亀山早苗の恋愛コラム

別れたいと言い出したのは自分じゃなかった?離婚経験者が不思議がる「元妻に執着する」男の心理

離婚したら夫婦の縁は「親である」こと以外切れるはずだが、なかなかそう割り切れない男性もいるようだ。親子の縁がつながっているからといって、妻に執着する男の心理がわからない、と離婚した女性たちは言う。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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離婚したら夫婦の縁は「親である」こと以外切れるはずだが、なかなかそう割り切れない男性もいるようだ。親子の縁がつながっているからといって、妻に執着する男の心理がわからない、と離婚した女性たちは言う。
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「逆ギレ離婚」だったのに今さら?

「うちは夫が逆ギレして離婚を言い出したんですよ。それなのにあとになって、『子どもがかわいそうだから、きみの気持ち次第でやり直してあげてもいいんだけど』と言い出した。笑うしかありませんでしたね」

ナナミさん(38歳)はそう言って苦笑した。29歳のとき、つきあって半年たらずで妊娠がわかり、2歳年下の彼と結婚した。

「なんとなくうまくいかないような気はしたんです。だけど子どもが生まれるなら、やはり父親はいないよりいたほうがいいと婚姻届だけ出しました。彼はすごく喜んでいましたよ。『早く父親になりたかったんだ』と。これからは家族3人でがんばろうねと子どもみたいにはしゃいでいた。そのときはこの人を信じようと思っていました」

ところが妊娠中に、早くも夫の浮気が発覚。毎晩のように飲み歩いたあげく、外泊が続いたのでとがめると「だってナナミがかまってくれないから」とキレた。

「つわりに耐えて家事やって仕事に行ってるんですよ。緊張感からか職場ではなぜかつわりはおさまっていたけど、その分、帰ってくるとつらくてたまらない。その上、気持ちが悪いと言うと嫌な顔をして労ってもくれない夫をかまうなんて無理。そう言ったら、『オレの寂しさはどうしてくれるんだ』と。自分の寂しさくらい自分でなんとかしなさいよと言ったら、『だからあちこちに女を作ったんだ』って。言葉は悪いけど、コイツはバカか、と思いましたよ」

一気に話して、ナナミさんは笑った。元夫のことは、今や女友だちの間でも笑い話にしかならないそうだ。

「それでも出産までは離婚したくなかったし、子どもの顔を見たら夫の気持ちも変わるかもしれないと期待していました。出産後、一応、夫は駆けつけてきたんですが、怖がって生まれたての息子を抱けなかった。しかも息子の顔を見て、『オレの子じゃないんじゃないの』と言い出して。さすがにその場にいた義父が怒って夫を連れて病室を出ていきました。義母も『ごめんなさいね』と。義両親はいい人たちだったんですけどね」

怒りがおさまらなかったのは、ナナミさんの両親だ。
 

「やり直そう」としつこい元夫

ナナミさんの父親は、「男の風上にも置けない。離婚しなさい」とその場で言い出した。夫婦のことだから自分で決めるとナナミさんは冷静に言った。

「退院するとき、夫が迎えに来なかったんです。来ないなら来ないと連絡をくれればいいんだけど、『反省した。これからはちゃんと父親になる。迎えに行くよ』と前日、連絡があったのに来なかった。呆れてタクシーを拾って実家に戻りました。あとから聞いたら前の晩、飲み過ぎて寝ていたそうです。自宅に帰らなくてよかった。私がブチ切れていたかもしれませんから」

そのまま実家で過ごしていると、週末、夫がしょげた風情でやってきた。両親には何も言わないよう釘を刺し、ナナミさんは夫とふたりで向き合った。

「あなたが父親になれると思えない、と私は言いました。子どもを授かったことはありがたいと思う。でも私たち、つきあった期間も短いし、お互いにまだ結婚のタイミングじゃなかったんだよねと静かに言ったんです。すると夫はいきなり『オレが迎えに来たのに、なんだよ、その態度』とキレたんです。私も黙っているわけにはいかない。『そっちが浮気したり帰ってこなかったりしたんでしょ、とっくに破綻してるのよ』と怒鳴ってしまいました」

すると夫は「ああ、わかった。じゃあ、離婚だ離婚」と騒いで帰ってしまった。息子の顔も見ようとしなかった。ナナミさんは離婚届にサインを書いて夫に送りつけた。このときのやりとりは録音してあり、義両親にも音源を送った。

「義両親は平謝り。私は義両親のせいではないから、安全に離婚できるよう取り計らってもらえればいいからと言いました。弁護士に入ってもらって、1カ月もたたずに離婚が成立。養育費だけきちんと払ってもらうと念書を書かせ、あとは荷物を持って出て行ってもらいました。自宅はもともと私が借りていたところだったので。その後、マンションを引き払って私は実家に戻りました」

その後、実家近くにアパートを借りた。生後8カ月ほどで保育園に入れることになり、ナナミさんは職場に復帰。

「平穏に暮らしていたんですが、息子が1歳になったとき、元夫から実家にプレゼントが届いたんです。私あての手紙が入っていて、『気持ちは落ち着いた? やり直してあげてもいいから、いつでも連絡して』と。元夫は一度も息子の顔さえ見に来たことがないし、会いたいと連絡ひとつ寄越したこともない。離婚届を出してから一度も連絡をとりあっていないんです。それなのに突然、そんなことを言い出したので気持ちが悪くなって。弁護士に相談し、弁護士経由でプレゼントと手紙を返しました。弁護士が元夫と話したそうですが、『特に粘着しているわけではなさそう。ただ、ナナミさんがきっと自分のことを忘れられないでいるはずだと思っているようです』って。それ、じゅうぶんに粘着でしょと思って(笑)。一応、元義両親にも弁護士から話してもらいました」

それ以降、夫は何も言ってこない。義両親からはときおり連絡がある。夫はひとりっ子なので、ナナミさんの息子は彼らのたったひとりの孫なのだ。会いたいのかもしれないが、「関係を複雑にしたくない」という理由で、今は会わせていない。

「いつか息子が大きくなって、自分の意志で会いたいと思う日がくれば考えますと言ってあります。義両親には申し訳ないけど、私もストレスを抱えたくないので」

それにしても元夫の勘違いというか思い上がりというか。何を考えているのかさっぱりわからない。縁が切れてよかったですとナナミさんは吹っ切れたように言った。
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