人間関係

時間がないを言い訳にしない!忙しい父親にもできる父子関係の築き方

【公認心理師が解説】小さなわが子はとてもかわいいものですが、父親として自信がないという人もいるかもしれません。「忙しくてあまり一緒にいられないから仕方がない」は言い訳です。子どもにとって父親はいつも特別な存在。よい父子関係を築いていくためにも、子どもが期待する父親像に応え、それを壊さないようにしましょう。一緒にいられる時間でできること、してはいけないことをご紹介します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

一緒にいる時間が短いから難しい? 父親が悩む子どもとの関係づくり

語りあう父と子

子どもはお父さんを特別にかっこいい存在だと思っています。その理由とは?

夫婦で一緒に育児に取り組みたくても、実際には、父親よりも母親の子育て時間の方がまだまだ長い家庭が多いのが実情のようです。長い時間を母親と過ごす子どもにとって、仕事に追われて家にいる時間が短い父親の存在は、少し遠くなりがちに思えるかもしれません。しかし、父親も子どもにとってかけがえのない存在であることに、変わりはありません。今回は、外で働く父親が、子どもとよい親子関係を築いていくための大切なポイントをご紹介します。
 

仕事時間が長くても「ヒーロー」!? 子が持つ理想の父親像

家庭によって夫婦の形や役割分担の方法は多様化していると思いますが、母親が自分のすべてを包み込んで安心させてくれる存在なら、父親はヒーローのようなかっこいい存在と思っている子は少なくありません。小さな子どもの目から見れば、外では世界を守るために働いて、家では家族を守ってくれるかっこいいヒーローように映っているものです。

それでも、家の中ではあまり居場所がないと感じてしまい、子どもとの距離に少し自信を持てずにいる父親もいるかもしれません。子どもと母親の関係がよく、母子があまりにも親密すぎると、妻子から自分は後回しにされているのではないかと感じてしまい、内心シュンとしている父親の声を聞くこともあります。

しかし、父親にギュッと抱きしめられるだけで、子どもはエネルギーが満ち、大きな力をもらえたように感じるものです。ただ帰宅するだけで、「パパが帰ってきた!」と子どもたちはワクワクしてくれます。

母親と子の絆は強いものですが、子どもは父親には母親とは異なる深い信頼を寄せているものです。子どもから見れば、パパは毎日自分が知らない広い世界で、世界や家族を守るために頑張っている存在。そんなお父さんが「ただいま!」と元気に家に帰り、自分を抱きしめて遊んでくれるだけで、十分うれしくて幸せな気分になれるのです。
 

父親が絶対にしてはいけないことは? 父子関係を壊すNG言動

子どもは父親に対して「ヒーロー」と同じような期待を寄せているため、現実の父親が自分のイメージとまったく異なる言動をすると、不安でたまらなくなってしまいます。たとえば、次のような言動は、子どもの心を深く傷けてしまうので、冗談やいっときの気分であってもすべきではありません。
  • お母さんや子どもを怒鳴ったり、軽くであれ叩いたりする
  • 笑顔や言葉がけがない。ムスッと不機嫌そうな顔でいる
  • お母さんがとても疲れているのに、手伝おうともしない
  • 家にいても遊んでくれない。近づくと面倒そうな顔をする
  • よその人とケンカやいざこざを起こす
もちろん、父親にも様々な事情があると思います。忙しくてゆっくり家族との時間をとれない。いくつものストレスを抱えている。疲れきって家事や育児を手伝えない。妻との関係が微妙でギスギスしている。子どもと遊ぶ気力もない……。こうした日々の中で、家族に笑顔を向ける余裕を失っている方もいるかもしれませんが、子どもにそのような大人の事情を汲んでもらおうと思ってはいけません。
 

忙しくて余裕がない? 将来的にも重要なよい父子関係

忙しくて心の余裕がないという方も、ご自身が幼い頃に抱いていた父親へのイメージを思い出してみてください。やはり心の底では、「お父さんはたくましくてやさしいヒーローでいてほしい」という典型的なイメージを抱いていたのではないでしょうか。
 
「でも自分の父親には、そんな風に接してもらえなかった」という思いを持つ方もいるでしょう。ですが、いつの時代でも子どもは自分の父親に「ヒーロー」のイメージを投影し、たくましくてやさしい存在でいてくれることを望んでいるのです。
 
そして、実際の父親と「ヒーロー」の父親イメージとのギャップを大きく感じると、子どもは父親との関係に緊張を覚えます。「圧倒的な強者として家庭に君臨する父親」――こう感じたとき、子どもは父親の前で自分らしさを出すことをためらってしまいます。あるいは、「自分のことしか考えない勝手な父親」――こう感じた場合、子どもはお父さんの言葉に耳を傾けられなくなってしまいます。
 

「よい父子関係」は築ける! 忙しい父親でもできる大切な育児

「俺はヒーローなんかじゃない。仕事に追われるただのオヤジだ!」と思われるかもしれません。ですが、難しく考えなくてもいいのです。子どもに慕われる父親になるために必要なたった一つの心得、それは「日々の何気ないかかわりで、十分にヒーローになれる」ということです。
 
育児に積極的に関われていないからと、身構えたり、子どもとの距離に悩む必要はありません。忙しくて家にいる時間がどうしても短くなってしまうのであれば、家にいる時間だけでも、子どもと一緒に笑い、お風呂に入り、遊び、一緒にご飯を食べる。短い時間であれ、妻を労わり、手伝い、大切にする姿勢を見せる。子どもが知らない外の世界についてやさしく教える。世の中の楽しさ、すばらしさを伝える。そして、子どもが頑張ったことを大いにほめる。子どもはそんなお父さんとの時間を過ごせるだけで、父親に守られている自分を幸せに感じ、安心して成長していくことができます。
 
「たくましくてやさしいヒーロー」の根本にあるのは、自分の家族と社会に対する深い愛情です。ぜひ、子どもの期待に応え、お父さんだからこそできる家族へのかかわりを続けていきませんか? きっと、子どもはお父さんをもっともっと大好きになると思います。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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