今どき、既婚であっても異性の友だちのひとりやふたりはいるもの。ところが「男女で友だちなんてあり得ない。絶対にどちらも下心をもっている」と決めつける人もいるようだ。そんな決めつけ夫に困惑する妻がいる。
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自分が友だちいないからって

「私、男女問わず友だちが多いほうだと思います。コロナ禍以前は子連れでよくホームパーティーをしたりしていました。大勢でわいわいやるのが好きなんですよ」

もともと社交的で明るいケイコさん(40歳)。だが同い年の夫は、友だちがあまりいない。つきあっているときは夫を自分の友だちに紹介したし、一緒にキャンプなどに行ったこともある。

「夫も楽しそうにはしていたんです。でも30歳で結婚してからは、『ごめん。オレ、やっぱりあんまり大勢で話すのは向いてない』と言い出して。だったら仲のいい夫婦二組くらいならいいでしょと家で一緒に食事をしたりしていました。でもどうやらそれも夫にとっては負担だったみたい」

32歳で長女を、34歳で長男を授かってからも、ケイコさんは仕事に子育てに、さらに子連れでの友だちとの集まりにと常にフル回転で楽しんできた。だが夫は、子どもが生まれてからは「オレが家で子どもと一緒にいてもいいよ」「きみは好きなようにすれば』と休日は家にいることが増えていった。

「週末のどちらかは、私は出かけることが多いですね。8歳になった長女がスケートをやりたいというので習いに行くことになったんですが、ついでに私も同じ時間帯に大人向けの教室で習っています。子どものおかげで世間が広がるのも楽しいなと思って。平日も夫が早く帰れるときは、私は同僚と食事にいったりしていました。さすがに最近はそういうこともできないし、在宅ワークも増えたので、家にいることが多くなりましたが、それでも子どもたちと近くの公園に行って、近所の人たちと『落ち着いたらご近所飲み会をしましょう』と計画を立てています」

いつでも人と交わっていることが大好きなのだ。一方、夫はひとりで読書をしたり音楽を聴いたりするのが好き。これは好みの違いなので、お互いに「不可侵条約を結んでいるつもりだった」とケイコさんは言う。
 

夫からの疑惑の視線に大困惑……

こんなご時世でも出張はある。ケイコさんも1月上旬に2泊で後輩とともに出張した。

「夫が在宅ワークだから安心して出かけました。でも行く前から夫は『どうしても行かなければならないの? きみじゃなくてもいいんじゃないの』とけっこうしつこかったんですよ。これ、会社の仕事だから、私ひとりで決められる話でもない。あなただって会社員だったらわかるでしょと、ちょっとイラッときました」

出張に出かけた日の夜は、テレビ電話で子どもたちと会話。これから仕事関係者と食事だからと切ろうとすると、夫が出てきて『本当に食事関係の人たち?』と一言。これにケイコさんは「人の仕事をなんだと思ってるのよ」とつい声を荒げてしまった。

「夫はしょげてしまって『ごめん』と。人の仕事に口を挟まないでと言って電話を切りました」
出張から帰った日、後輩が空港まで車で来たから送ると言ってくれた。

「彼とは方向も同じだし、ラッキーと言って乗せてもらいました。10歳も年下の後輩ですよ、仕事を一緒にしている仲間ではあっても恋心なんて微塵もない。当たり前のことです。今から帰ると夫に連絡だけはしておきました。この後輩とは気が合うので、車の中でも楽しかったし、明日からもがんばっていこうねと仕事の話も少しして……」

自宅マンションの前まで送ってもらい、ケイコさんが降りると、彼は後ろに回ってトランクからキャリーバッグを取り出してくれた。ありがとう、じゃあねと「感謝をこめて車を見送って」マンションに入ろうとすると、夫がエントランスのところに突っ立っていた。

「ぎょっとしていつからいたのと聞いたら、20分以上待っていた、と。子どもたちを放りっぱなしで何やってるのよと思わず怒鳴ってしまいました。家の中にだって危険はいっぱいあるんですから。すると夫は『後ろめたいから怒ってるの?』と言い出した。単なる仕事仲間ですよ。後輩にも失礼すぎる。何があなたをそんなにねじ曲げているのかと尋ねてしまいましたよ」

すると夫は黙りこくった。

その日の晩、夫は「オレは男女の間で友情があるなんて思えない。きみに近づいてくる男たちはみんなあわよくばと思ってる。そしてきみもそう思ってるようにしか見えない」と言い出したんです。結婚して10年もたって、何をいまさらという感じです。おそらく夫は私より在宅ワークが多く、ストレスを抱えているんじゃないか。そう思って尋ねると、自分は家にいるのが好きだから在宅ワークはむしろうれしい。だけどきみが外で浮気しているんじゃないかと思うとちょっと心が波立つ、と。

「私は家族がなにより大事。だけど仕事も好きだし友だちも好き。人と話したり一緒に遊んだりするのが好きなだけで、外で恋愛したいなんて思ってもいないと、ちゃんと説明したんです。ただ夫が言うには、チャンスが多ければそれだけ間違いも多くなると。ばっかじゃないのと言ってしまいました。友だちがいないのをいけないとは思わない。だけど友だちのいないあなたが、私の友だちを侮辱するような発言をするのは許せない。そう言いました」

ケイコさんから見たら、夫の認知は歪んでいる。だが夫から見たらケイコさんのことが心配なのだろう。ケイコさん自身を心配しているというよりは、妻の不行状で世間からそしられるのが怖いのかもしれない。

「あなたも学生時代の友だちに会って旧交を温めてみてよ。友だちがいてもいなくてもいいけど、友だちの存在を大事に思っている私を傷つけないでと言うしかなかった」

その後、家庭は今のところ波立つこともなくすんでいるが、ケイコさんがまた友だちとの関係を活発化させたら同じような問題が起こるのかもしれない。

「夫が嫉妬深いというより、価値観が違いすぎるんでしょうね。私は私の生き方を変えられないし、お互いを認めていくしかないと思うんですが……」

結婚生活って思わぬところに落とし穴がありますねとケイコさんは苦笑した。
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