「幼保無償化が高所得世帯ほど手厚い再分配になっている」発言はなぜ炎上したか
「高所得世帯ほど手厚い再分配」発言をめぐって
2019年10月からスタートした、「幼児教育・保育の無償化」(以下、幼保無償化)。これに対して、2022年3月8日に開かれた参議院予算委員会で、「高所得世帯ほど手厚い再分配になっている」との有識者の発言があり、ネット上で連日議論が巻き起こりました。もしかしたら、今後高所得者世帯において、所得制限の導入によって幼保無償化が適用されなくなるのではないか?といった心配の声が聞かれるほか、1人の女性が産む子どもの数にも影響するといった声も上がっています。さらにいえば、貧困対策ではなく少子化対策のための幼保無償化であるのに、なぜ高所得者だけを制限のターゲットにするのか?といった声もあります。皆さんの怒りはごもっともだと思います。
「所得制限で確保した財源が保育士さんの給料アップになるなら……」という肯定的な意見もあるようですが、果たしてそれで少子化対策はうまくいくのでしょうか? 疑問が残ります。
そもそも「幼保無償化」とは?
ここで、そもそも「幼保無償化」とは何か、おさらいしておきましょう。幼保無償化とは、幼児教育の負担軽減を図るために実施されました。原則として、3歳から(幼稚園は満3歳から)5歳までのお子さんがいる場合に、幼稚園や認可保育所、認定こども園、企業主導型保育などの施設利用費が無償化されています。
国立・公立・私立といった区別はありません。利用条件はあるものの、すべて対象となっています。
なお、あくまで無償になるのは利用費であり、給食費や保護者の送迎費、行事費などは無償になりません。
現状では、幼保無償化に所得制限はありません。そのため、該当するお子さんがいるご家庭であれば、どの方でも利用できます。
果たして幼保無償化は「高所得世帯ほど手厚い」のか?
それでは、この幼保無償化は高所得世帯ほど手厚い再分配となっているのでしょうか?確かに、以前であれば所得が高いほど保育料も高かったため、無償化は高所得世帯に有利となった部分もあります。しかし、そもそも高所得者層は多額の税金を支払っていますから、あくまで保育料に関してのみ負担が軽減されたというべきであり、増税や今までの経緯など幅広い視野から考えるべきです。
2022年10月からは、児童手当の所得制限により、高所得層では児童手当が廃止されます。このような他の側面も考慮しながら政策は決めていく必要があります。木を見て森を見ずの状況では、財源が足りないなら所得が高い人たちをターゲットにすればよいという安易な発想となりかねません。
実際に子育て世帯の意見を聞き、実情をつかみ、そのうえで必要な部分は拡充する、または維持するといったことも考えてほしいものです。子どもは国の宝です。子どもの数が減れば、経済の活性化は考えられません(移民を受け入れるのなら話は別でしょうけど)。安心して子どもを産み育てられる環境づくりができるかどうかは、今後の日本の行方を左右することでしょう。