脳科学・脳の健康

頭部CT検査とは…レントゲンとの違い・メリット・デメリット

【脳科学者が解説】CT検査は、平面の状態でしか見れないX線写真・レントゲンと違い、体の断面の状態を見ることができます。全身をスキャンする時間も10分以下ととても短時間で検査できる点も魅力です。一方で放射線量が多いなどのデメリットもあります。CT検査の特徴、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。

阿部 和穂

執筆者:阿部 和穂

脳科学・医薬ガイド

CTとは…レントゲンとの違い・断面を見られる検査法

CT検査とは・メリット

体の断面が撮影できるCT検査。短時間で検査できる点も大きな魅力です

X線写真の技術は画期的でしたが、正確さが求められる病気の診断においては限界がありました。一方向からX線をあてて撮影した写真には、X線が通過してきた空間に存在しているすべての物が写り込んでしまいます。様々な構造物が重なって写ってしまうので、細かい部分の判別が難しいことが多かったのです。

この問題を解決する一つの方法は、いろいろな方向からX線をあてた写真をたくさん撮って比べるということでした。胃のバリウム検査を受けたことのある方なら分かると思いますが、ベッドの上でゴロゴロと向きを変えたり、逆さ向きになったりしながら、何枚も写真を撮られるのはたいへんです。そこまでしても、小さなポリープなどは見落とされることがあります。他に解決法はないのでしょうか?

そうです。検査を受ける人が動くのではなく、X線の発生装置と検出器を体の周りにたくさん用意して、一度に複数の写真を撮ればよいのです。このアイデアが基本となって作られたものが、今のCTの原型となるものです。

CTは、Computed Tomography(コンピューター断層撮影)の略です。寝た状態で大きな筒の中に人が入ると、筒のところに設置されたX線を発する管球とX線検出器が回転しながら自動的にデータ収集してくれます。さらに、そこで得られたデータをコンピューターで処理することで、定められた平面上に分布しているものを再構成したCGとして表示できるという優れものです。つまり、スイカを包丁でスパッと切った時の断面のように、体の中の様子を見ることができるようになったのです。

立体的な構造の中で異なる組織の像が重なって見えてしまうということもなく、クリアなCGの中で正常と異常をしっかり見分けることができるようになりました。

この技術は、1967年にイギリスの電子技術者ゴッドフリー・ニューボルド・ハウンスフィールドによって考案され、1972年に実用化されました。ハウンスフィールドは、この功績を称えられ、アメリカの物理学者アラン・マクリオド・コーマックとともに1979年のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
 

CT検査のメリット・長所……検査時間の短さ・全身スキャンも10分以下

CTの長所は、何と言っても、検査時間が短いことでしょう。全身を広範囲に検査したとしても10
分かかりません。以前でしたら、麻酔をかけて頭蓋骨を開いてみないとその中に入っている脳がどうなっているかは分からなかったわけですから、驚くべき進歩と言えるでしょう。今なおその撮像技術は飛躍的に進歩しており、最新の超高速CTスキャンだと、1つの断面画像を得るのにわずか0.05秒というものもあります。

また、CTでは特に血のかたまり(血腫)がはっきり白く映るので、脳内出血があることを確かめるには最適です。
 

CT検査のデメリット・短所……放射線量の多さ・頭部CTは不向きな箇所も

短所は、X線、つまり放射線を浴びなければならない点でしょう。ご存知のように、放射線には細胞を傷つける作用があります。その作用は、がん細胞を殺すための放射線療法に応用されていますが、裏返せば、放射線を浴びることによって、細胞が異常になってがんを発症することもあるということです。たとえば、がんの検査のためにCTを行う一方で、その検査自体ががんを発生させるリスクも含んでいるということです。なので、照射するX線の量や時間にもよりますが、CT検査を頻繁に繰り返すのは避けるべきです。

また、骨が強く写るので、頭部CTにおいては、頭蓋骨が複雑に入り組んでいる脳底部分の検査は難しいです。「頭部MRI検査でわかること…CTとの違い・メリット・デメリット」で詳しく説明していますが、MRIに比べてCTの組織分解能は良くありませんので、小さな病変を見つけにくいという限界もあります。
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