亀山早苗の恋愛コラム

夫婦は互いの「過去」をどこまで共有すべき?正直すぎる夫のやり方に妻はうんざり…

夫婦といえども他人。何もかも正直に言うべきとは限らないという意見もあれば、他人だからこそ本音を打ち明けて話すべきという声もある。どちらがいいか悪いかではなく、相手を傷つけない配慮というものが必要なのかもしれない。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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夫婦といえども他人。何もかも正直に言うべきとは限らないという意見もあれば、他人だからこそ本音を打ち明けて話すべきという声もある。どちらがいいか悪いかではなく、相手を傷つけない配慮というものが必要なのかもしれない。
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元カノに会ってきてもいいかと言われて

「うちの夫、いい人なんだけど正直すぎるところがネックなんです」

そう言うのはユリさん(42歳)だ。大人になりきれていないのかもしれないと苦笑した。3か月ほど前、ユリさんの夫は「相談があるんだけど」と言った。

「その内容が、『学生時代の元カノが上京してくるらしい。ふたりきりで会ってもいいか』というものでした。元カノの存在自体、知らなかったから、どういう関係だったのかと聞くと『20歳から24歳までつきあった』と。だけど彼の転勤などで疎遠になって、自然消滅してしたらしい。4年もつきあってて自然消滅するものなのかと思いましたが、あの頃はまだ結婚するつもりもなかったし、仕事を覚えるのが最優先だった、と」

彼女の人となりも聞いてもいないのに話し始め、今は故郷に戻って結婚しているらしいと。ふたりきりで会ってどうするつもりなのかと聞いたら、「ご飯を食べるだけ」と言ったそうだ。

「彼女はひとりで来てホテルに泊まるということなので、もし怪しい雰囲気になって部屋で飲み直さないかと言われたらどうするのかと聞くと、飲むくらいいいんじゃないのって。いや、それじゃすまないでしょと言ったら、そうかなあと不思議そうな顔をしていました。鈍いのか、本当にそう思っているだけなのか……」

そんなことは妻に知らせず、ご飯だけ食べてくればいいじゃないと思ったものの、夫は「きみがどうしても嫌だというなら断ったほうがいいのかな」と言い出した。

「あなたの人生を邪魔するつもりはない。あとから、私が止めたから会えなかったと思われるのも嫌。あなたが自分で判断するしかない。その後のことを言うのも言わないのもあなたの判断でしょと突き放しました。彼は『オレ、嘘つくのが嫌だから言ったのに』とぶつぶつ言っていました」

結婚して10年、ひとり息子は8歳。3歳年下の夫は3人きょうだいの末っ子ということもあり、甘えん坊ではあるらしい。
 

元カノのことをことこまかに報告

ユリさんは日程を知らなかったのだが、ある日、夫から「今日は例のアスカと会うから、食事はいらない」と連絡があった。

「別に名前など知らせてこなくていいんだけど。そうやって名前まで知らされると、こちらだって愉快ではありません。でも私は息子と夕食をすませ、いつものように過ごしていました。翌日は朝から会議だったので、少し仕事もしていましたが、午前零時を回っても夫は帰ってこなかった」

予告して浮気したのかと、ユリさんは夫のやり方に激しい怒りを覚えたという。正直であることがいいとはまったく思えなかった。

「午前3時頃ですかねえ、夫が帰宅しました。うち、マンションなんですが、ガチャガチャといつまでも鍵を開けているような音がしたので目が覚めてしまって。玄関を開けたら夫がなだれ込んできました。あんなに酔った夫を見たのは初めてでしたね」

あわてて水を飲ませて寝かせた。朝、ユリさんが出社するときも夫は起きてはこなかった。夫婦で共有しているスケジュールを確認したら、その日は在宅勤務らしいので、彼女はそのまま出かけたという。

「ところが帰宅したら夫がいなかった。夜遅くに帰ってきて、『今までアスカと一緒にいた』と。それは浮気宣告なのかと聞いたら、『何もしてない。だけど自分の思いが……』と泣きながら話し始めたんです。聞きたくないけど聞いたところによると、彼女は旧友としての気持ちしかもっていなかった。だけど夫のほうは前日会って、気持ちが当時に戻ってしまった。だから今日、帰郷する彼女に再び会いに行ったのだという。彼女からは『家族の気持ちを考えなさい』と言われたそう。何もかもなくしていいなら考えるとも言われた、と。なんじゃそれと思いました」

実は彼女が離婚していること、子どももいないことを夫は今回、初めて知ったそうだ。別れるならどうぞ、そのかわり、全財産もらうわよとユリさんは言ってみた。

「あなたが何もかも捨てて、彼女とやり直したいなら止めない、と。3か月、考えさせてほしいと夫は言いました。その間、彼女とも連絡をとりあっていたんでしょうね。だけど彼女のほうはどうやら本気で言ったわけじゃないみたい。つい先日、『フラれた』と夫は意気消沈していました。まじめに考えていたのは夫だけ。なんだか振り回された夫が哀れなような気さえしました」

その後、夫は携帯電話を差し出しながら、彼女の連絡先を目の前で消した。「これでいいよね」と夫は涙目で言ったが、「それでいいかどうかは私にはわからないと言ってやりました」とユリさん。

「夫がどういう決断を下そうとしていたのか聞いたら、まだ決断できていなかった、と。彼女のほうは3か月の期限さえよく覚えていなかったようです。いいようにあしらわれただけなのか、話の流れでそういうことになってしまったのかはわかりませんが。とにかく今は夫が落ちこんでいます。でも、いくら年下であっても、そういう夫を受け止めて大変だったねなんていう気にはなれない。情けないの一言です」

落ち込む夫は、不機嫌な妻にさらに落ち込んでいるようだ。正直なのが問題ではなく、自分で処理しきれないことまで妻に話すのが「違うと思う」とユリさんは言う。

「処理できる自信がないなら、そういうことに首を突っ込まずに最初から会わなければいいと思うんです。どうも夫はそのへんが甘い。自分で飛び込んでいって自分で過剰に傷ついて。それを私にどうしろって言うんでしょうね。だんだん腹が立ってきた」

ユリさんが本気で怒っていることを、夫が理解する日は来るのだろうか。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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