家では「仲良し」、外では……?
「結婚して20年経ちますが、うちはいまだにラブラブなんです。夫が帰宅すると玄関にダッシュしていくのは私と犬だけ。すぐに夫とお帰りのキスをします。子どもたちは知らん顔で、『また、ふたりでいちゃいちゃしてる』とからかわれています」そう言うのはエリコさん(47歳)だ。今年から大学生になった長女と、高校生の次女がいる。女3人も仲がよく、しょっちゅう仲良く出かけているが、夫はそれを見送って家でひとり、趣味の盆栽を楽しんでいる。
「帰ってくると夕食の支度ができていたりする。『パパって最高』と私は夫に抱きついて、夫もハグしてくれて。それをまた娘たちがしらけた笑いで見ている。そんな感じですね。とはいえ娘たちもパパは大好きみたい」
ときには夫婦ふたりで、あるいは家族4人で出かけることもあるが、外に出ると夫は家にいるときとは少し違う顔を見せる。エリコさんは娘たちがいようが近所の人が見ていようが、夫と手をつないだり腕を組んだりして歩きたいのだが、夫はやたらと恥ずかしがるのだ。
「だから外を一緒に歩くときは並ぶだけ。娘たちがいるときは長女はパパと、次女は私と歩くことが多いかな。外では夫は淡々としています。本当はベタベタしたいくせに。こんなことを言うから娘たちに『バカップル』と言われちゃうんですけど」
仲良きことは美しきかな、である。結婚生活が長くてもこういう夫婦がいるのは羨ましい。欲を言えばエリコさんの言葉通り、もっと外でもベタベタしていいのかもしれない。
外で「仲良し」を見せつける夫の目的は?
一方、家では決して仲がいいわけではなく、「ほぼ冷戦といってもいいくらい」なのに、外に出るとやたらとベタベタしてくる夫もいる。「夫の浮気が発覚してから3年。関係を再構築しようと決めたものの、夫はすっかり許されたと思っているみたいで、家の中では相変わらず威張っている。『私は今も傷ついたままなんだけど』と言ったら、『起こってしまったことをぐちぐち言ってもしかたないだろ。再構築するって言ったじゃないか』と逆ギレする始末。そういうことがあって、なんとなく冷えた関係のまま膠着状態が続いています」
そんな事情を抱えているのは、ユウカさん(40歳)だ。結婚して10年、8歳のひとり息子がいるが、妊娠しているときから浮気していたとわかったのは3年前。5年近くもダブル不倫をしていたと知って、ユウカさんは夫に絶望した。子どものために再構築の道を選んだが、夫婦としての性的関係は復活していない。させる気もないという。
「夫が何度かしかけてきましたが、そのたびに私は吐き気がして応じられない。体が拒否しているんだと思います。夫は舌打ちして背中を向けるだけ。そこで真摯に向き合って優しい言葉をかけてくれれば事態が変わるかもしれないのに……。どうしてそこまで自分が下手に出なければいけないのかわからないと言われました」
そんな関係なのに、まれに一緒に出かけると夫はやたらとベタベタする。つい先日、夫の実家に行かなければならなくなったのだが、電車の中で席があくと夫はすぐに妻を座らせた。
「見知らぬ年配の女性に『今どきの男の人は優しいわね』なんて言われて夫は有頂天になっていました。実家に行くと、なにかと私の肩を抱いて引き寄せたり手を握ったり。義父母も親戚も夫のことを『奥さんにベタ惚れなんだね』『いい夫婦だね』って。みなさん、この人を信じないで、浮気してたんですよ、しかも私が妊娠中に始まったんですよと言いそうになりました」
グッとこらえるたびにストレスが増していく。しかも夫が、まったくそんなことはなかったかのように「ラブラブ夫婦」を演じているのもはらわたが煮えくり返りそうだと彼女は言う。
「夫が人前で私の肩を抱いたとき、思わず夫の手をはねのけたことがあるんです。そうしたら周りの人は『奥さん、照れちゃってるわよ』って。照れているんじゃなくて怒っているんですけどね」
本当に仲がよかったら、人前でそんなことをするはずがないとユウカさんは言う。
実際には仲がよかろうがよくなかろうが、人前でベタつく人とそうでない人がいるということだ。ただ、家では不機嫌な顔をしているのに外では仲のいいふりをしたがる夫に対しては信頼を抱けないのが女性の本音だろう。
「夫の偽装愛にはうんざりです。再構築も再検討しなければと思い始めています」
妻の信頼を取り戻すのが優先事項なのではないだろうか。