そして伝えられた妊娠。彼女はおそらく、子どもができれば夫は変わると思ったのではないだろうか。夫の職場近くに引っ越し、夫が立ち寄りやすくする配慮も見せた。しかし、ふたりの関係が修復されることはなかった。離婚という言葉が出てから2年半、どうがんばっても無理だと彼女はあきらめがついたのかもしれない。
二度目の離婚、本当はしたくなかっただろうけれど、パートナーの気持ちが取り戻せないとわかったら、新たな出発を考えるしかない。
二度目の離婚をした一般女性は、どうやって再出発を図ったのだろうか。
いちばん大事なのは子どもたち
「私も二度、離婚しています。周りは子どもがかわいそうなんて言うけど、気の合わない夫と暮らしているほうが子どもたちに悪影響が及ぶ。父親がいたりいなかったりするのは不安定だけど、絶対的な愛情を私ひとりでも注いでいると、自信をもって生きていきたい」力強くそう言うのは、マミさん(43歳)だ。最初の結婚は27歳のときで、長女は15歳になる。5年間、一緒に暮らしたが、夫はあるときぷいと外に出ていって帰らなかった。よそに女性がいたのである。
二度目の結婚は35歳のとき。妊娠をきっかけに婚姻届を出したが、夫が長男の顔を見ることはなかった。
「それぞれ、ごく普通の会社員だったし、一般的にいって“変な人”でもなかったと思うんですよ(笑)。だけど結婚したら、合わなかったんでしょうね。友人が言うには、『マミが強すぎるからダメなのよ』ということらしいです」
マミさんは30歳を過ぎて友人と起業、最初は細々と事業を続けていたが数年後には軌道に乗った。「ものすごく儲かっているわけではないし波もあるけど、なんとか続けていけている」そうで、仕事への集中力はすさまじいものがあるらしい。
「今は従業員も6人になり、みんなで楽しく仕事をしています。最初の夫は、私が起業したころのことも知っているから、『子育てもしないで仕事ばかりか』と嫌味を言われたこともある。でも子育てはしてましたよ。ベビーシッターの手は借りましたし、長女を会社に連れていったこともあるけど、長女は『がんばっているママを見て育ったのはよかったと思う』と言ってくれています。最優先はいつだって子どもだった」
子は親の背中を見て育つのかもしれない。むしろ夫が寂しくなって不倫に走ったのではないだろうか。
妊娠中に消えた夫、その理由は……
二度目の結婚は、「最初から相手を間違えたかもしれない」とマミさんは言う。仕事で知り合った他社の男性で、8歳年下だった。「妊娠を告げたら、ちょっとギョッとしていましたね。私は婚姻届を出さなくてもいい、事実婚でいいと言ったんです。でも彼は背伸びしたんでしょうか、子どもができるならオレががんばるって。でも私、体力も気力もあるので、妊娠中もガンガン仕事をしていたんですよね。彼のほうがビビってた。結果、子どもが生まれる直前になって、彼が行方不明になってしまったんです」
連絡がついたのは半年後。どうしたのと言った彼女に、『何もかも怖くなった』と夫は言ったそうだ。自分の子ではない長女との関係も、妻であるマミさんとの関係も、とても自分がやっていけるとは思えなかったと告白した。
「だから最初から結婚しなくてもいいよって言ったじゃん、と思わず笑ってしまいました。彼は精神的に自立できていなかった。だから責任が重すぎて逃げ出したんです。私はそんなに責任感をもってもらわなくてよかったんですけどね。勝手に責任を感じて、勝手につぶれた。そんな感じ」
マミさんのたくましさに、繊細な男たちはついていけなかったのかもしれない。精神的に自立できていない男の気持ちまで忖度していられないですよ、とマミさんはまた笑顔になった。
「子どもたちは私が責任をもって育てる。あなたたちも会いたくなったら来てねと元夫たちには言っています。最初の夫は、ときどき長女に会いにきますが、長男も彼には懐いている。二度目の夫はビビっているようで、やって来ませんけど。本当は最初の夫も二度目の夫も、好きなときに来ればいいんですよ。そんなオープンな関係のほうがいいと私は思っています」
何度も結婚するのが珍しくない時代になれば、人間関係ももう少し風通しがよくなるかもしれない。