ママ友グループから“うまく”抜けていった人
3年前、5歳と3歳の子を連れて、都心から郊外のマンションに越したマリエさん(39歳)。実家の近くということもあり、旧友が多い土地柄だったため、ママたちのグループに自然と入っていくことができた。「とはいえ、私も含め仕事をしている人もいれば専業主婦もいる。なんとなくゆるいグループだと思っていたら、意外と『今度は○○さんの家でお茶会しましょう』みたいなことがあるんですよね。仕切っているのは自宅で仕事をしているAさん。ところがもちろん、裏でAさんの悪口を言っている人もいれば、グループ内で別のLINEグループができていたりもして、私からみると魑魅魍魎の世界でした(笑)」
同い年の夫に相談すると、「下手にグループにとらわれず、一歩引いていたほうがいいんじゃないか」と「しごくまっとう」な返事が返ってきた。それができれば苦労はしないとマリエさんは思ったという。
「私は新参者なので、いろいろな個別のグループから誘いがあって……。なんとなく八方美人的に忙しいのに時間をやりくりして顔を出したりLINEに参加したりしていたんですよ。ま、様子見もかねて」
そうこうしているうち、主要グループにいたBさんが、するするとあちこちのグループから抜けていった。今まで専業主婦だったけど仕事を始めて忙しくなり、みんなに迷惑をかけるといけないからと、にこやかに消えていったのだという。
「だからといって子どもがからむリアルな場では、前と同じように明るく振る舞ってる。誰彼区別なく話していますしね。Bさんを無視しようとAさんが呼びかけたこともあったみたいだけど、無視する理由がありません。結局、彼女はLINEグループからきれいに抜けて、リアルな場だけでママ友とつながることができた。あとから別の人が、『そういえば彼女は以前からお茶会とかにはあまり顔を出さなかったよね』と言っていました」
ママ友とは子ども絡みのつきあいだけと割り切ったのだろう。マリエさんも本当はそうしたいのだが、ここで断ったらどう思われるだろうという思いが先に立って、なかなか人の誘いを断ることができずにいる。
「このコロナ禍でも、少数なら大丈夫よねとか外なら大丈夫よねとか、それなりにつきあいがあるんですよね。他人からどう思われるかを気にせずに行動できたらいいなと思うんですが……」
軽やかに距離をとっていったBさんに対して、周りは「あの人はそういう人」と今では良くも悪くも評価が定着。そういう立場になれれば気が楽なんだけどと、マリエさんはため息をついた。
近所のママ友が浮気!?
「近所に住むミドリさんは、昼間から駅前のカフェで堂々と男性とデートしているんです。それが噂になっているけど、彼女はどこ吹く風。羨ましいような気がします」リョウコさん(43歳)はそう言って苦笑いする。数年前に越してきた同世代のミドリさんは、「自宅で翻訳だかなんだかの仕事をしているらしいけど、詳細は不明」で、家に訪問してくる人も多いらしい。なかには「しょっちゅう別の男がやってくる」という噂もあるが、仕事関係なのかプライベートな関係なのかも不明。ときおり、びっくりするようなミニスカや、金色のダウンコートなど、ど派手なファッションで出かけていくこともある。
「結婚していて中学生のひとり息子もいるんですが、息子も地元ではなく私立に通っている。あの一家のことを知っている人、あまりいないんですよ」
それでも地域の行事に参加しないわけではない。家族で出かけるのを見たこともある。彼女の家に行ったことがある人もいるが、「別に、普通の家だったし、彼女も普通の人だったよ」と言うだけ。ただ、彼女自身の職業や夫の勤め先などは誰も知らない。
「いつの間にかそういう特別な立場になってしまっていたというか。彼女自身の人との距離の取り方が絶妙なんでしょうね。今も、あのうちの奥さん不倫しているんじゃないのとか、家に男性が入っていったとかいろいろ言う人はいますが、彼女自身は会えば挨拶するし、ごく普通に振る舞っている。あれで本当に不倫していたら、すごいメンタルだよねと周りは言いますが、なんだか自由でいいなと思います」
誰に迷惑をかけるわけでもなし、ああやって自然に好きなように行動できる人が羨ましいとリョウコさんは言う。
「それができないのは、ついつい周りを見渡して、みんなはどうしているんだろう、どう思うんだろうと過剰に人の顔色を見てしまうからなんでしょうね。私、本当はバンドを組みたいという思いがあるんです。昔やっていたので。でも周りの反応を想像すると躊躇してしまう。この年で、と言われるのが怖いんです。周りを気にしていたら、やりたいこともできなくなるとわかっているんだけど。だからこそミドリさんが羨ましい。そう思いつつも、あんな格好で出歩けるなんてすごいと悪く思う自分もいて……」
モヤモヤの原因は自分の中にあるのかもしれない。