亀山早苗の恋愛コラム

親子4人で暮らす3LDKで義母と同居を始めたら…自分の「居場所がない」という大誤算

多くの妻たちにとって、義実家との同居はできることなら避けたいのが本音だろう。意地悪な義母なら迷いなく断ることができるかもしれない、しかし温和ないい人キャラの義母から頼られたら断れるものだろうか。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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義両親と同居だけはしたくないというのが、多くの妻たちの本音だろう。だがやむを得ない事情で同居せざるを得ないこともある。意地悪義母ならまだ無視もできるが、根はいい人に頼られたり甘えたりされると突き放せずに苦しい思いをするかもしれない。
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実はひとりで寂しかったのかもと同情して……

「結婚して16年もたってから同居することになるとは思いもよりませんでした」

そう言うのはタカコさん(48歳)。2年前から義母と同居している。2歳年上の夫はひとりっ子で、10年前に父が亡くなり、以来、母はひとり暮らしをしてきた。

「うちから義母の家までは30分くらい。すでに自宅を処分してワンルームマンションで気楽に生活しているように見えました。だけど70歳を越えて気弱になっていたんでしょうね。高熱を出して寝込んでしまったとき『このまま死んでも誰にも気づかれないんだな』と思ったそうです。それを聞いた夫が『同居してもらえないか』と言い出して。当時、娘は15歳、息子は12歳。それぞれに部屋を与えて夫婦の寝室があって。3LDKでめいっぱいなわけです。もう一部屋、納戸みたいな小さい書斎があるんですが、義母はそこでいい、と。ちょうどうちの近くにワンルームマンションが新築されたので、そこを借りたらどうかと言ったらお金がない、と。義父だって少しはお金を残していたでしょうし、家を処分したお金だってあるはずなのにと思いましたが、そこまでは聞けなかった」

タカコさんも仕事をしているので昼間はリビングを好きなように使ってもらえばいいか、と小さな書斎を片づけて義母のベッドだけ入れた。最初のうちは掃除をしてくれたり、急な残業が入ったときは子どもたちに食事を作ってくれたりもした。

「それはありがたかったけど、土日はリビングから動かないんですよ。私ものんびりしたいし、前みたいに家族で外食にも出かけたいけど、義母は『私はタカコさんの手料理が好き』と言う。週末、仕事を忘れてリラックスすることができなくなりました。それでも、ひとり暮らしが本当は寂しかったんだろうと同情して甘やかしてしまったのがいけなかった(笑)」

せっかく同居したのだから、嫌な思いをさせたくないとタカコさんは「いい嫁」になってしまったのだ。
 

隙あらば甘えようとする義母

そのうち、義母は甘えが全開。たとえば春先、明日は病院へ行くというとき、「明日は天気がよさそうだけどなにを着たらいいのかしら」とタカコさんに相談する。

「気温の感じ方なんて人それぞれですからね、お義母さんが寒くないようにすればいいんじゃないですかと言ったら、急にむっつり押し黙って自室に行ってしまう。薄手のコートくらいあったほうがいいかもとか何とか言ってほしいんでしょうね。だんだんそういう甘えがうっとうしくなっていきました。『あなたのスカーフ、春先にいいわね』と言われたこともある。貸せと言いたいんでしょうけど、あえて気づかないふりをして『お義母さんもスカーフいっぱい持ってますよね』と言いました」

同じ市内だし、行動範囲はひとり暮らしのときとそう変わらないはずなのに義母は越してきてから、それまでやっていた習い事をすべてやめてしまった。「何かしたほうがいいですよ」とタカコさんが言っても、『出るのがおっくうで』と言うだけ。だが体調が悪いわけではない。どうやらタカコさんに心配されたいらしいのだ。

「あるとき義母が『ねえ、仕事休めない?』と言うので何ごとかと思ったら、『タカコさんとお茶したり、一緒にデパートに行ったりしたいのよ』と言い出したんです。私はそんなことがしたくて同居に踏み切ったわけじゃない。仕事は忙しいし、簡単に休めませんと言ったら涙目になるんですよね」

ひとりで緊張感をもって生活していたのに、急に同居することになって、一気に依存心が高まったのかもしれない。

「元気な義母と同居なんてするもんじゃないと本当に思いました。夫も私の話を聞いて、それはひどいなと言っています。意外なことに夫には甘えないんですよ。夫が『墓参りにでも連れていこうか』と言っても断ってる。とにかく私に甘えたいらしい。ありがたいと思うべきなのかもしれませんが、正直言って私はうっとうしいだけ。娘は一時期、少し不安定になりましたね。母親を祖母にとられたような気になったみたい」

それから2年、今も義母はタカコさんに隙あらば甘えようとしている。だがタカコさんは、極力、義母を自立させるために『自分のことは自分でやってくださいね』『それは自分で考えて』と突き放すようにしている。まるで子どもを自立させるかのように。

「年寄りは子どもに還るといいますが、義母はまだ75歳。私の母は80歳になりますが、父が亡くなってからもひとりで元気に暮らしています。どちらかといえば実母を呼び寄せたいくらいなんですけどね」

つい先日、義母に旅行でもしたらと勧めると、「あなた、一緒に行く?」と言われてがっくりきたとタカコさんは言う。義母が意地の悪い人ではないだけに、「私を認めて、私と仲良くして」という必死のアピールが胸に響く。それでもあえて距離をとろうとする自分が嫌な女に思えることもある。そう思わせる義母が巧妙なのだ。

同情から始まって、結局、自分の首を絞めるような形になっている今、タカコさんは義母を高齢者施設や有料老人ホームに入れる相談を夫にいつ切り出すか考えている。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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