妻がときどきライブに行くようになって
結婚して15年。ひとり息子が中学に上がってから、妻がときどき「友だちとライブに行く」といって出かけるようになったと、ショウゴさん(45歳)は言う。「てっきり仲良しの女友だちと一緒なのだと思っていたんです。あるとき、その女友だちにばったり会ったので、『いつもご一緒していただいてありがとうございます』とお礼を言ったら、『え?』という反応で。帰宅してから妻に『彼女と一緒じゃなかったの?』と聞いたんです。すると『あれ、違うよ。高校時代の同級生の○○くん』としれっと言われて。男だったのか、と愕然としました。妻は『男友だちじゃいけないの?』と不思議そうな顔をしていました」
その後、妻にその男友だちに会わされたショウゴさん、なんとなく納得がいったようないかないような不思議な感覚に陥っているという。
「異性の友だちとふたりでライブ。アリですかね? 僕の感覚では、それは浮気の始まりだと思うんだけど。妻は『心の狭い男ね』と笑っていました。なんでもないとは思いますが、モヤモヤしますね」
妻は「そんなふうに疑うなら、女友だちにアリバイ作ってもらって嘘をついてもいいんだけど」と言い出したので、あわてて「いや、今のままで。正直に言って」と頼み込んだそう。
「音楽の好みが合う者同士でライブに行くのがいちばん楽しいんでしょうけど、最初から僕を誘ってくれなかったのも気になります。いや、心が狭いんでしょうけど」
ショウゴさんは、どこか腑に落ちず、毎回、妻が帰宅するまで悶々としている。疑いの余地はなさそうだが、万が一、この状態で妻が浮気をしているとしたら、とても夫が太刀打ちはできないほど策士なのではないだろうか。
昔の友だちに会うと出かける妻
「ここ数年、妻が『昔の友だちとSNSでつながった。会ってくる』とときおり出かけるようになりました。SNSで再会することはあるだろうし、いろいろな昔のつながりもあるでしょう。だけど僕はそれを聞いてグループで会っていると思い込んでいたんです」そう言うのはダイキさん(46歳)だ。結婚して17年。16歳と13歳の子がいる。共働きで妻の母と同居しているため、妻の帰宅が多少遅くなっても問題はない。ダイキさん自身、料理を作ることもよくあるし、子どもたちもたまに母親がいなくても「かえって息抜きできるね」というくらい成長している。
それでも、と彼は言う。
「せっせとスマホをいじっていた妻が、翌朝、『ごめん、今日は昔の友だちに会うから遅くなる』と言うと、なんとなくあまり愉快ではないんですよね。しかもあるとき、妻がテーブルに置いてあったスマホに通知音があったので、なにげなく見たら『明日は楽しみにしてる』というメッセージが。もしかしたらグループで会っているわけではないのかもしれないとピンときました」
妻に確認すると「うーん、何人来るかなあ。5、6人だと思う」という返事。みんなと一緒の写真を送ってよと言うと、妻はいきなり「どうして?」と不機嫌になった。
「怒るって怪しいじゃないですか。だから僕に紹介できないような人たちなのかと尋ねると、妻は『そうじゃないけど、私が夫に監視されたり支配されたりしているみたいに受け取られる』って。そういうものですかねえ」
コロナ禍で自宅勤務が増えても、妻はときおり出社していた。それも怪しいとダイキさんは考えている。だからといって、証拠をつかもうとかどこまでも追求しようとかは考えていない。なぜなら妻を怒らせたくないから。そして「真実」を知るのが怖いから。
「知りたいけど知りたくない。妻が家庭を捨ててどこかに行くとは思えないけど、万が一、そんなことになったらと不安にかられることもあります。だからときどき嫌味や皮肉を言ったりしてしまう」
つい先日も、昔の友だちに久々に会うと言った妻に「昔の友だちより毎日一緒にいるオレのことを大事にしたら?」とつい言ってしまった。妻の顔色が変わったのは明らかだったと彼は言う。
「怪しいとは思うけど、やはりそれ以上は深追いできなかった。妻が誰かと会うことをおもしろく思わない僕がおかしいんでしょうか」
浮気を疑う気持ちはわからなくないが、それ以上に、ふだんの夫婦関係をもう一度見つめ直したほうが、ふたりにとって建設的ではないだろうか。妻が大事なら、「可もなく不可もない関係」ではなく、結婚後も「育てていく関係」にしていくことが重要なはずだ。