同窓会から帰ってきた夫の不適切発言
つい先日、高校時代の同窓会から帰ってきた夫に、いきなり「うーん。やっぱり老けたな」と言われ、いたく傷ついたとナオミさん(51歳)は言う。同い年の夫とは結婚22年。息子も娘も大学生だ。「共働きでがんばってきたから、同志的な気持ちは強い。その分、男女の要素はなくなってしまいましたね。だけど、いきなり老けたと言われる筋合いはないですよね。同い年なんだから」
ムッとしたナオミさん、「何なの、突然」とつっけんどんに返した。
「すると夫は、『そういう顔をしちゃダメだよ。やっぱり女は笑顔でいないと』と、さらにムカつくようなことを言うわけです。よく聞いてみたら、同窓会で再会したサワコさんという女性が、同い年とは思えないくらい若々しくてきれいで見とれてしまった、と。『やっぱり日頃からの心構えが大事なんだろうな。彼女はものすごく女意識が高いから』って。女意識って何? 思わず聞いたら、『自分が女であるという意識だろ。それがあるからセクシーなんだよ』と言うわけです。たまの外出だからめかし込んできただろうし、そういう効果じゃないのって私は思いましたけど」
それ以来、夫は何かというと「サワコさん」の名前を出すようになった。もちろん、夫が浮気しているとは思わなかったが、誰かと比べられていることが不愉快だった。
理解しようとしない夫
「女として比べることを、失礼だと思っていない夫に怒りがありましたね。立場が逆転したらどう思うと聞いたけど、夫にはピンとこなかったみたい」その後、夫はグループLINEでサワコさんとの会話も楽しんでいるようだ。彼女のことが好きなのかと聞いてみたが、そういうことではないと否定された。
「彼女の旧友だということだけで満足だと夫は言いました。それも聞き捨てならないですよね。夫は『きみも少し身の回りにお金をかけたほうがいい』と言いましたが、子どもふたりが私立大学に行っていて、どうやったら自分にお金をかけられるんでしょうね。夫の母の介護費用もかかるのに」
大変な思いをしている妻を差し置いて、他の女性を褒めまくり、あげく「努力が足りない」と言われたら、どんな妻も立腹するはずだ。
「私に、いわゆる従来の女らしさが足りないのは当たってると思うんです。ここ何年もスカートなんてはいてない。ただ、私は昔からそういうタイプ。だから夫も“同志”として信頼してきたはず。サワコさんの容姿を聞いたら、華奢でふんわりしたワンピースが似合っていた、と。さらに尋ねたら、彼女は一回り年上の会社経営者と結婚していて、子どももいない、と。だったら手間も金もかからないわねー、エステだって行き放題よね、夫が稼いでくれていいわねー、そういう環境にいれば私ももっと違う人生だったわと言ってやりました(笑)」
さすがに夫も黙ってしまったそう。彼女を褒めるだけならいざ知らず、妻と比べたら気分を害するのは当然だ。夫としては軽い気持ちで言ったのかもしれないが、ナオミさんが逆襲するのもやむを得ないだろう。
「ただ、やっぱりそれからも夫は私を、サワコさんより劣っているという目で見ているんだろうなと感じるようになりました。だから配偶者を人と比べてはいけないと思います。やはり傷つくし、過去から今まで実はずっとそう思っていたのかと疑念もわくし……」
長年にわたって育んできた信頼関係も、これでガラガラと崩れていく。「比べているといっても、軽い気持ちで言っただけ」と夫は思っているかもしれない。だが言われたほうは心の深部にトゲが刺さったような気分だろう。前のように無条件に夫を信頼し、甘えることができなくなったとナオミさんは暗い表情になった。