亀山早苗の恋愛コラム

「いずれ子どもを…」共働き夫婦の人生プランが壊れた理由。想定外の展開で離婚の危機に…

結婚したらその後、お互いの状況が変わるのはよくある話。そこで腹を割って話し合ってから前に進むのが原則なのかもしれないが、急を要すれば、話し合う以前にことを進めてしまう場合もあるだろう。それが夫婦仲に亀裂が入るきっかけになることもある。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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結婚したらその後、お互いの状況が変わるのはよくある話。そこで腹を割って話し合ってから前に進むのが原則なのかもしれないが、急を要すれば、話し合う以前にことを進めてしまう場合もあるだろう。それが夫婦仲に亀裂が入るきっかけになることもある。
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共働きで子どもをもつつもりだったのに

4年つきあい、「お互いに何でもわかりあっているつもり」だった同い年の彼と結婚して5年がたつマキコさん(35歳)。

「会社は違いますが、私も仕事を続けていくつもりだったので、子どもができても協力しあってがんばっていこうと話していたんです。ところが結婚して3年目、そろそろ子どもがほしいねと言っているときに私の父が倒れて、状況が一変しました」

マキコさんの両親は飲食店を経営している。かつてはマキコさんも跡を継ぐつもりで管理栄養士、調理師の資格も取得した。ところが父は「継がなくていい。せっかく大学まで行ったのだから好きな仕事につきなさい」と言ってくれた。そこで彼女は管理栄養士の資格が活かせる研究施設に就職した。

「妹がいるんですが、彼女は食堂の手伝いさえしなかった子で、20歳くらいで結婚して遠方に住んでいるので協力は期待できない。母は父の看病で目に見えて疲労していく。食堂を続けないと両親の経済状況にも影響がある。母は店を売ろうかと思うと言い出して。それなら私がやるからと言ってしまったんです」

高校生のころから店を手伝っていたので、なんとなく要領はわかる。食材の仕入れ方などは細かく母が教えてくれるだろう。店内は以前からアルバイトが来てくれていたから、なんとかひとりで再開してみるというと、病床の父は涙ぐんだ。40年近く続けてきた店だから、父の思い入れは強かったはずだ。

「店を見捨てるのは父を見捨てることのような気がして。夫には相談せずにやると言ってしまった。その後、夫に話しました。夫は『わかった』とは言いましたが、『おとうさんが元気になるまででしょ』とも言っていましたね。それはわからないけど私も会社を辞めてやるのだから、とりあえず全力でやるだけと言うしかなかった。『子どもはどうするの』と夫は少し不満そうだったけど、それも見通しが立つまで待ってとしか言えなくて」

父は1か月ほどで退院したが、その後はリハビリ病院に転院した。回復しても、以前のように体が動くとは思えなかった。
 

食堂経営が楽しくなってきて

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「町の小さな食堂なんです。常連さんで成り立っている定食屋といったほうがいいかもしれない。でもやってみると、商売のむずかしさを感じました。父が倒れて1か月近くは休んでしまったので、まず客足が戻らない。貼り紙をしてお客さんを待ちました。常連さんが少しずつ戻ってきて、みんな応援するよと言ってくれると、今度は自分の味が受け入れてもらえるかどうかが気になって。試行錯誤の毎日でした。父がリハビリ病院に移ってからは、母が手伝ってくれるようになった。女将さんがいるならと戻ってきてくれる人も増えてきて」

少しは若い人も取り込みたいと、和食中心だったメニューにパスタなども加えてみた。なんとか黒字が出るようになるまでは時間がかかったという。

「夜遅くまではやっていないけど、自宅で夕食を作れなくなっていたので、夫には店に寄ってもらうか前日の残り物を温めて食べてもらうか。私が帰宅するのはどうしても10時過ぎになってしまうんです」

店の休みは日曜日だけ。それもゆっくりとは休めない。次の週の目玉メニューを考えたり、どうやったらお客をもっと呼べるかに腐心したり。

「そのうち、夫がこの状況に耐えられないと言い出した。私だって夫とゆっくり過ごしたり旅行したりしたい。だけど今は待って、あと数か月でもう少し軌道に乗せられると思うからと頼んだんですよ。すると夫は『だいたい、きみの給料はどのくらいなわけ?』と。そのときは会社員時代の6割くらいだったんですが、『労多くして功少なしってことか』と鼻で笑ったんですよ。私はそれでカチンときた。お金の多寡だけではないものを築こうとしているんだからわかってよと言いました。そうか、今じゃ立派な経営者だもんな、と夫。そんな言い方ないでしょと、ふたりの間で初めて大げんかになりました」

数日後、夫は「ごめん、一緒にいる時間が少ないからついイライラして」と謝ってきたものの、マキコさんは納得できなかった。

その後、コロナ禍に巻き込まれて休業した時期もあったが、店はなんとか潰さずにすんでいる。

「でも夫との関係が潰れそうです。休業した時期に『これがいい機会だと思って閉めれば?』と言ったんですよね。それもまた許せなかった。父もだいぶよくなったのですが、店に常時出られるほどじゃない。だけど閉めてしまったら父はきっとガクッと弱る。夫には、父の店への思い入れは理解できないかもしれない。でも私は知っている。だからこそがんばりたいんです。そのあたりは相容れないのかな、だったらこの人とやっていくのはもうむずかしいのかな。今はそんな気持ちです」

今年中にはひとつの「行くべき道」を決めたいとマキコさんは考えている。たとえば店の閉店時間を早めるためランチと軽食のみの喫茶店にするとか、いっそランチだけの店にするとか。あるいは“離婚”も視野に入れている。

「夫はどうしたいのかわかりません。それもきちんと話す必要性は感じているんだけど、お互いに口火は切りたくないですよね。口も聞かないという状態ではありませんが、なんとなく不穏な空気が夫婦間に漂っていますね」

マキコさんは苦笑する。少し客観視しているようだ。とにかく試行錯誤しながら店を続け、世間の状況も見ながら結論を導いていければと彼女は言う。
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