それによれば、女性の生涯未婚率で東京を抜いて高知県が1位に躍り出たのだという。理由はわかっていないというが、男性の未婚率でも5位に入っていることから、男女ともに結婚を回避している風潮があるのかもしれない。婚姻届は出していなくても事実婚や同棲に流れている可能性もある。女性の2位以下に大都市圏が並ぶことから、女性に経済力があれば結婚はしないものということができそうだ。
ひとりの生活を充実させたい
「結婚しないと決めているわけでもないし、したいと焦っているわけでもない。縁があればするんじゃないでしょうか」他人事のようにそう言うのは、チサトさん(38歳)だ。大学卒業後、都内の企業に入社、仕事もプライベートも楽しんでいる。
「会社の人間関係とか、そりゃ嫌なこともありますけど、生活の糧を得るための会社員生活だと割り切っています。仕事自体は楽しいし、もっと上を目指してやる気満々ですよ。30歳で1LDKのマンションを購入しました。定年退職のころにはローンも払い終わっているはず。着実にひとりで生きていくという想定のもとに行動してきたような気がします」
もともとは20代後半で結婚するだろうと漠然と思っていた。ところが結婚しないまま30歳を迎えてしまった。30代前半で周りの友だちが結婚したり離婚したりするのを見るにつけ、「どっちでもいいや」という心境になっていったという。
「もう少しすると子どもをもつことを諦めなければいけないのはわかっているんですが、子どももどうしてもほしいとは思えない。保護猫と暮らしていますが、今の状況がいちばん心安まりますね。そもそも結婚する意味がわからなくなってきたし」
ひとり暮らしは快適だ。それでも在宅勤務が増えたときは少し気が滅入ったとチサトさんは言う。
「猫がいたから私は大丈夫でしたが、友人の中にはかなりうつ状態になった人もいます。孤独に強いか弱いかもあるんでしょうね。常に誰かと一緒にいたいと思う人は、今後、年をとったときにひとり暮らしがもっとつらくなるかもしれない。まあ、ひとり暮らしがつらいからといって結婚したら幸せとは限りませんけど」
そう、何を得たら幸せなのかは人によるし、状況にもよる。この人ならと思って結婚しても、結婚後に「こんなはずじゃなかった」というのはよくある話。だからといって臆病になっていたらいつまでたっても結婚できない。
「自分のカンを信じて生きていくしかありませんよね。私はまだ、ピンとくる人に出会えないんだと思う。出会えたら結婚するかもしれません」
生活は苦しいけれど
一方、派遣で働くトモコさん(33歳)は、この2年間、本当に苦しい思いをしてきたという。「専門学校を出て就職したんですが、人間関係でつまずいて退職。それ以来、派遣で働いてきました。だけどこのコロナ禍で、当時勤めていた会社から雇い止めされてしまった。あとはアルバイトを掛け持ちして食いつないできました。田舎の親からは帰ってこいと言われたけど、帰れる状況でもなかったし。親には借金しています」
当時、つきあっていた彼がいたが、彼も派遣で苦しい状況。自然と連絡を取り合わなくなってしまったという。
「心に余裕がないと恋愛もできないとよくわかりました。去年の秋には仕事に復帰でき、副業を始めたこともあって、なんとかなっています」
昨年12月の始めに知り合った男性に、クリスマス時期、電撃プロポーズをされた。だがトモコさんはそれを断ったという。
「まだお互いに相手のことを何も知らないのに、どうしていきなり結婚ということになるのか、よくわからなくて。ひとりで盛り上がっている彼が怖かった(笑)。もう少しつきあってからにしたいと言ったら、連絡が途絶えました。たぶん彼、結婚したいだけだったんでしょう。結婚という言葉に乗せられなくてよかったです。生活は苦しくても、自分の道は自分の足で歩きたい」
来年は副業でためたお金で専門学校に通い、国家資格をとるつもりだという。
「結婚という不確実なものに期待するつもりはありません。頼りになるのは自分だけ。スタートが遅くなってしまったけど、人生これからだと思ってがんばります」
自分の人生は自分の足で歩きたい。そう思う女性が増えれば増えるほど、未婚率は上がっていくのかもしれない。
※「令和2年国勢調査 人口等基本集計」(2021年11月30日、総務省統計局)