女性は20~24歳の52.6%、25~29歳の35.0%。30~34歳の39.7%が経験なしだそう。
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もちろん一方で、「パパ活」やら「婚活」やらに取り組んでいる男女もいるわけで、さまざまな生き方があっていい。自分が選択しているのなら、どういう生き方であってもかまわないはず。ただ、交際したいのにできない、一歩踏み出せない人もいる。
 

付き合いそうになると、ぶち壊してしまう私

「男性とは友だちづきあいがちょうどいいと思っていました。友人の恋愛を見てきましたが、恋愛ほどめんどうなことはないなと(笑)。友情のほうがずっと長続きするし、気持ちがブレなくてすむ」

シオリさん(35歳)はそう言う。彼女自身、大学生時代に淡い恋をした程度で、誰かと付き合ったことはない。だがそのことを周りの友人たちは知らない。

「シオリは誰と付き合っているか言わない。秘密主義なんだからー!と言われますし、私も恋人がいるフリはしています。誰もいないなんて、ちょっとかっこ悪いから。でも本当は大人の男女の付き合いはしたことがありません。みんな私が恋多き女だと勝手にイメージしているので、今さら付き合ったことがないとも言えなくて」

中高時代、大学時代、そして社会人になってからもシオリさんには友だちが多い。趣味でジャズピアノを弾き、ライブを聴きにいく友人もいる。ジョギング仲間もいる。仲間内で告白されたことも、何度もある。相手の気持ちに応えたいと思い、デートくらいはしたことがある。ただ、「付き合ってほしい」という言葉は言わせないようにしているのだそう。

「さすがにこのコロナ禍、友人との付き合いも縁遠くなったので、いろいろひとりで考えたんですよ。どうして私は誰とも付き合わないのか、あるいは付き合えないのか。結局、付き合うのが怖いんだと思います。『みんなに慕われているシオリって、こんなつまらない女だったのか』と思われたらどうしよう、と。自分に自信がないんですよね……」

彼女は人に媚びて友だちを増やしていったわけではない。自分らしく振る舞っていたら、友人が多くなっていたのだ。それは彼女に魅力があることの証拠だろう。それでも、彼女は「うーん」と考えこんでいる。

「明るくて頼りになって、いざというときは助けに来てくれる。親しい人はみんな私をそう思っているはず。でも実際には私、けっこう根が暗いし、あんなこと言わなければよかったとくよくよするし、私がここにいていいんだろうかと怯えることもある。でもそういう自分が嫌で、いつも虚勢を張っているんです。そのことに気づくのも嫌だったけど、時間があったので、ついつい自分の心を深掘りしたら、そういう結果が出てきました」

自分を知るのはけっこうキツいと彼女は苦笑した。
 

原因は親子関係に?

「わかっているんです、私、母と折り合いが悪かった。そこに原因があるんだと思います。私は3姉妹の真ん中。姉はいい子だったから、結婚した今も実家近くに住んで母のサポート役になっています。妹は型破りなタイプで大学から海外に行ってしまって、今もたまにしか帰ってこない。私はどっちつかずで、母からいつも『お姉ちゃんよりダメダメだし、末っ子ほどおもしろくない。取り柄のない子』と言われていました。姉がピアノを習っていたので私も習いたかったけど、『あんたには無理』と母が習わせてくれなかった。妹が習わせてもらったのにすぐやめたときは、『あなたらしいわ』と母は笑っていましたけどね」

つまり、母にとって、対極的な長女と三女しか目に入っていなかったようなのだ。姉は反抗期もなかった。シオリさんが反抗的な態度をとると母は抑えつけた。ところが三女には笑いながら対処していた。母の都合のいいように扱われてきたという思いが、シオリさんにはある。

「やりたかったピアノを大人になってから自力で習い始めたとき、母が『ピアノ、やりたかったのなら言えばよかったじゃない』と言ったんです。いや、言ったけどあんたには無理って習わせてもらえなかったと答えると、『そんなはずない』と母は不機嫌になった。社会人になってすぐ、家を出ました。私が帰るのは年に1、2回ですね」

電車で30分もかからない距離なのに母には会おうと思わない。母から連絡が来ることもない。家の行事は姉からの連絡で知るという。

「母は、私が『変わった子』だと思っているようです。取り柄のない変わった子って、どういうことなのか。認めてもらえなかったから、いろんなことにがんばってきて、友だちもできた。だけど、誰かと付き合って心のうちを見せるのが怖い。私の中にある、とてつもなく黒いドロドロしたものを見せたくないんです」

かといって母への恨みつらみを吐き出すこともできない。そもそも、もう関わりたくないのに、心のどこかで「母に愛されたい」と思っているのかもしれない。それを認めたくはないのかもしれないけれど。

「友だちならうまくいく。友だちが困っていれば駆けつけます。だけどそれが恋愛になると、どうなんだろう。私は友だちへの無償の愛をもっているつもりだけど、男女関係でも成立するんですかね」

彼女の言っていることはわかるところも多々ある。だが、恋愛だからこそすべてをさらけ出しあえる面もあるのではないだろうか。もちろん、恋愛だからこそ言えないこともあるかもしれないが。

「恋愛したい気持ちがないわけではないけど、私自身もアンケートで交際を望みますかと聞かれれば、望まないと答えてしまいそうな気がします。恋愛を必要としていなかったし、これからも必要とする時期が来ると思えない。それが本音かもしれません」

でも完全に「いらない」とも言い切れない。シオリさんのように、親子関係に限らず過去を振り返ると複雑な気持ちを抱えざるをえない「恋愛難民」も、少なからずいるのではないだろうか。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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