自分と周囲の双方に配慮した環境型ボールペン
ぺんてる「Calme」単色タイプ165円(税込)、多色タイプ440円(税込)、多機能タイプ550円(税込)。ボール径は0.5mmと0.7mmの2種類。軸色は、単色が写真左からの5色、多機能・多色タイプは写真右からの3色。
ノック音を抑えたボールペンには、古くはラミーの「noto」などがあり、また、回転繰出し式やキャップ式などのノック音がしないボールペンもありますが、今回、ぺんてるでは、扱いやすいノック式で、買いやすい従来通りの価格の中で、静音性にも高級感にも対応するという、かなり欲張りな製品に挑戦し、それを実現しています。
面白いのは、ノック音を抑えるということは、自分の気が散るといった目的だけでなく、自分が周囲に迷惑をかけているのではないかという心配に対する配慮に目を向けた設計だということです。ぺんてるによる調査(※1)では、20代、30代ユーザーの8割以上が、ノック音が周囲に与える影響(音ハラスメント)を気にしているという結果が出たそうです。
また、ノマドワークやリモートワークの一般化は、周囲に他人がいる環境で仕事をする機会を増やし、図書館などで仕事や勉強をする場合と同様、自分が出す音に敏感にならざるを得ない状況です。その意味では、年配の世代も自分が出す音を気にしないわけにはいかなくなっています。自分は気にならない、では済まないのが、現在の仕事や学習を取り巻く環境なのです。
ノックした感触を残しつつ、静音を実現
今回、「Calme」の単色タイプを見て、まず思ったのは、静音以前に、カッコイイ!ということでした。マットで発色の良い軸に、まるでカメラのグリップのような、レザー風の加工がされたロンググリップと、ノックボタンを兼ねた大きめのクリップで構成されたルックスは、かつてのペリカンの名品「ペリカン No.1」を思わせるスマートなシルエット。通常の単色タイプより少し軸が太いこと、てっぺんにノックボタンがないこと、クリップの上部が斜めに湾曲していることなどが、このカッコ良さを形成しているのでしょう。ノック音は、全くしないのではなく、ほんの少しのクリック感と同時に、わずかにカシュッと音がします。カチッでなくカシュッと擦れた音なので、人の気配が多い場所ではほとんど聞こえません。そして、自分の指先にはノックをしたという感触があります。この、「ノックしたという実感と静音性のバランス」が、今回の製品化にあたって、試行錯誤を繰り返した点なのだそうです。アンケートでも、音は気になるけれど、指先へのノック感が欲しいというユーザーが多かったということでした。 静音のメカニズムは単色タイプと、多色・多機能タイプでは違う機構を採用。多色・多機能タイプの場合は、芯が引っ込むときの音を吸収するためのクッションを、ペンの尻軸の内側に設置しただけのシンプルなものですが、もともと、その構造上、気になる音がするのは、芯が引っ込む時なので、これで十分な静音性を獲得できます。
一方、単色タイプの場合、その構造上、ノックの度に、軸内にある回転子が動いて上下のパーツに当たり音を立てます。なので、回転子の両側に摺動子を付けて、回転子の動きを抑制することで静音化しています(図参照)。
また、ノックを手のひらの中で操作できるように、クリップの上下で行うようにしているのも、弾くようにボタン操作することを抑制できる構造。ここでボタン操作をそっと行うことで、かなり無音に近い操作ができるので、音が極端に気になる場合にも対応します。通常のノック式ボールペンは、かなり丁寧に操作してもカチッと音がするのを止めるのは難しいのです。
新しい時代の普段使いブランドとしての「Calme」
インクは、ぺんてるの低粘度油性ボールペンであるビクーニャに使われているものと同じですから、その滑らかな書き味は保証付き。それに加えて、持ちやすいロンググリップと、しっかりホールドできて高級感もあるレザー調の加工がされたゴムクリップなので、快適に筆記できます。ボール径は0.5mmと0.7mmを用意。軸色は、単色タイプがブラック、カーキ、グレイッシュホワイト、ブルー、レッドの5色。ブルーとレッドは、インク色もその軸色に合わせて青と赤のリフィルが入っています。他の軸には黒のリフィルが入っています。価格は各165円(税込)。
多機能と多色の軸色はブラック、カーキ、グレイッシュホワイトの3色。多色タイプには黒、赤、青のリフィルが入っていて440円(税込)。多機能タイプは、黒、赤のリフィルに加えて、0.5mmのシャープペンシルが内蔵されて550円(税込)です。
単色も多色も多機能も、軸の太さがほとんど変わらないのも特長。単色は太めで握りやすく、多色・多機能は太すぎず、やはり握りやすいのです。これが、従来通りの価格帯で買えるのですからうれしいですね。普段使いのボールペンの選択肢が増えることは、とてもありがたいと思うのです。
参考
※1:ぺんてる 世代別「音ハラスメント」全国意識調査