「言い訳はやめて!」と言ったら
「仕事を頼むときは、全体像を説明するようにしています。こういう仕事の流れがあって、あなたはこの段階のことをやってほしい、というように。つい先日も、新卒3年目でうちの部署にやってきたばかりのA子に仕事を頼んだんです。急ぎだからよろしくね、とつけ加えて。30分ほどで終わる仕事のはずなので、40分後に『どんな感じ?』と聞いたら、『あのあと課長に頼まれたことをやって、次に主任に頼まれたことをやって……』と言っているので、『私が頼んだ仕事はどうなってるか聞いたんだけど』と言ったら『はい?』と」ちょっとムッとしたカエさん(33歳)は、「言い訳はしなくていいの。できているかどうか聞いてるんだから」と言ってしまった。すると、「だから説明しているんですけど」と逆ギレされたという。
「急いでいるって言ったよねと言うと、『でも課長に頼まれたんですよ。そっちのほうが先ですよね』と。いや、課長だろうが何だろうが急ぎの仕事を頼まれているといえばいいのにとガクッときました。結局、いいや、私がやるからと言ったら、『だったら最初から先輩がやったほうが早かったですね』ですって」
呆れたというカエさんだが、自分と年の近い後輩にそれとなくそういう話をしたら、「課長の仕事を優先したほうがいいと思ってしまうことはあるかもしれない」と言われた。その場合は、「これは急ぎだから、○○の件を頼まれていますと言えば課長も、じゃあそっちを優先してと答えるはず。そこまで言ってあげないと後輩にはわかりづらい」というのだ。
「一を聞いて十を知るみたいなことは、もうないものだと思ったほうがいいみたいですね。その後輩が言うには『私見ですけど、顔を見て話すのが苦手な人が増えているように思う』って。確かにA子も入社してすぐリモートワークだったし、考えてみたら社内の人と初めて会ったのが入社半年後だというのだから、かわいそうですよね。しかもデジタルが当たり前の世代だから、仕事の指示はLINE等で箇条書きにしたほうがいいんですって。10年違うともう別の世界ですね」
それ以降、カエさんは人と世代を見極めて仕事を頼むようになったという。
一言多いと思っていたら
都内のサービス関係の企業に勤めるチエコさん(40歳)は、一言多い後輩Bさんに悩まされている。「2年目の彼は、とにかく一言多いんですよ。うちはフレックスなので休憩時間等も声をかけあって交代でとるんです。Bくんに『休憩、先行って』というと『休憩ってあとからのほうが長くなりがちですよね』という。だからじゃあいいわ、私が先行くわというと、『いえいえ、僕のほうが今日は早くからいますから』って。だったら黙ってさっさと休憩とれよと言いたくなる。一事が万事、こうなんですよ。あげく、すぐに『先輩、お疲れですね』と言う。別に疲れてないけどと言うと、『心配してるんですよぉ』って。媚びてるのか気を遣ってるのか、単に無礼なのかよくわからないんですが、私と同世代の間では、どう対処したらいいかわからないという声が出ています」
性格的に一言多いのか、職場に不満があるのか、そのあたりも見当がつかない。別の若い社員Cさんに聞くと、「ああ、あいつはああいうやつだと思っていればいいんじゃないですか」と言われてしまった。
「そういうくくり?と笑ってしまいました。Bくんがものすごく変わっているとも思えないし、そういうやつって簡単にくくってしまうのもどうかなと……。人の見方や感じ方も、とってもアバウトというか、よく言えば他人を気にしていない。BくんとCくんは似ているのかなと思うと、それほど仲がいいわけでもなさそうなんです(笑)」
Bさんの「一言多い」にはチエコさんの周りも困惑している。
「いわゆる報連相、報告・連絡・相談はそこそこちゃんとしているんですが、前後にいらない一言が入る。社外の人と打ち合わせしたあと、上司に内容を報告する前に『あの社の○○さん、最近、離婚したそうですよ』とか。そんな個人情報はあとでいいと上司に怒られていました。次はもっと内容を詰めるんだろ、どういう方向性になるんだと上司に言われ、『あー、最近のトレンドで言うと、こういう方向になりますかね』と。最近のトレンドでものを決めるな、それがトレンドだというきみの根拠を述べなさいと逆襲されていました。トレンドなんて言わなければめんどうなことにならないのに」
一言多い彼とは、コミュニケーションがとりづらいとチエコさんは嘆く。本当はどう思っているのかが、“余計な一言”にまぎれて見えなくなるのだという。時間をかけ、ひとつひとつ丁寧に質問しながら、彼の人となりと仕事ぶりを見ていくしかないねと最近、周りでは話し合っているそうだ。