大人同士の再婚で、困った事態に
平成28年度の厚労省「人口動態統計特殊報告」によれば、婚姻件数の26.8%が夫妻とも、もしくは片方が再婚となっている。そのうち、夫が再婚・妻が初婚は10%、妻が再婚・夫が初婚は7.1%、夫妻ともに再婚は9.7%だ。「うちもふたりとも再婚です。私は20代で短い結婚生活を送って30歳で離婚。子どもはいません。夫は13年ほど結婚していましたが、3年前に離婚。娘さんは妻側が引き取ったそうです。知り合ったのは2年前なので不倫ではありません。意気投合してすぐに一緒に住み始めたんですが、前妻はどうやら不倫を疑ったらしく、かなりの嫌がらせがありました。今年のお正月に婚姻届を出したのですが、それも前妻には不快だったようです」
困惑したようにそう言うのは、ユウミさん(41歳)だ。46歳になる夫とは、仕事関係で知り合った。最初からお互いに「気が合う」と感じ、彼女が言うように知り合って3カ月後には一緒に住むようになった。
「生活していても違和感がないんです。私はひとり暮らしが長く、彼は結婚生活が長かった。だから当然、それぞれの暮らし方があるはずなのに、お互いにすんなり譲り合える。人と暮らすことにはストレスがつきまとうと思い込んでいたのですが、彼とはまったくそういうことがなくて。だから自然と結婚しようということになりました」
ところがふたりを悩ませたのは、彼の前妻・マリさんの言動だ。ユウミさんが彼の家に同居し始めてすぐ、彼女がふらりとやってきたことがある。
「彼は私を紹介してくれず、玄関先で追い返していました。いつもこんなふうに訪ねてくるのかと聞いたら、『実はときどきやってくる。監視されているみたいで不愉快だけど、娘のことで相談があったりもするので冷たくできない』と。ちょっと困った感じでした」
その後、彼はタイミングを見てユウミさんをマリさんに紹介。結婚を考えているが、娘のことに限っては相談に乗るし、娘とは会うと宣言した。
「マリさんは私をちらと見て、ふうん、こんな人とつきあってるんだと一言。彼が『失礼な言い方をしないでほしい』と言ってくれましたが、感じが悪かったですね。もともと、彼女が不倫をして出て行き、離婚を求めてきたんだそうです。だけど彼女はその後、恋人にふられたために元夫である彼に少し執着しているようでした」
紹介されたことでホッとしたし、彼を信頼しようと決めたユウミさんだが、その後も前妻との些細なトラブルは相次いだ。
「私から夫を奪った女」とSNSに書き込みが?
彼はユウミさんとの結婚を、まず娘に話した。ユウミさんも娘に会い、ともに食事をしたという。「娘はおもしろくていい子でした。素直で物怖じせず、自由に言いたいことを言って。彼が席を外したとき、『パパのどこがよかったんですか』と聞かれて、『なんとなく感覚的に一致するところが多かった』と答えたら、『パパとママはまったく合わなかったからねえ』って。思わず笑っちゃいました。『ママも不倫なんかするからいけないんですよ。でもひとりぼっちになったらかわいそうだから私が一緒に住んでいるの』って。賢い子ですよね。『私、ユウミさんのこと気に入ったから、今度、遊びに行っていい?』とも言ってましたね。大歓迎よと答えました。実際、彼女は月に1回くらいは遊びに来ています」
マリさんには彼から事後報告するから、黙っていてほしいと言うと、娘は「わかった」と気軽に答えた。実際、母親には伝えていなかったようだ。
「マリさんは、娘と父親が結託して自分を騙したように受け取ったんでしょうね。そしてそう仕向けたのは私だと思ったみたい。その後、私のSNSに『私から夫を奪った女』と書き込みをされたんです。それには夫が怒って、『名誉毀損で訴える』と言ったら削除されました。今でもときどき、妙な手紙が舞い込んだり、SNSで変なことを書き込まれたりするんですが、夫が連絡すると削除される。娘に『おかあさん、大丈夫?』と聞いたら、『寂しいんでしょう、きっと』って。マリさんとは同世代だから、私にもその孤独感はわかるんです。でも自分で不倫して離婚を求めておきながら、今さら再婚した元夫に文句を言っても遅いし、私に嫌がらせするのは筋が違う」
マリさんを刺激しないようにしながら、娘を介して様子を聞くようにしているユウミさん。めんどうなこともあるが、再婚した今はやはり幸せだと力強く言う。
「いつかはみんな年をとる。そのときにマリさんも娘も含めて、みんなで仲良くしていけたらいいなと思うんです。離婚、再婚は人づきあいを広げるチャンスでもある。そんなふうに思えるように生きていくつもりです」
マリさんに、いつかその気持ちが届けばいいけどとユウミさんは笑顔を見せた。
【参考】
- 「人口動態統計特殊報告『婚姻に関する統計』の概況」(平成28年度、厚生労働省)