「大麻の使用は罪にならない」は誤り!

大麻所持・使用は法律違反か

大麻の所持は違法だが、大麻の使用は法律で禁止されていない? この解釈は誤りです

2021年5月に、厚生労働省は、現行の「大麻取締法」では単独で罪と規定されていない大麻の「使用」について、罰則を設けるよう法改正を進める方針を固めました。言うまでもなく、広がりつつある大麻乱用に歯止めをかける狙いです。

確かに、大麻事犯で逮捕された人のことがニュース等で報道されるとき、たいてい「所持」が逮捕理由となり、使用したかどうかはあまり問われていません。

改めて「大麻取締法」を読んでみると、その第三条と第四条では、大麻の所持・栽培・譲り受け・譲り渡し、そして研究のための使用を無許可で行うことを禁止していますが、嗜好目的を含めた一般の使用を禁止する文言が見当たらないため、「大麻の使用は法律で禁止されていない」との解釈も可能ですが、これは本当なのでしょうか。

先に答えを言ってしまうと、これは誤解です。その理由を分かりやすく解説します。
 

「大麻取締法」に「使用」に関する規定がないわけではない

法律の専門家であるはずの弁護士が、「大麻の使用自体については規制する法律の規定はない」などと解説しているケースが見られるのは、非常に残念なことです(実際に「大麻の使用」などのキーワードで検索していただければよく分かります)。実は、大麻取締法をよく読むと、ちゃんと「使用」に関する規定があるのです。

具体的には、大麻取締法の第六章の罰則に、次のような条文があります。

第二十四条の三 次の各号の一に該当する者は、五年以下の懲役に処する。
 一 第三条第一項又は第二項の規定に違反して、大麻を使用した者

そして、第三条第一項又は第二項は、「無許可の所持・栽培・譲り受け・譲り渡し」を禁止しているので、この規定は「大麻を栽培または譲り受けて、所持し、使用した者は、五年以下の懲役に処する」という意味になります。

また、そもそも、所持しないで使用することは、ほぼ不可能です。使用しているところを現行犯逮捕された者が、「私は所持してない」と主張しても通るわけがありません。なので、大麻を使用した者は、ほとんどの場合、刑罰を受けることになるのです。
 

大麻の「使用だけ」を禁止行為に掲げなかった特別な理由

誤解を招かないためには、使用しただけでも罪になることを第三条と第四条に書いておけばよいと思うでしょうが、そうなっていないのは、大麻取締法の生い立ちや目的が関係しています。
 
日本で現行の薬物関連法のルーツは、1930(昭和5)年5月に公布された内務省令の「麻薬取締規則」です。この「麻薬取締規則」で規制対象とされたのは、モルヒネ、ヘロイン、コカイン、エクゴニン(コカインの原料)、印度大麻草などでした。覚醒剤や向精神薬、幻覚剤などは含まれていませんでした。また、第二次世界大戦に敗れた日本は、戦後、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)からの指令を受けることとなり、1946(昭和21)年1月に四つめの薬物規制に関するポツダム省令として「麻薬取締規則」(昭和21年厚生第25号)が制定されました。同じ規則名であるため、昭和5年のものは旧・麻薬取締規則、この昭和21年のものは新・麻薬取締規則と呼んで区別されます。

新・麻薬取締規則まで、大麻は麻薬に指定されていましたが、1947(昭和22)年に五つめの薬物規制に関するポツダム省令として「大麻取締規則」(昭和22年厚生・農林省令第1号)が制定され、大麻は麻薬から外れ、独立して規制されることとなりました。そして、この翌年に大麻取締法ができたのです。

ちなみに、覚醒剤については、第二次世界大戦の敗戦直後から、軍が所蔵していた覚醒剤が市場に流出するなどして、乱用ブームが起こりました。そこでまずは、1948(昭和23)年7月に公布・施行された(旧)薬事法(昭和23年法律第197号)で覚醒剤を「劇薬」に指定し、販売等に関する規制が行われたものの、乱用がおさまらなかったため、1951(昭和26)年に「覚せい剤取締法」(昭和26年法律第252号)が制定(同年7月施行)されることになりました。つまり、覚醒剤が独立した法律で規制されているのは、乱用を厳しく取り締まるのが目的でした。

大麻が独立した法律で規制されるようになった事情は、覚醒剤とは違います。日本には古くから麻繊維の産業があることから他の薬物と同じ法律で規制するのは難しいと判断されたからです。もっと分かりやすく言うと、農業を守るためだったのです。

農業では、大麻草の種子をまいて育て、繊維を採ったり、実を食用や油などに利用します。もし法律で、全面的に使用を禁止したら、こうした農業活動もすべてできなくなります。また、農家の方が作業中に、大麻成分を吸い込み、「麻酔い」という状態になる可能性も考えられます。1948年に大麻取締法が制定されるときに使用罪の導入が見送られた理由はこれだと言われています。

大麻が作物として用いられているという実情に即した合理的な対応として、使用については第三条と第四条でふれず、無許可の所持や栽培を禁止したというわけです。
 

マリファナの受動喫煙はどうなる? 法律の穴と改正への議論

「栽培・所持・譲受・譲渡をして使用すること」を禁止するという取り決めは、他にも良い点があります。

極めてまれなことではありますが、もしあなたの周囲にマリファナを吸っている人がいて、その副流煙をあなたが吸い込んでしまったら、どうでしょう。もし法律が、「所持しないで使用した」場合も禁止していれば、あなたが逮捕されてマリファナの成分が体内から見つかった場合に、使用したとみなされ、有罪になることもあるでしょう。しかし、現行法では、「所持したうえでの使用」に罰則を与えているので、栽培・所持・譲受・譲渡のいずれも経ていない「受動喫煙」は該当しないのです。冤罪を生まない、という点では理にかなっているように思います。

ただし、このことは悪用されかねない「法律の穴」とも言えます。意図的に大麻草を栽培し、所持し、自ら吸引した者が、何らかのきっかけで逮捕されたときに大麻使用の疑いがかけられても、物的証拠がなく、本人が「人の吸った煙を吸い込んだ」と言い逃れるかもしれないからです。

現在、厚生労働省では、大麻取締法の改正に向けて議論が活発化していると伝えられています。上述のようなポイントも十分に考慮されることを切に望みます。
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