亀山早苗の恋愛コラム

彼の「食事マナー」は私には“無理”だった。「婚約解消するほどの話じゃない」と友人は言うけれど

人気YouTuber(ユーチューバー)の食事マナーが「よろしくない」と話題になっている。食の「マナー」についての感じ方は人それぞれ。だが食に限らず、価値観が違う相手を受け入れるのは難しいものかもしれない。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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性格もいいし、相性も悪くないが、どうしても「マナー」が気になり、迷った末に婚約解消したという女性がいる。誰にでも起こりうることかもしれないが、その理由が「他人には理解してもらえない」こともある。人の価値観はそれぞれだからしかたのないことなのだが。
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「食のマナー」がなってない

つい先日、1年つきあって婚約した3歳年下の彼と別れたというのは、サチコさん(33歳)だ。

「子どもがほしいと思っていたので、ちょっと焦っていたんだと思う。いざ婚約したら、急に現実感が増して彼をよく観察するようになったんです」

そして気になったのが、食事における彼のマナーだった。握り箸のような箸の持ち方も気になったし、お茶碗をつまむように持ち上げているのにも眉をひそめざるを得なかった。

「悪いけど言ってもいいかな?と前置きして、いろいろ言ってみたんです。私としては、そういうときにどんな反応をするのかも気になったので。すると彼は『ふうん、そうなんだ』『じゃあ、どうすればいい?』と前向きだった。だからいちいち教えたんです。肘をついちゃダメとか、食べているときにしゃべりながら箸で人を指すのはダメとか。子どもかと思うほどダメダメなんですよね」

つい気になったことを全部指摘してしまったサチコさん。最初はおとなしく聞いていた彼だが、最後には言葉を発しなくなっていた。それに気づかず、「うちは祖母が厳しかったから。食事マナーだけはたたき込まれたんだよね」と言うと、「オレはどうせろくな家庭に育ってねえよ」と彼が逆ギレした。

「いきなりだったのでびっくりしました。彼を非難したつもりはなかった。だけど彼も社会人ですから、基本的なマナーくらいわかっていないと恥をかくのは彼自身。そのときは気まずいながらも、お互いに『ごめん、言い過ぎた』『いや、オレが悪かった』でおさまったんですけど……」

ふたりだけで結婚を決めて互いの親には事後報告。それでも「とりあえずは実家に連れていきたい。遊びに行くつもりで来て」と彼に言われた。遠方だったので連休を使って、彼の家に初めて行ったとき、サチコさんはさらに気持ちが引いていった。
 

家族全員、マナー知らず

彼の両親も、独身の弟もサチコさんを歓迎してくれた。近所にいる親戚まで呼んできていたという。

「コロナ禍なのにとちょっと思いましたが、みんな楽しみにしていたと言われると嫌な顔もできない。昼頃着いたので、テーブルの上には大皿に載ったたくさんの料理がラップもかけられずに並んでいて。そこにお寿司が到着、そのまま宴会状態になりました」

大皿料理に直箸となりそうだったため、サチコさんは「すみませんが、取り箸を」と思わず言ってしまった。

「彼のおかあさんが、『そんなもの、いるの?』と言いながらも持ってきてくれました。コロナ禍ですから、と言うと『ふうん』って。少しは食べないと悪いと思ったので箸をつけてから周りを見ると、いやもうびっくり」

片膝を立てて食べている“おっさん”もいれば、彼の父親は自分の取り皿を箸で引き寄せている。弟は箸ではなくスプーンで食事をしていた。わいわいと楽しそうではあったが、誰もマナーなど考えてもいないようだ。

「これはこれでいいんだろうとは思いました。彼の箸使いがなっていなかったのもよくわかった。ただ、私はここにはなじめない。私だって別に裕福な家の生まれではありません。ただ、ごく普通の家に育っただけ。彼の家は代々商売をしていて、おそらく資産もサラリーマンのうちよりずっとあるはず。でもそういうことじゃないんです。お皿を箸でたぐり寄せたり、他人が来ているのに直箸をなんとも思わないような人たちにはなじめない。それだけのことなんです」

彼らには彼らの流儀があるのかもしれない。ふと彼を見ると、相変わらずの握り箸、実家で気が緩んでいるのだろう、煮物の里芋を箸で突き刺してとっていた。

サチコさんは彼の実家に一泊するつもりだったが、昼食後、具合が悪くなったと言ってひとりで帰った。

「彼があまりにもしつこくどうしたんだというから、急に生理痛がひどくなったと訴えました。彼の両親や親戚には仕事で呼び戻されたことにしてもらいました。駅まで送ると言う彼を押しとどめて、タクシーを自分で呼んで帰ったんです。あとからいろいろ言われることは想像できたけど、もう未練はありませんでした」

1週間ほどたってから彼と会い、結婚は無理だと伝えた。「何だよ今さら」と言われたが、一緒にやっていく自信がないと押し通した。

「お高くとまりやがってと最後に言われました。彼にとってはそうかもしれません。でも私、彼と一緒に生活していったら自分の心が壊れそうな気がしたんです。気さくで楽しくていい人だったけど合わない。どうしようもないんでしょうね」

友人に言ったら、「そんなの直させればいいだけじゃない」「いい人だと思うよ。もったいない」とさんざん言われた。人によっては些細なことだと思うかもしれないが、ともに生活していけば、毎日目に入る風景になる。彼女の決断もやむを得なかったのかもしれない。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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